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異世界に導かれし者  作者: NS
第9章 魔法都市ソーサリー
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9-30 魔神の眷属2



「選択の時だ」



 アークの制服を身に付けた男がそう一言呟くと同時。



「ッ!? なっ! これは!?」



 視界が揺れ、脳が揺さぶれる感覚。突然湧き上がるように戻る記憶。



「汝の選択、如何に?」



 生気を感じさせない無機質な声色に我に返った拓海は、マジックバックから瞬時に桔梗を取り出し霊気を纏った。



「何者だ、お前?」



 男の質問を無視した拓海はマグノリアの前に立ち、桔梗を構える。



「な、何……何が起こっーー」



 マグノリアが目を白黒させて、震える声が口から漏れたと同時、アークの男が拓海達に向かって手を向けた。



「セイントアーク」


「ファントムミスト」



 分身を突撃させた拓海はマグノリアを抱えて建物を飛び越え、全力でその場を離れ始めた。



「ーーッッ!?」



 突然抱えられたマグノリアは体感したことのない移動速度に声にならない悲鳴をあげている。



「声あげんなよ、舌噛むぞ!」



 そう叫びながら次の建物に飛び移ろうとした瞬間だった。

 景色が歪み、先程逃げていた方向とは真逆の位置にあるはずの見覚えのある景色に変わる。



(何が起こった!? まさか空間がループしてる?)



 血相を変えた拓海は続けざまに、おそらくこの空間に対抗できるであろう仲間の名を心の中に呼びかける。



(ステラぁ!! 緊急事態だ!)



 その直後、拓海は自身の右から迫る希薄な気配に気付く。それと同時に拓海は霊装のマントを右腕に纏わせてマグノリアを庇うように、どこか見覚えのある鎧の騎士と接敵する。


 凄まじい速度で振り下ろされる長剣を、拓海は右腕で振り払うように受け流し、マグノリアを降ろして空いた左手で腰に帯刀した霊刀を抜き放つ。



「疾雨の太刀“叢雨むらさめ”」



 騎士は体勢を崩しながらも長剣を盾のように構え、拓海から放たれる数多の斬撃を受けて土煙を上げながら後方に飛ばされる。



「桐生君、ありがとう。もう大丈夫」



 急な展開と強襲を受けたが、拓海が何とか凌ぎきったことで落ち着きを取り戻したマグノリアは息を吐いてマジックバックから取り出した杖を構える。そんなマグノリアを横目に拓海は心の中で呼びかけたがステラからの応答がないことに顔をしかめた。



「何の魔法をかけられたか分からないけど、今俺達二人は逃げられない別の空間に隔離されてる。とりあえずあの二人をどうにか打倒するぞ」


「うん、前衛はお願い」


「任せろ」



 そう二人が言葉を交わすと、舞い上がった土煙が割れる。

 そして土煙を長剣で切り裂いた現れた無傷の騎士と追ってきたアークの制服を身に付けた男の二人がゆっくりと拓海達に歩みを進めるのだった。


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