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異世界に導かれし者  作者: NS
第1章 異世界へ
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1-3 宿屋『花鳥風月』にて2

 部屋の窓から光が差し込み、日差しに顔を照りつけられた拓海は少し硬めのベットの上でもぞもぞと寝返りをうち、目を覚ました。


 拓海はベットで上体を起こして眠たそうに目を擦ると、しばらく間をおいて自分の手を見つめて握ったり開いたりをしばらく繰り返した。


 そして拓海はため息をついた。



(夢じゃなかったか……)



 昨日色々あったせいか疲れてぐっすりと眠れた拓海は一つ伸びをしてから、顔を洗って仁に貰った新しい服に着替えて軽く身嗜みだしなみを整えてから一階の酒場に行くことにした。


 拓海が階段を下りて一階の酒場に着いて周りを見渡すと、三人の村人達が一瞬こちらを一瞥したが、すぐに気にすること無く再び雑談をしていた。


 どうやらまだ胡桃はいないようだ。



(まだいないか……。まあ適当にどこか座って待っていようかな)



 拓海は適当にテーブル席に座って、この先どうしようかぼんやり考えていると二階からの階段を下りてきた昨日のくノ一姿の胡桃が視界に入った。



(お、胡桃ーー)



 やがて胡桃も拓海に気付いたのか眠たそうな目をしてのそのそと近づいて来る。



「おはよう胡桃……。あの、何か凄い眠そうだけど大丈夫か?」



 上から下まで見ると、服は所々ずれていて後ろから垂れるマフラーの左右の長さが違い、昨日とは違いだらしがなく見えた。


 すると胡桃は口元を手で覆って欠伸をしながら半目で答えた。



「ふあぁぁ……。 おはよぉ〜。私いまいち朝が弱いんだよね……」



 目をこすり、まだ眠たそうで瞼を半開きにした胡桃が拓海の正面の席に座ると、胡桃は自分の分と拓海の分をそれぞれ朝ご飯を注文した。ちなみに支払いは有り難いことに胡桃がしてくれるようだ。情け無いが、無一文の拓海は今は胡桃に頼ることにした。


 そして、朝食がきて食べ終わると、温かい飲み物を飲み、ようやく目が覚めてきた様子の胡桃に拓海は早速質問をした。



「なあ胡桃。この世界で一番情報が集まりそうな場所ってどこだか知ってるか?」


「情報かぁ……えっと、そうだね……。やっぱり聖都アストレアじゃないかな? あそこは一番大きな都市だからね。あ、そういえば拓海ってこの世界のことまだ全然知らないんだよね?」


「まあ、昨日この世界にきたばかりだからな」


「ふふん、なら私が色々教えてあげよう!」



 まず、この世界には六つの大都市があるようだ。北のラダトーム帝国、西の商業都市メーテス、東の港町ミンスク、南の魔法都市ソーサリー、島国の大和、そして中心に位置する聖都アストレアである。ちなみにここ宿屋『花鳥風月』があるエンデ村は聖都アストレアの南に位置するらしい。


 そして、この世界には魔法がある。基本的には光、闇、火、風、雷、水、無属性が七つの基本属性が存在する。例えば胡桃が昨夜使っていた魔法は闇属性の魔法らしい。そして一般的に人はどれか一つの属性を持っているそうだ。中には二属性使える人がいたり、稀に三つ四つの属性を扱うことが出来る人もいるらしい。ちなみに胡桃は風と闇属性を得意にしているようだ。


 また、拓海と話しながらこの世界と拓海のいた世界での常識を照らし合わせた後、雑談がてらこんな話を胡桃は拓海にした。


 この世界には七帝と呼ばれるそれぞれの属性を極めた人が七人いると言われている。七帝のほとんどは普段はどこで何をしているかわからず、裏で様々な任務を行っていて、噂では七帝の一人一人が国を壊滅させることが出来るほどの化物のような力を持っているようだ。

 また、この世界に伝わる伝説で数千年も昔、この世界には七魔神と呼ばれる魔神がいたらしい。一体一体この世界を支配するほどの力を持っているとか言われていて、この世界のどこかに封印されているとか噂があるようだ。


  最後に冒険者について。この世界でモンスターを倒し生きていくなら、それぞれの町にある冒険者連盟指定のギルドで冒険者に登録しなければいけないらしい。冒険者になるには特に年齢制限はなくそれぞれランクがある。下からE、D、C、B、A、S、SS、SSSと定められている。ランクが高いほど危険な任務が多く、低いほど危険度は低い。Sランクからは人数は極端に減り通り名がついて知名度も高くなるらしい。他にも異例の者にはJランクというものがあるそうだ。


 胡桃の話が終わり、拓海は胡桃が冒険者と名乗っていたのを思い出した。



「へ〜! なるほどな……ちなみに胡桃は冒険者になって何年くらいたつんだ?」


「う〜ん、今年十六歳になったからもう十年たつかな?」


「へ〜……って十年!? 六歳からしてるのか?」


「まあ、それなりに幼い頃から色々教えこまれたからね……。ちなみに私はSランクで『黒流星』って通り名があるよ!」



 胡桃はそう自慢げに胸を張った。



「お、おう。すごいな」



 胡桃はそこそこ胸はある方なので、拓海は目のやり場に困り動揺して視線を泳がせていた。



「おやおや拓海〜? どこ見てるのよ、拓海のエッチ!」



 拓海が視線を泳がせているのに気づいた胡桃はいたずらっぽい笑みをマフラーの下で浮かべながら胸を両腕で隠して拓海をジト目で見た。



「い、いやいやそんな見てないよ! 別に、見てない! 見てないぞ!?」



 すると拓海が動揺して、焦って言い訳をし始めたのを見た胡桃は吹き出して笑い始めた。



「く、胡桃?」


「あはははは! い、いや拓海の反応が面白いからさ。冗談よ冗談! そういえば拓海って何歳なの? 同い年くらいかな?」


「はぁ……あんまりからかうなよ。俺は今、十七歳だから胡桃の一つ上だよ」


「ふむふむ……年上かぁ……。あ、そうだ。この先拓海はどうするの?」



 尋ねられた拓海は小さく唸りながら考え始めた。



(どうしようかな……。情報集めとか、しばらく生活するためのお金稼ぐにしてもやっぱり大きな都市の方がいいよな……)



「そうだな……。とりあえず聖都に行ってみることにするよ! 昨日、今日と色々とありがとう」



 拓海が頭を下げてお礼を言うと、胡桃から「そうだ!」と何か思いついたような声が聞こえた。



「私もついて行くよ! 拓海一人だとやっぱり危険だろうしさ」



 突然の胡桃の申し出に、顔を上げた拓海は有り難い気持ちの反面申し訳なさを感じた。



「いいのか? 確かに胡桃がついてきてくれるなら頼もしいけど……」


「いいの、いいの! 道中危険があるかもしれないし、拓海一人じゃ道に迷うかもしれないでしょ? まあ、どの道アストレアには行く予定だったからさ。ふふっ、それに何か面白そうだからね!」


「面白そうって……」



 そうやって笑顔を向ける胡桃に拓海は少し頰が熱くなるのを感じたが、一息ついてから口元に笑みを浮かべた。



「まあ、いいか。よろしく胡桃」


「うん! よろしくね拓海!」



 こうして握手を交わした拓海と胡桃は共に聖都に向けて出発するのだった。

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