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異世界に導かれし者  作者: NS
第9章 魔法都市ソーサリー
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9-2 決別1

 時間は夕方。拓海達はアストレアの街の中にいた。



「やっと着いたな……」



 街への入口で門番をしているアストレア聖騎士団の知り合いに久々に出会い、雑談を交わしたりしている内に拓海はアストレアに帰ってきた実感がようやく湧いてきていた。


 既に知り合いが多い拓海達は検門で冒険者の登録カードの提示と、危険な思想を抱いていないかを探知するマジックアイテムを使った簡単な質問などを答えるだけでアストレアに入ることが出来た。



 すると、街を見渡しながらしみじみと呟く拓海の、後ろの荷車にいるアイリスがくすりと笑い、二人に提案した。



「先に報告に行きませんか? 魁斗さんをいち早くルミエールさんに診てもらった方がいいと思うのですが」


「そうだな……」



 アイリスの提案に頷く拓海は、荷車の屋根で未だにくつろいでいるノアに目を向けた。


 すると寝転んで、足と尻尾をパタパタと動かすノアは片耳を上げ、片目を開いて拓海に視線を移す。



「大丈夫、問題ないよ。拓海」



 拓海が自分のことを気遣っていることを察しているノアは少し表情を和らげて、そう短く答える。


 ノアの中で、これからルーク達との付き合い方はメーテスにいた時からずっと考えていて、自分の中で既に答えを出していたため迷いはなかった。


 その答えを聞いた拓海はこれからのことを考え、二人に伝えた。



「よし、ならそうしよう。アルカディア城の下に着いたら俺が受付でルミエールさん達に会えるように取り合ってくるから、二人はしばらく待機していてくれ」


「あ、ではお願いします!」


「んー、任せた」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「よっと、戻ったぞ」


「おかえりなさい」


「……」



 しばらくして、アルカディア城三階の受付で手続きを済ませた拓海がアイリス達の元に戻ってきた。


 しかし、笑みを浮かべて拓海を出迎えるアイリスに対して、ノアは黙ったまま拓海の方ではなく荷車の外に目を向けていた。



「転移で魁斗を運ぶから来たのね、ルークにい



 すると、複雑そうな表情で呟くノアの声に気付いた外で少し離れて待機した白のローブに身を包んだ銀髪で銀縁の眼鏡をかけた男、エル=ルークが拓海に近付いて荷車に顔を出した。



「よっ、その通りだ。あんまり人目につかれたくないしな。荷車は後で運んでもらうように手配しておくから安心しておいてくれ」



 意識を失って荷車の中で眠る魁斗に目を向けてルークがそう呟くと、複雑そうな表情のノアが目を細めてルークを見つめて重々しく口を開いた。



「あの、さ。後で話があるから」




「……分かった」



 ノアの様子がおかしいことに気付いたルークは微かに表情に陰りを見せて少しの間の後、短くそう答えて拓海と共に荷車に乗り込んだ。


 乗り込んだルークは、荷車の中で眠りについている魁斗に向かって歩くと、皆を見渡して自分の方を向いていることを確認し、しゃがんで魁斗に触れた。



「準備はいいね、いくよ」



 そして、その言葉と共にルークが手を振るうと同時に、荷車に乗っていた拓海達の一瞬で姿が消えるのであった。


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