3-10 託宣
エンデ村を出発した拓海とアイリスの二人は馬のようなモンスターであるデプラファンに乗りアストレアまでの草原を駆け抜けていた。
「なあ、アイリスは死の森の噂についてどう思ってる?」
拓海の質問にデプラファンに乗り、拓海の横を並走しているアイリスは首を傾げた。
「そうですね……。やはり、Sランク以上のモンスターが複数いて依頼を受けていた冒険者達が襲われたのではと思います」
その後、拓海はアイリスが何故森に複数の危険なモンスターがいると思ったのか聞いた。するとアイリスは一体だけなら、一人二人は逃げ切れる可能性もある上に、死の森に行った三、四つの冒険者のパーティー全てが行方不明になっているからと答えた。
「死の森はかなり広いですからね。一体だけなら遭遇しない可能性だってありますし」
「なるほどなぁ……。いや、胡桃達が大丈夫かなって思ってさ」
アイリスは拓海の言葉に「大丈夫ですよ」と返し、言葉を続けた。
「Sランク以上の冒険者が六、七人派遣されるようですし問題ないはずですよ!」
拓海はアイリスの言葉に一つ頷くといつまで考えてても仕方ないと思い話題を変えた。
「そういや、アストレアに着いて昼食を済ませたら何か依頼でも受けるか? アイリスが嫌だったら別に…「受けましょう!」…」
拓海と二人だけで初めて依頼を受けるチャンスと知ると、アイリスは拓海の話を遮って答えた。
拓海はアイリスの即答に少し戸惑いながらも話を続けた。
「お、おう……そうか。まあ、最近、突然危険なモンスターが現れたりするらしいから討伐系の依頼以外で何か受けるかな」
その後、二人は雑談をしながらデプラファンに乗ってアストレアまで草原を駆け抜けていった。
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宿屋『花鳥風月』で胡桃がカウンター席に座り一人でジュースを飲んでいると宿屋の管理人である仁が胡桃に話かけた。
「胡桃さん、少しいいですか?」
突然話しかけられた胡桃はキョトンとして首を傾げた。
「ん? どうしたの仁さん?」
仁は赤く透き通った目を細めた。
「一つ、拓海君についてです」
拓海に何かあったのかと、胡桃は戸惑いながら仁に聞いた。
「え……? 拓海に何かあったんですか?」
「いえ、今は大丈夫ですよ、今はね。私から言いたいことは、拓海君が自分を見失ってしまった時に胡桃さんが寄り添って支えて上げて下さいということですよ」
突然よくわからないことを頼まれた胡桃は少し戸惑いながらも返事をした。
「うーん……。よくわからないけど、頭の片隅にでも覚えておくよ!」
そう言ってジュースの残りを一気に飲み干した胡桃は「ご馳走様!」と仁に言って、部屋に戻っていくのだった。




