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異世界に導かれし者  作者: NS
第9章 魔法都市ソーサリー
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9-17 ルーン1

明けましておめでとうございます!


最新話の更新大変遅くなりました……。

 次の日、冒険者として仕事をする時の装備を身につけた拓海と胡桃の二人は、朝からこれから世話になるソーサリーの学舎の巨大な門の隣にある受付にいた。


 街の中で一番敷地面積をとっている巨大な施設であり、生活を豊かにする魔法や戦闘で扱われる魔法、それだけでなく将来冒険者希望の人達への指導を含め、様々なことを学んで研究する学舎。


 名前は『ルーン』といい、関係者のみが所有する特殊なカードを持たなければ入ることが出来ない丈夫な魔法結界が張られている。

 どうやら街を覆っている巨大結界よりは強度は低いが、習得難易度SSSランクの攻撃魔法をも防いでしまうほど強固なものらしい。

 また、カードは本当の所有者が持たなければ機能しないため関係者以外は入ることは出来ない。そのため、基本関係者以外は受付でカードを発行してもらわなければならないのである。


 受付嬢に二人が冒険者の身分証となるカードを提示して、更にアストレア聖騎士団長であるルミエールの手紙を取り出すと、受付嬢は少し確認をするから待って欲しいと二人を待たせて連絡をしにいったのあった。



 そしてこの街には珍しい、胡桃と拓海が和風の装備をしているせいか、門をくぐるルーンの学生の物珍しそうな視線を感じながら二人が待つこと約十分。

 受付嬢が二人を呼び、二人が受付に行くと先程まではいなかったルーンの制服と思われる特殊な紺色のローブを身につけた一人の女性が立っていた。

 背丈は胡桃と同じくらいの女性は二人の姿を確認し、丁寧に頭を下げた。



「お待たせしました。私は『ルーン』でセレナ様の助手を務めさせて頂いておりますレイと申します。以後お見知りおきを……ってあれ? もしかして胡桃ちゃん?」



 見覚えのある顔に気付き、勢いよく顔を上げたレイは驚いた表情で胡桃を見つめながらそう尋ねた。



「あはは……いきなり会えるとは思ってなかったよ。久しぶり、レイさん」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 アーク所属のSランク冒険者でルーンでは教員を務める胡桃と同じくらいの身長で銀のショートヘアの女性、レイは胡桃との再会に喜びながらも拓海と胡桃に施設の案内しながら、今回ルミエールから話を聞いているアークメンバーの内の一人、セレナが他のアークメンバーとトレーニングしているらしい訓練場に向かっている。

 セレナの直属の部下はレイを含め数人いるようだが、今回たまたま門の付近にいたレイが案内するようにと通信用マジックアイテムで連絡があったらしい。


 また、道中数々の見たことも聞いたこともないマジックアイテムや設備を目の前にして、自分がまだ知らない魔力の使い方や新しい自分の戦闘スタイルが見つかるかもしれないと、拓海と胡桃は期待を膨らませていた。


 そして約三十分ほど歩き続けたところで、三人はようやく目的地の訓練所に辿り着く。



「すいません、結構時間がかかってしまいましたね。この先の訓練所にセレナ様とまことさんがいます」



 扉に手をかざして認証しているレイがそう苦笑しながら言った中に、初めて聞いた真という名に拓海と胡桃は驚きの表情を浮かべた。



「へー! アークのメンバーにも大和出身の人がいるんだ」


「どうでしょうかね……真さんは自分のことはあまり話さない人なので。でも、幼馴染みのセレナ様は多分知っていると思いますよ」


「あー、もしかして生まれはこっちかもね」


「それはそうと、お二人共アークの中で近接戦闘においてトップの実力者ですから、お二人が望んでいることも知っているかもしれませんよ」



 そうレイが二人に言うのと同時に扉に刻まれていたらしい通常だと肉眼で見えない緑色の魔法陣が浮かびあがって回転し始める。


 そして、扉が煙のように消えて少し先まで続く廊下の向こうには更に同じような扉が見える。



「付いてきて下さいね。向こうの扉に触れると、またここの扉が現れるので」


「二重扉なんだな」


「ええ、安全性を考慮した結果だそうです。皆さん本気で命のやり取りをする訓練の時は、幻想闘技場を使いますが基礎練や近接戦闘の訓練はこっちが多いですね」



 話している内に二つ目の扉も一つ目同様に開き、三人は訓練所に足を踏み入れた。



 あらゆる耐久性を引き上げる魔法と再生の魔法の二つが組み込んである、特殊な素材で出来た淡白な床と壁。天井は開けていて、青空が見えるが天井には強力なドーム状の魔法障壁が張り巡らされているようだ。


 そんな敷地面積もかなり広い訓練所の隅の壁に寄りかかり、動きやすい同じ訓練着を着た二人の男女が立っていて何かを話し合っている。

 身長は拓海と同じくらいで、翡翠色の瞳と、肩くらいまでの緋色の髪を持つ女性が一人。

 身長は百八十センチはあるであろう、黒のショートヘアと黒の瞳を持つ男性が一人。


 レイに連れられてきた拓海と胡桃に気が付き、女性が男性の方に話しかけて男性が頷いて返すと、二人はゆっくりと拓海達の方に近づいてきた。



「あなた達があの人が言ってた子達ね」


「はい、桐生拓海です。お世話になります」


「神崎胡桃です。よろしく」



 ルミエールが自分だけでなく、仲間を連れていくことを見越して事前に話を通しておいてくれたことに拓海が感謝していると、女性が頷いて話し始めた。



「私の名前はセレナ。『アーク』では前衛指揮を担当して、ここ『ルーン』では付与魔法の教員を務めているわ」



 セレナは簡単に自己紹介をして男性の方に軽く視線を向けると、男性の方は拓海と胡桃を眺めながら応えた。



「神道真だ。『アーク』では前中衛を担当している。ここでは魔力操作と武器術の教員だ」


「「魔力操作……」」



 拓海と胡桃は思わずその言葉を呟く。

 拓海達は自分が持て余している魔力を十二分に扱えるようになり、自分の力を最大限まで引き出せる技術を探しにここに訪れた。

 そして、いきなりそのきっかけとなりそうな言葉を聞いた二人は、早速真が担当している魔力操作に興味を示し始めていた。


 そんな二人の考えを何となく察したセレナは苦笑し、真は軽く息をつくと二人に尋ねた。



「お前達の実力は既に隠し切れない程には感じているが、今から少し見せてもらおうか。武器無し魔法無し、寸止め決着で一人ずつ軽く手合わせ……どうだ?」


「武器無しか……。胡桃に比べると全く自信がないけど、それで大丈夫です」


「うん、問題ないよ」



 二人がそう言葉を返すと、拓海の腰に装着された魔刀を珍しそうに見つめるセレナが拓海に尋ねた。



「あなたの刀術も見てみたいわ。後で少し付き合ってくれる?」


「あ、なら後で少しだけなら」


「ありがと。二人はどっちからする?」



 セレナが目を細めて微笑んでから二人に尋ねると、拓海が胡桃の方に少し目を向けてから答えた。



「なら俺からで」


「分かった、セレナは見ていてくれ」


「えぇ、分かった」



 そう短いやり取りを済ませ、拓海と真が訓練所の中央に移動し、見届けるセレナと胡桃は少し離れた場所で二人の様子を見守るのであった。

投稿頻度も徐々に戻していきます。


今年も『異世界に導かれし者』をよろしくお願いします!

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