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異世界に導かれし者  作者: NS
第8章 逢魔時の街メーテス
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8-49 崩れた心2

 薄暗い雲の隙間から漏れる紅い月の光に照らされるメーテスを高速で駆ける二つの影。


 意識を失っているノアを背負う拓海と、ゴスロリ姿の金髪の少女を背負った『ファントムミスト』で作り出した分身の拓海である。


 アイリスの元へ急ぐノアを背負っている拓海は、すぐ隣を同様に走る分身が背負った少女に目を向けた。


 分身が背負った時に、拓海は既にこの少女に流れている『力』から、彼女の正体に勘付いていた。



(ノア、この子って……)


(うん。大量の『霊気』を内包しているし、私と同じ大精霊……かな? でもーー)



 拓海の心の世界から、拓海の視界を通じて大精霊の少女を見ているソラは言葉をつまらせ、表情を曇らせた。



(ーー複数の種類の魔力を感じるの。複数の種類を持つ精霊なんて初めて見たわ)


(なるほどな。でも、まずはノアとこの子を手当てしないとな)


(うん、フィーネさんとリンスィールさんの援護にも早くいかないとね)



 駆けつけて一目見た時は既に胴体に大穴が開き、片腕を失い大量の血を流しているというのにアスタロトの意識ははっきりとしている上、殺意や覇気は健在であることを拓海達はすぐに感じ取ったのである。


 最初はその場で総攻撃を仕掛けて押し切るつもりだったが、その場にいた誰もが負傷して意識がない二人を庇いながら押し切るのは不可能だと判断したのであった。


 予定変更で戦線を離脱した拓海は、アスタロトの足止めに残った二人の心配をしつつ、今拓海が向かっている建物の中でアイリスに治療されている魁斗のことを想った。


 そして、それを感じとった心の世界にいるノアは神妙な表情で拓海に語りかけた。



(魁斗さんなら大丈夫よ……きっと)


(……そうだな)



 マルコシアスを倒した直後にすぐ合流したアイリスがマルコシアスを滅した後、同様に合流したリンスィールの魔法によって倒壊した教会の地下深くに閉じ込められた魁斗は何とか救出された。




 ただ、魁斗は息をしていなかった。




 泣き崩れて目の周りを赤く腫らしたフィーネが、血に塗れ全身傷だらけで出血も多量でピクリとも動かない魁斗を抱きしめていたのを発見した拓海達は声を発することすら出来なかった。


 だが、二人の姿にかける言葉が見つからずに拓海とアイリスが呆然としてしまった中、リンスィールは「動けるか? 掴めるなら掴まれ」と魔法で創り出した自由に操れる蔦を伸ばして二人を引き上げて救出した。


 その後、我に返って魁斗の状態を確認して、息をしていない事に気づいたアイリスはショックで蒼ざめたが、直ぐに魔法を使いながら全力で治療を始めた。


 そしてアイリスの魔法で風前の灯となった魁斗の生命を繋ぎ止めながら、アイリスを中心に治療を続けることでようやく魁斗は息を吹き返したのであった。



(それはそうと、ノアさんが心配ね)


(あぁ……師匠ほどではないけど、重傷なことに違いないしな)


(……そうなんだけど、私が言っているのは内面的なことよ)


(内面的?)



 拓海は自分が背負っている耳元でか細く荒い息づかいをするノアに目を向けて、顔色が悪くなって疲弊しきったノアの表情に心が痛んだ。


 だが、拓海がやはり外観だけでは内面的なことまでは分からなかった。



(うん……。心の世界が暗くなって渦巻いている。相当ショックなことがあったのか、パニック状態に陥っているみたい)



 人の心の世界を見ることが出来る精霊のソラには、別れる前のノアと見違えるほど混沌とした状態となった異常な心の世界に驚き、心配していたのである。



(そっか。何があったのかは分からないけど、心配だな……)



 拓海はノアに何があったのか心配しながら静かに建物の上に飛び乗って、その直後に曲がり角から姿を現したアスタロトの眷属達をやり過ごした。


 それから拓海達は再び周囲を警戒しながら、もう近くまで来た魁斗を治療するアイリスの元に急ぐのだった。

 

 

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