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異世界に導かれし者  作者: NS
第3章 死の森
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3-23 終わりの始まり4

「ここか……」



 真上に浮かぶ月の眩い光で水面がキラキラと輝いている死の森の湖にモーガンのグループがいち早く到着した。


 ここまで来る間に森から三本の煙が上がってるのを見ると、他の三つのグループも今頃敵と遭遇して交戦しているだろう。



「ふむ、あれか……」



 先頭にいるモーガンは敵がいないか確認しようと湖の向こうを目を向けると、湖の向こうで胡座をかいて座っていたゴブリンロードが視界に映った。


 そしてゴブリンロードもこちらに気づいたのか、ゆっくりと立ち上がって直ぐ隣に置いてあった巨大な棍棒を拾うのが見えた。



(ん?)



 そんな中、モーガンは後ろにいる団員達がゴブリンロードの威圧に思わず一歩後退りして緊張した顔つきで身体を強張らせているのに気がついた。



「あいつの相手は俺がやる。下がって周りの警戒を頼むぞ、お前達」



 モーガンは優しい口調でそう団員に指示をすると我に返った団員達は敬礼をして各自動き出した。



(そうだ、それでいい……)



 そんな団員達の様子にモーガンは満足気に頷くと、一段と威圧感を身に纏い単身でゴブリンロードに向かって湖の周りを歩いていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 やがてモーガンが一体のゴブリンロードの前まで来て立ち止まると目を不気味に光らせたゴブリンロードが棍棒を自分の肩にたてかけてモーガンを見下ろしながら話しかけてきた。



「一人で来るとは相当な自信があるようだな……。もしや貴様が噂に聞くアストレア聖騎士団の副騎士団長とやらか?」


「ほぉ……」



 そんな低い声で唸るように発されるゴブリンロードの言葉にモーガンは感嘆の声を上げて少し驚いたような表情でゴブリンロードの質問に答えた。



「モンスターにまで名を知られているとはな驚いたな。ところでその鎧の傷と武器を見たところお前がロイと一戦交えたやつか?」



 するとゴブリンロードは醜い笑みを浮かべて答えた。



「ロイ? あぁ……この前逃げていった人間か……。さて、援軍待ちの時間稼ぎではないだろ? 話はこれくらいにしてそろそろ始めようぞ」



 さっきとは比べ物にならない殺気を放ち、ゴブリンロードが目を細めて片手で巨大な棍棒を構えた。



(驚いた、このゴブリンロード……。纏っている雰囲気からして他の個体と比べてかなり強いな。これは俺が来て正解だったか……)



 モーガンは息を呑み、ゴブリンロード同様殺気を放ち背中から煌めく紅色の剣と巨大な紅の盾を手に取り地面を踏みしめてがっちりと構えた。



「いくぞ! 付与魔法“闇”」 「“シャドウバイラール”!」



 そんなモーガンを見てゴブリンロードは棍棒を握り直し魔法を詠唱した。



「む!」



 するとモーガンの足元から現れた複数の闇の鞭があっという間に次々とモーガンの足に動かそうとしても全く動かせる気配がないほどがっちりと絡みつき移動を封じた。


 そして、ゴブリンロードは闇属性で強化された巨大な棍棒をその場から避ける事が出来ないモーガンの正面に向かって勢いよく体重を乗せた強烈な突き出しを繰り出した。


 しかしモーガンは焦る様子も見せず、自分の正面に巨大な盾を構えて魔法を詠唱した。



「“プロテクション”!」 「“フレイムドライブ”!」



 辺りに轟音が夜の森に響き渡る。


 発生した風圧はモーガンの髪をなびかせ周りの土が抉れる。



「流石副騎士団長といったところか……」



 表情一つ変えずオークロードの一挙一動に注意を払っているモーガンは、巨大な盾でオークロードの強烈な棍棒の一撃をがっちりと正面から受け止めていた。

 そして魔法により身体中に纏った炎でモーガンの足に絡みついていたシャドウバイラールは燃やし尽くされた。



「今度はこちらからいかせてもらうぞ!」



 そう気合いと殺気を滲ませた声をあげたモーガンが今度はこちらから攻めようと一歩踏み出した時だった。



「副騎士団長! 後ろです!!」



 背後の森からアストレア聖騎士団の団員が悲鳴に近い声を上げた。



「はあぁぁぁぁ!!」



 そんな団員の声に瞬時に反応したモーガンは後ろを確認せず、振り返りながら背後から迫る気配に向かって炎を纏った盾で全力で殴りつけた。


 そして再び森に轟音が響き渡る。



「くっ……!」



 背後から奇襲を仕掛けてきた新たなゴブリンロードの拳とモーガンの盾が火花を散らしてぶつかり合うと、お互いあまりの衝撃に踏ん張り切れず後ろに吹き飛んだ。



「死ね」



 すると棍棒を持ったゴブリンロードの方に飛ばされて体勢が崩れたモーガンに向かって、体勢を立て直す間も与えないと言わんばかりに、ゴブリンロードは巨大な棍棒でモーガンを全力で横殴りした。


 絶体絶命かと思われたが、数々の危機を乗り越えてきたモーガンは今のこの状況にさほど危機感を抱いていなかった。


 団員達の悲鳴が聞こえてきた気がしたが、モーガンは落ち着いて自分の横から迫る棍棒を一瞥して魔法を詠唱した。



「“フルクシオ・プロテクション”!」



 ーーガンッ



「何!?」



 ゴブリンロードが横殴りした棍棒はモーガンの手前で音を立てて見えない何かによって弾かれてしまった。


 そして二体のゴブリンロードが驚いて動きを止めると、モーガンは一度息を吐いてゆっくりと立ち上がって二体のゴブリンロードを一瞥した。



「やはり、気配遮断系の闇属性魔法か。中々良い奇襲だったがそんな攻撃では俺には届かんな」



 そこで一旦言葉を止めて燃え盛る炎の如く紅く煌めく長剣を握り直した。



「それじゃあ、そろそろこちらからも行かせてもらうぞ……」



 そう宣言したモーガンは空気を切り裂く鈍い音を立てて一振りした長剣に紅の残像を残して蒼色の炎を纏わせた。

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