3-1 デート?1
第3章スタートです!
バンダースナッチとの死闘から一か月が過ぎていた。
一か月前、拓海達三人はアストレアに帰ってきてから依頼内容に不備があったことを報告するためまずギルドに向かった。
しかし、バンダースナッチが森にいたから戦闘になり討伐してきたとバンダースナッチの素材を証拠として見せると、受付嬢が呼んだギルドの偉い人に本当にバンダースナッチがいたのか調査を行うと言われ三人は追い返されてしまったのである。
そして数日後にギルドの調査で森の中からバンダースナッチの死体も発見され、ギルド側の失態だったことが発覚すると拓海達にギルドから大量の謝礼金と報酬が渡されたのだった。
それからギルドからの謝礼金と報酬を受け取った胡桃は防具を新調するため一度大和に帰っていった。本人曰くどうやらくノ一型の防具は大和でしか作れる職人がいないようだ。
そんなわけで胡桃が帰ってくるまで身体を一旦休めようと休暇をとり、拓海は以前アイリスに防具を一緒に選んで欲しいと交わした約束を思い出し、今日はアイリスの装備を新調するためにアルカディア城の前でアイリスと待ち合わせをしたのであった。
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「あれ? まだアイリスは来てないのかな?」
集合場所であるアルカディア城前の広場に十分ほど前に着いた拓海は、近くにあったベンチに腰掛けて一息ついた。
それからしばらくして、いつもは集合時間より前には必ずいるアイリスが今日は時間ギリギリになっても来ないことに拓海が心配し始めた時後ろから誰かに肩を叩かれた。
「ん?」
何事かと振り返ると、そこには息を切らして普段とは違う姿のアイリスが肩で息をしながら立っていた。
「はぁ……はぁ……す、すいません遅れてしまって……」
アイリスはいつものローブではなく真っ白でフリルのついた透明感のあるドレスのような高級そうな服に高そうな黒のブーツを履いていた。
そんないつもと違うアイリスの姿に拓海が目を見開いて固まっていると、アイリスは恥ずかしそうに頬を赤らめ恐る恐る尋ねた。
「あ、あの! こ、この服変じゃないですか……?」
アイリスの言葉に我に返った拓海は慌てて笑みを浮かべながら答えた。
「え、あ、凄い似合ってるよ! いや、アイリスのそういう服を初めて見たからちょっと驚いちゃってさ……」
「えへへ……あ、ありがと……です」
似合っていると言われたアイリスは照れながらも、笑みを浮かべて喜んでいた。
そんな中アイリスが煌びやかにオシャレをして来たのに、この世界ではまともな私服がない拓海は普段依頼をこなしている時の服装で来てしまい申し訳ないという気持ちが湧いてきた。
「ごめんアイリス。何にも考えずにいつもの服装で来ちゃった……」
申し訳なさそうな表情をした拓海の言葉を聞いてハッと我に返ったアイリスは目を強く閉じてブンブンと首を横に振った。
「いえいえ! 私が好きで着てきただけなので、拓海さんは気にしないで下さい! その、私は拓海さんと買い物出来ればそれで十分嬉しいので……」
後半は声が小さくて何を言っているのかよく聞き取れなかったが、どうやらアイリスは気にしてないようで拓海は胸を撫で下ろした。
「よっと!」
そう声を出して勢いよく立ち上がった拓海はふと何か思いついたかのように呟いた。
「そういえばアイリスと二人で出掛けるのって初めてだな……」
「えへへ……そうですね! 今日はお付き合いしていただきありがとうございます!」
そう嬉しそうに満面の笑みを浮かべて首を傾けるアイリスに拓海は照れながら笑いかけた。
(アイリスとは何度も顔を合わせてるはずなのに何か照れるな……)
とりあえずこのまま立ち話を続けていたら本来の目的を忘れてしまいそうだったので拓海は早速本題に入った。
「それで、アイリスは最初どこに行きたい?」
「そうですね……。今回の装備はオーダーメイドで作る予定なのでまずは素材屋に行きたいです! あ、案内は私がしますよ! さぁ行きましょ!」
「っ!?」
そして上機嫌な様子で拓海の手を引いて拓海に笑いかけたアイリスは素材屋に向かって歩き出したのであった。




