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異世界に導かれし者  作者: NS
第9章 魔法都市ソーサリー
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9-20 ルーン4

「ふぅ……本当に広いな、ここの施設」


「ね~! それにしても図書館かぁ……、大和でも使ったことなかったんだけど」


「そういえばそうだったな。俺が調べものしにいった時も修行するとかいって、志乃と街の子供達と遊んでたもんな」


「う……あの時はごめんってば」



 レイのルーンの施設案内と色々な手続きを終えた拓海と胡桃の二人は、そんな会話をしながら大図書館の建物に入っていった。

 大図書館は一階から最上階である十階まで吹き抜けになっていて、アストレアのアルカディア城にもあったエスカレーターのようなもので階を移動できる。また、中央の吹き抜けの空間は安全面を考慮して重力が通常より小さくなっているらしい。


 二人が大図書館に訪れたのは、大和では見つけることが出来なかった拓海が前にいた世界についての情報を探すためだった。

大和やアストレアの大図書館もかなり大規模であるが、それでも見つけることが出来なかった。だから、拓海は特に期待はしていない。



(実際、一般人が手の届くような場所にはないだろうなぁ……)


(じゃあなんで来たのよ?)


(まあ、胡桃が好きそうな体術とか魔法についての本があればいいなってさ)


(拓海様は本当に胡桃様のことが好きなのですね)


(あぁ、まあな)


((……))



 拓海は脳内で心の世界にいるソラとステラと言葉を交わし、小動物のように辺りをきょろきょろと見渡す胡桃を横目で見て、口元を緩めるのであった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「へ~、本って意外に面白いね!」


「だろ? でも、図書館では声のボリュームは抑えてな」


「ん!」



 思い出したかのようにハッとした顔をした胡桃は、慌てて口を閉じて首を何回か縦に振った。

 正面に座っている胡桃の慌ただしい仕草に、拓海は内心安心していた。元々身体を動かすことが大好きな胡桃が本を気に入ってくれるか心配だったが、様々な武器術の簡単な型についての本だけではなく、料理本にも興味を示していた。



(よかったけど……)



 分かってはいたが、目的の本はやはり一冊も見つけることはできなかった。

 しかし、その最中先程少しだけ剣技を見せてもらったセレナが書いた本を発見した。現在大図書館の読書スペースで二人は本を読んでいて、拓海はセレナの本に目を通していた。


 訓練場では拓海は簡単な連撃と、連撃の終わりで『透涼の太刀“飛燕”』を見せた。対するセレナは流麗な剣舞と、高速で振るった剣から十字に魔力の刃を放つ『グランドクロス』という魔法を見せた。

 そのセレナの魔法に拓海は苦笑いをしてしまった。それもそのはず。この前、戦った魔将アスタロトも使っていて、ソラとステラかばわなければ拓海が殺されていた魔法だったからである。

 セレナはそんな拓海の様子に不思議そうな表情を浮かべていたが、結局二人とも満足して解散したのであった。


 そんな上級クラスの魔法を普通に披露したセレナが、一体どのような本を書いたのか拓海は興味が湧いていたのである。

 拓海は目次から順番に読み進めて、以前アストレア聖騎士団の団員から教わったことがある長剣の基本的な知識や型と似た記述を発見した。



(なるほど、長剣の取り扱い入門書か。というか、あの時教えてもらったことってこの本から学んだことだったのかな)



 型の初動に繋がるための練習方法や意識するポイントが分かりやすく解説されていて、拓海は教科書のような感覚を覚えた。



(そっか。セレナさんや、真さんってルーンでは先生をしてるとか言ってたもんな……。ということはやっぱり教科書か)



 そして、冒険者も参考にしているセレナの本に感心しながら本を読んでいると二人が座る席に近づく女性が一人。もちろん二人は意識を向けられた時点で気づいていたが、敵意は全く感じなかったため話しかけられるまでは本をよみつづけていた。



「こんにちは、見ない顔ね」



 二人が目を向けると、ルーンの紺色の学生服を着た白髪ポニーテールの女性だ。身長は胡桃より少し低いが凛とした表情からは幼さは感じられず、年齢は拓海達と同じくらいに見える。



「あぁ、今日初めてルーンに来てね」


「なるほどね、見たことがない変わった服装の男女二人組がいるって噂になっていたわよ」


「まあこの辺りでは珍しいよな」


「だね~、ところであなたはルーンの学生さん?」


「そうよ。私の名前はウイ、ルーンに通い始めて五年になるわ。よろしくね」


「よろしく。俺は拓海、大和の冒険者だ」


「私は胡桃、同じく大和の冒険者よ。よろしくね!」



 すると、二人が冒険者であると知ったウイは目の色を変えて拓海に迫った。



「ねえ、良かったらあなた達の話を聞かせてくれないかな?」



 拓海と胡桃は顔を見合わせ小さく笑い、それから三人は大図書館の近くにある喫茶店に向かうのであった。



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