9-26 魔力操作1
(驚いたな……)
真は今日から直接指導する二人を目の前に、目を丸くしていた。
ウイが冒険者登録し、ユグドラシルのメンバー達と出会った次の日。拓海と胡桃は初めてのルーンでの授業、神道真の『魔力操作』を受けていた。
真が驚いていたのは拓海。初めて概要と感覚を教えただけで、氷属性の魔力が魔法を使うことなく拓海の手の平で渦巻き、手の平から高さ約一メートルまで魔力の渦が伸びていた。
普通の人は、魔力というものは魔法が無ければ使用することが出来ないと思い込んでいる。実際、一般的には魔力は魔法という様々な形を持った器に対して魔力を注ぎ込むことで、異なった効果を得て発動すると認識されている。
しかし真曰く、魔法の燃料としてしか使えないほど魔力は不自由なものではないらしい。
魔力は考え方、想像力、質の高さにより使える幅が無限に広がる。
まずは魔力は魔法にしないと使えないという考えを捨てる。そして自分にとって必要だと感じる像を想像し、身体に流れている魔力でその像を創り出す。魔力の質が高いほど、難易度が高い像を形成することが可能になるらしい。
本来、自身に魔力が流れていることを自分で認識できるようになることから始めるのだが、拓海は問題無くこなしていた。
何故拓海がすぐに出来たのか。答えは簡単。この技術を魔刀桔梗の創造の能力を使用する際、無意識に使っていたからである。
(これの最終形が……『コキュートス』なんだよな)
『コキュートス』、以前メーテスでマルコシアスとの戦いで使用した拓海の現時点での切り札、習得難易度神話の氷属性の魔法だ。
自身が今出来ること、欲している力、理想の魔法を見つけ、追求を続けることで辿りついた氷属性魔法の一つの極地であった。
ウイと共に練習をする胡桃はまだ苦戦していたが、開始約一時間程度とは思えないほど感覚は掴み始めているようであった。
そして拓海が自身の魔力を魔法を使うこと無く自在にコントロールしている様子を見て、真は少し離れた場所で一人技を確認している拓海を手招きで呼んだ。
「これは既に習得済みの技術だったみたいだな」
「まあ、そうだな」
「なら、次の段階を教えよう」
「次の段階?」
その言葉に拓海は眉を潜めた。この技術の先に何があるのか、その一つの極地に至っている拓海は他に何か違う技術があるのではないかと、期待をしながら真の次の言葉を待つのであった。
執筆時間が足らない……。次の話は近いうちに投稿できそうです。




