3-7 宿屋『花鳥風月』再び1
モーガンとの対話を終えた拓海は胡桃とアイリスと合流するためアルカディア城の酒場に来て周りを見渡すとすでに合流して会話する二人を見つけた。
そして胡桃が視線で拓海に気づくと、楽しそうな表情で拓海に向かって手招きをした。
「おーい! こっちだよ拓海!」
拓海はそんな胡桃に片手を上げて返してから近付いて行くとそこには新しい防具を身につけたアイリスがどうですかと言わんばかりの期待の眼差しを拓海に向けて笑みを浮かべて座っていた。
アイリスの新しい装備は幻獣の半透明な美しい皮で出来たフリルが特徴的なホワイトウルフの毛皮から作られた純白の柔らかく丈夫な生地のドレスだった。
拓海は一瞬見惚れてしまったが、アイリスに笑みを向けて誤魔化した。
「やっぱり綺麗だな……。すごい似合ってる」
「えへへ、ありがとうございます!」
アイリスはそんな拓海の言葉に頰を緩めて喜んだ。胡桃はそんな二人を見て、心の中がチクりと痛んだ気がした。
(あ、あれ? 何だろ……この気持ち……)
「ん? どうした胡桃?」
黙って表情を曇らせていた胡桃に拓海が心配になって顔を覗き込むように尋ねると、胡桃はハッと我に返って笑って誤魔化した。
「い、いや。何でもないよ! あははは……。あ、そうだ報告することがあった」
そして胡桃は一度咳払いをして、気をとりなおしてさっき決めた自分の意向を二人に伝えた。
「私、やっぱり依頼を受けることにするよ。Sランク冒険者としての役割をたまには果たさないとね!」
拓海はそんな胡桃の言葉に一つ頷くと、何か思いついたかのような仕草をした。
「そうだ! 今回胡桃達が依頼の拠点にするのってエンデ村だったよな?」
拓海の質問に胡桃は少し驚いた顔をしてから拓海に聞き返した。
「あれ? 私エンデ村が拠点になるって拓海に言ったっけ?」
「いや、さっきモーガンさんと話した時に聞いてさ。それで、久々に仁さんに挨拶とお礼を言いに行こうかなと思って……。いいかな?」
「仁さん? どなたでしょうか?」
その後アイリスが仁さんのことを知らなかったので、拓海がこっちの世界に来た時お世話になった人と説明すると、アイリスは拓海の意見に賛成してくれた。
それから拓海達は結局三人でエンデ村に向かうことにして、三人はそれぞれ準備をしてからデプラファンをアストレアで借りてその日の夕方にアストレアを出たのであった。
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そして三人は特に危険なモンスターとも出会うことなく、辺りが真っ暗になる前に無事エンデ村に到着した。
(何か前に来たのがすごい昔に感じるな……)
それから拓海達がエンデ村の入り口に行くと、拓海と胡桃が初めてここに来た時と同じ門番の男が立っていて、挨拶を交わしてから少し雑談をした後、デプラファンを村の入り口の小屋に預けて三人は宿屋『花鳥風月』に向かうのだった。




