9-25 逡巡
書いている途中で3回データがとびました(白目)
「……」
視線の先には仲良く話す胡桃とウイの二人の姿。
周りを静かに見回す。空の色は変わらず、特に変わった様子はなく道を沢山の街の人達が行き来している。
歩きながら、無言で自分の手の平や格好を確認するが何も変化はなかった。
(拓海さん……?)
複雑な心情の拓海の名前を呼んだのは、拓海の契約精霊のソラ。
そして、心の世界から拓海に心配そうに声をかけたソラに続いてもう一人。
(拓海様、間違っていたらすいません。何を見せられました?)
同じく拓海の心の世界に住む、ソラの契約精霊であるステラである。
周りの様子と二人の言葉から、拓海の異変に気付けたのは、この二人だけということで拓海は答えた。
(見せられた何てもんじゃない、体験させられた)
(……?)
(体験……ですか?)
っ
二人がいまいち良く分かっていないことから、やはり具体的にあの体験をしたのは自分だけであることを悟り、困惑する二人に尋ねた。
(二人は俺に何かあったことを、何を見て気付いたんだ?)
すると二人は少し間をおいてから順番に話し始めた。
(んー……拓海さんから迷いを感じて、心の世界の水が微かに濁ったの)
(私は心の世界に自分と似た他人の魔力が干渉してきたことに気付いたので……)
(なるほど、そうか)
拓海は二人の言葉を聞いて一呼吸おき、前を歩く笑顔の胡桃の横顔を眺め、拳を握りしめる?
(他言無用。今から話すことは胡桃にも話さないでくれ)
そう二人に釘を刺してから自分がこの一瞬で体験したことを話し始めるのだった。
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二人は黙って拓海の話を聞いた。
そして話を聞いて、しばらく二人は色々と信じられないといった様子で何も言えずにいた。
もちろん拓海も同じ。何を信じたらいいのか、何が真実なのか分からなくなっていた。
拓海が疑心暗鬼になることが目的で始祖の魔族とやらが接触を試みた可能性は考えた。
しかし、拓海には何故か嘘をついて騙そうとしているようには見えなかった。
始祖の魔族が言うことが本当ならば、自分の目的と合致している。その上、敵対しないのならば傷付くことはない。
だが、だからといってこの世界の人々を殺戮する行為を黙って見過ごし、黙認することは拓海には出来なかった。
(俺は……)
拓海の心の世界にいるソラとステラは拓海の気持ちがよく分かるため、かける言葉が見つからなかった。
陰る表情を浮かべる拓海は顔を伏せ、胡桃とウイの後ろを歩きながら途方に暮れるのであった。




