表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に導かれし者  作者: NS
第3章 死の森
64/434

3-22 終わりの始まり3

ゴブリンロード戦が始まります

 焚き木がパチパチと音を立てて、集まった冒険者達の会話の音が聞こえる。


 現在死の森の前には冒険者のランクがSSのモーガンとアークを先頭に二人以外のSSランク一名とSランク冒険者四名とアストレア聖騎士団の団員が約四十名という、エンデ村の見張りに残った一部を除いた冒険者達が集まっていた。


 しかし、これだけ人数がいるとはいえど敵の数が分からない上にSランクのモンスターがその中に複数いたという報告を受けていたせいか、皆真剣な表情で武器の手入れをしたり、背中を預ける仲間同士で会話をし連携の確認などしていて辺りには緊張感が漂っていた。


 今回の作戦ではモーガンとアークが率いる二組に別れて、遭遇したら各組でゴブリンロードを討伐していくというシンプルな作戦だ。


 戦闘はSSランクのモーガンとアーク、そしてSランク冒険者が戦い、異常事態をいち早く知らせたり各組の情報伝達、有象無象の相手をAランクのアストレア聖騎士団の団員がこなすという役割分担になっている。


 そして森の入口付近では負傷者が出ても直ぐに治療が出来るようにSランク冒険者で回復魔法の使い手を中心に拠点を設けていた。


 やがてモーガンが現れたのに気付いた冒険者達は武器の手入れ、会話を止めて立ち上がると真剣な表情でモーガンに注目した。


 そして皆の前に立ち、モンスターを威圧するような殺気を身に纏い普段と一段と雰囲気が違うモーガンは冒険者達を見渡し、やる気に満ちた皆の表情に満足気に黙って一度頷くと息を吸い込み紅く輝く長剣を引き抜き気合いを入れて声を張り上げた。



「これより作戦を開始する! 皆の者、健闘を祈る!」



 そして、モーガンの声に呼応した冒険者達が上げた雄叫びが辺り一帯の草木を揺るがしながら響き渡るのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それから行動を開始したモーガン達はさらに二組に別れ、一組は死の森の西側に向かって大きく回り込み、もう一組のロイ達は真っ直ぐゴブリンロードを見かけた湖に向かった。


 またアーク達も東側で同じようにして湖に向かう予定である。回り込む方には二名ずつSランク冒険者を向かわせ直進していくのはモーガンとアークの組ということになっている。


 そしてモーガンを含む十名の冒険者が些細な動きや音に注意しながら暗く視界が悪い森の中を真っ直ぐ進むこと約二十分経った頃。遠くの方から地響きと轟音が鳴り響いた。



「始まったか……」



 そう呟くモーガンが視線を送った先、西の方から赤い煙が一本上がるのを見るとどうやらアストレア聖騎士団のSランク冒険者とSランクの男の獣人のペアがゴブリンロード一体と遭遇したようだ。



「俺達も急ぐぞ」



 モーガンは視線を戻して小声で後ろをついて来る団員に声をかけて、皆が頷いたのを確認して歩みを進めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「モーガン達の方が遭遇したか……」



 響き渡った轟音と地響きに一旦立ち止まったアークは西側に立ちのぼる一本の赤い煙を一瞥して呟いた。



「俺達も先に進ーーッ!」



 後ろの団員達に声をかけながら正面を向いた時だった。


 右前の木が突然大きく傾きこちらに向かって倒れてきたのだ。団員達が突然倒れてきた木に反応しきれてない中アークはいち早く木が倒れてくるのを察知して背中の杖を抜き放って構えて意識を集中させて魔法を詠唱した。



「“アースマリオネット”」 「“グランドウェイブ”」



 すると地面から音を立てて現れた全長三メートルくらいの土のゴーレムが倒れてきた木を横に弾き飛ばし、倒れてきた木の後ろから地面が四、五メートル盛り上がり、創り出された土の波は周りの木を飲み込み吹き飛ばした。


 暗闇に紛れるような漆黒のマントを翻し杖を構え直して戦闘態勢に入ったアークは後ろの団員達に指示を送った。



「敵だ! 煙を一本上げて、お前達は下がってろ!」


 

 そしてアークの声と同時にグランドウェイブの土の一部が突然吹き飛ぶ。

 その衝撃で巻き上がった土煙の中から巨大な槌を持った不気味に目を光らせるゴブリンロードが唸り声を上げながら姿を現した。


 そんなゴブリンロードの様子にアークは更に警戒心を高めて殺気を発しながら土属性の魔力を身に纏った。



(俺ですらギリギリまで気配に気付けないとはな……。やはり、気配遮断の闇魔法か)



 そしてゴブリンロードは首をバキバキと鳴らしながら醜い口から鋭い歯を覗かせて対峙するアークに歩み寄る。



「人間風情が中々やるな。奇襲を反撃で返されるとはな……」


「ふっ……」



 するとアークは不敵な笑みを浮かべて、ゴブリンロードを蔑むような冷めた目で挑発した。



「今のが奇襲? あんな下手くそな闇魔法ではお前のような獰猛な巨体の気配は消せんよ」


「何だと?」



 アークの言葉にぶち切れたゴブリンロードは咆哮を上げると同時に素早い動きで一気にアークとの距離を詰めて頭から叩き潰そうと巨大な槌を思い切り振り上げた。



「近距離では何も出来ない魔術師ごときが粋がってんじゃねぇぞ!」



 巨体に似合わないその俊敏で力強い動きは並大抵の冒険者ではとても太刀打ち出来ないだろう。だが、相手は並大抵の冒険者でなかった。

 そして巨大な槌が振り上げられた瞬間、対照的に冷静なアークは鋭い目つきでゴブリンロードが動き始めた瞬間、懐に潜りこんで大地に亀裂が入るほど両足に力を込める。



「“グランド・ルクシオン”!」



 魔法の詠唱と共に膨大な土属性の魔力がアークの拳を包み込み、自分の杖を手放したアークはゴブリンロードの横腹に狙いを定める。



「はあぁぁぁぁ!!」



 そしてバキバキと音を鳴らして握りしめて全力で殴りつけたアークの拳がゴブリンロードの横腹に突き刺さり、衝撃波が発生する。

 瞬間、ゴブリンロードの足が地面から離れる。



「おぉおぉぉぉぁーー!?」



 訳も分からず痛みと驚きが入り混じった絶叫を上げるゴブリンロードの鎧は粉々に砕け散り、後ろの木々をなぎ倒しながら四、五メートル吹き飛ばされた。


 そんなゴブリンロードを一瞥したアークは舞い上がったマントに付いた土埃を手で払った。

 足元に落ちている杖が自らアークの右手に吸い寄せられるように手元に戻り、左手で首元を触りながら首をコキコキと音を鳴らした。



「魔術師が近距離戦が苦手だと誰が言ったんだ?」



 更に殺気を放ち、杖の先に茶色に光る魔法陣が浮かび上がると同時にアークは追い討ちをかけるように再び魔法の詠唱を始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ