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異世界に導かれし者  作者: NS
第9章 魔法都市ソーサリー
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9-27 魔力操作2



「集合!」



 真は拓海から視線を外し、訓練場で各々練習している約五十人のルーンの生徒達に呼びかけた。

 皆、不思議そうな表情を浮かべながらも続々と真の元に集まってくる。

 どうやら普段、真は授業の始めに課題と手本、コツや原理などの説明をした後に各々練習する生徒達を回ってアドバイスする授業形式で、途中生徒を集合させることは滅多にないらしい。



「色々な生徒を見てきたが、久々にこれを自分のものにしている生徒が現れた」



 そう言った真に肩に手を乗せられ、皆の注目が集まった拓海は軽く会釈した。

 授業の始めに、真が留学生であり現役冒険者である拓海と胡桃を軽く紹介していたため、流石現役冒険者だとちらほら感嘆の声が聞こえて、若干拓海は照れくさくなって顔を伏せた。



「よって次の段階を教えようと思う」



 そう皆に言った直後、真が片手を上げて振り下ろす。



「拓海、お前が極めた方はこっちか?」



 真が振り下ろした片手に、高い濃度の雷属性の魔力の結晶でできた雷を纏う長剣があり、真の周囲に雷属性の魔力が渦巻いていた。



「……まあ、多分それの派生かな」



 真が目の前でしていることから、拓海の『コキュートス』の基礎のようなところを感じ、とりあえず肯定した。

 そして同時に他の派生があったことに、拓海は表情には出さなかったが驚きと共に期待をしていた。



「これは『造形型』。魔力に新たな効力と形を持たせる派生だ。この剣を造り出す程度のことでも、最低魔力の質がSは必要となる。造り出す形とその精度は魔力の量に、持たせる効力については魔力の質によって出来ることが変わってくる」



 真の言葉に拓海はなるほどと頷く。

 おそらく桔梗が持つ『創造』の力はこの技術を簡単に扱えるようになる力を持ち、更に『魔力増幅』の力を同時に持つため、少ない魔力消費で様々な巨大な形を持つ魔力を扱えていたのだろうと今更ながら考えた。

 魔力の質が既にSSSまで成長して、魔力に様々な効力を持たせることが可能な拓海はもしかしたら、今後自分だけの新しいオリジナル魔法を創り出すことも出来るのではないかと考えながら真の次の言葉を待った。



「さて、『造形型』は自身に宿る魔力を利用しているわけだが、次説明する型は違う。神崎、少し手伝ってくれ」


「私?」



 そう言って真は胡桃を手招きして呼ぶと、不思議そうな表情を浮かべた胡桃は真の元に向かった。



「これ、少し離れた場所から俺に投げてくれ」


「全力?」


「いや周りの人が見えるくらいの速さで、魔法は使わず」



 真が手渡したものは木製のナイフで、指示を聞いた胡桃は木製ナイフをまるで自分の身体の一部かと思えてしまうほど、手元で回しながら真から距離を置く。



 ーフッ



 一瞬聞こえた風を切る音。


 何の予備動作もなく流れるような動きで、振り向くと同時に胡桃が放ったナイフは、常人では反応して避けることが出来ないだろう。


 しかしナイフは常人でも視認できる程度の速さであり、ただ言われたレベルに合わせたことをするだけではなく、胡桃は歴戦の冒険者としての実力を垣間見せるための技を見せたのであった。


 拓海の他にも何名かは胡桃の動きにも驚くことなく反応していた。

 もちろん真もその一人。


 真に近づいていくナイフが拓海にはゆっくりに見える。ただ、真はナイフを見据えながらも魔法はおろか、動くことすらしない。


 このままではナイフが命中すると思われたその瞬間、拓海や胡桃は目を見開く。



「「!?」」



 ナイフが空中で突然止まったのである。



「『空間掌握型』。周囲に霧散している魔力と自身の魔力を連動させて、自身の身体の一部のように魔力を操る型だ」



 真がそう言った直後、空中に止まっていた木製ナイフの周りが淡い緑色に光ると共に、ナイフは音を立てて潰れていき、木屑となるのだった。

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