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異世界に導かれし者  作者: NS
第9章 魔法都市ソーサリー
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9-3 決別2

 一瞬の浮遊感の直後、床に足がついた感覚がした拓海達は目を開けた。



(久々だな……ここ)



 空間転移した拓海達は、拓海がこの世界に来て間もない頃ルミエールと対話した雲よりも上に作り出された特殊な空間に、立っていた。


 ルークが作り出したこの空間は、他者に会話の内容を聞かれないようにすることと、気配を完全に消すこともの出来る。まさに、今秘密裏で受けた依頼を拓海達が報告するには適した場所である。


 ここに来たことがないアイリスは慌てふためいていたが、足場がしっかりとあることが分かると、すぐに落ちついた。



 そしてそんな中、何ともいえないような微妙な空気を作り出している者が三名いた。



「ノア、おかえり」


「……ただいま」



 椅子に立ち上がったルミエールは、現れたノアとルークの複雑な表情から何かあったのかと、怪訝な表情を浮かべながらもノアを出迎えていた。


 すると、三人が黙ってしまったタイミングで拓海が話を切り出した。



「メーテスの調査の依頼、これがその報告書です」


「あ、あぁ……。見せてもらおうか」



 拓海はそう言いながらアイリス、リンスィール、拓海、ノアがメーテスの滞在中に作成した報告書をルークに手渡した。


 それからしばらくの間ルークが報告書に目を通していき、次第に表情が曇っていくことが周りにいた拓海達には見て分かった。



「読むか?」


「あぁ」



 そして報告書で拓海達の依頼の達成を確認し、報告書に目を通したルークが、隣に立つルミエールに報告書を手渡した。


 それからしばらくして、報告書に目を通すルミエールの表情も曇り始め、読み終えると報告書を黙ったままルークに返した。


 直後、申し訳なさそうな表情を浮かべるルミエールは拓海達に頭を下げた。



「貴方達に全て任せてしまってごめんなさい。アストレアからも支援部隊を編成して、メーテスに派遣します。これからのメーテスについては他の街ともしっかり話し合って決めていくから、後は私達に任せて。貴方達への追加の報酬はギルドカードに振り込んでおくわ」


「了解です。後はお願いします」



 メーテスのその後について、支援活動をしてくれると聞いて拓海達は胸を撫で下ろした。


 可能ならば、住人達の墓を作って弔ってあげたいなと拓海は考えながらも、次の話を始めた。



「あと報告書にも書きましたが、師匠……神崎魁斗が目を覚まさないんです。ルミエールさんの魔法で何とかなりませんか?」


「あぁ、私も気になっていてね」



 ルークが部屋の隅に置かれたソファに寝かせた魁斗に皆が目を向けた。


 現在魁斗は落ちついた様子で寝ていて、一目見た感じでは何処に異常があるか分からなかったが、ルミエールは頷いて応えた。



「分かった、私が診よう。魁斗に目覚めたら大和に戻るようにも伝えるわ」


「ありがとございます。助かります」

 


 拓海は礼を言った後、一つ尋ねた。



「あの、胡桃達はまだ街にいるか分かりますか?」


「そうね、あなたの妹ともう一人の少女は先にアストレアを出ているけど……」


「そうですか……分かりました!」



 まだ胡桃が街にいるということが分かり、怪我や体調がまだ治ってないのかと心配する反面、拓海は胡桃とすぐに再開出来る嬉しい気持ちが湧きながら応えるのであった。


 


 そんな時だった。




「拓海君。君の契約精霊、ソラと契約したという精霊は今君の心の世界にいるのかい?」


「ステラですか? いますよ」



 突然真剣な眼差しで尋ねてくるルークに拓海が答えると、ルークは続けて拓海に尋ねた。



「少し、話すことは出来るかい?」


「えっと……ちょっと聞いてみます」



(という訳でステラ、出られるか?)


(構いませんが……どうして私なんでしょうか?)


(今回のメーテスでの出来事を違う視点から見てきたステラだから、何か聞きたいんじゃないか?)


(なるほど……)



 少し納得したのか、拓海の隣に光の粒子が集まり、心の中で会話したステラが長い金のツインテールを揺らしながら現れる。


 髪型だけでなくステラの服装も代わり、何故かアイリスが持っていたメイド服を着ていた。



 戦いが終わってメーテスに滞在中、アイリスが楽しそうに自分のマジックバックに大量に収納している服を、ステラに着せてあげていて気づいたらメイド服を着ていたのである。


 だが、アイリスだけでなくステラも久々に沢山の服を着れて楽しそうで、メイド服を気に入ったようで、拓海は何も言わなかった。




「どうも、初めまして。ステラです」



 現れたステラが優雅に一礼して見せた。



「あ、あぁ……ステラか。いい名前だな」



 ルークは小さく笑いながらそう応えていたが、拓海はその直前に微かに動揺していたことを見逃さなかった。


 だが気になりはしたが、拓海はここでは敢えて何も聞かないことにした。


 その後、直ぐに平静に戻ったルークはステラにいくつかメーテスで起こった出来事をいくつか質問するのだった。

 


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