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異世界に導かれし者  作者: NS
第2章 聖都アストレア
37/434

2-28 未知との遭遇7

本日2つ目の投稿です!

「いくぞ!!」



 拓海は出来るだけアイリス達が攻撃される機会を与えないように、長剣をしっかりと握り直してバンダースナッチに向かって走り出した。



 ーーーゴアァアァァァァァァァァーーー



 殺気を向けて走ってくる拓海に向かってバンダースナッチは雄叫びを上げて左腕を振り上げた。



「付与魔法“水”」



 それを見た拓海は素早く左手で腰から短剣を抜き、短剣にも水の付与魔法とオーラを纏わせた。

 そしてバンダースナッチの左腕の叩きつけを間髪入れずに強化された短剣の刃を沿わせるようにして受け流し、そのまま短剣を握っていると受け流しきれないため、流れに逆らわず短剣を手放した。


 叩きつけをいなし、再び懐に辿り着いた拓海は雄叫びをあげながら長剣でバンダースナッチの右足を全力で斬りかかった。



「はぁぁぁぁ!!」



 バンダースナッチの鱗が数枚弾け飛び、僅かにバランスを崩す。

 そして、その隙を見逃さなかった拓海はすかさず魔法を詠唱した。



「“ヘイルブラスト”!!」



 魔法を詠唱した拓海の左手から自分の身の丈程の大きさの鮮やかな青の魔法陣が展開する。

 魔法陣が一際強く光ると、魔法陣から真面に受けたら立っていられないほどの氷の息吹が吹き荒れ、直撃したバンダースナッチの腹部の鱗の表面が凍りつき、氷ついた鱗が砕け散っていく。



 ーーーゴギャアァァァァァァ!?ーーー



 そして、絶叫しながらバランスを崩したバンダースナッチの足に向かってオーラを纏った長剣で拓海は再度斬りかかった。



「くっ……」



 しかし、拓海の長剣による斬撃はバンダースナッチの足の表面の鱗を少し剥がしただけで、大きなダメージには繋がることはなかった。拓海は今使っている長剣の斬れ味では鱗を弾くことは出来ても斬り裂くことは難しいことを改めて感じていた。



 ーーーゴアァアァァァァァァーーー



 そうこうしていると、バンダースナッチは懐に張り付く拓海を引き離そうと雄叫びをあげながら、顔を伸ばして拓海を食い殺そうと鋭い牙を持つ顎で噛みついた。



「うおっ!?」



 急に近づいてきた顔に驚きながらも、拓海は長剣でバンダースナッチの牙を受け止めながら一旦距離をとった。

 後ろにたたらを踏みながらも、倒れずに長剣を構え直した拓海は小さく舌打ちし、全く弱っている様子を見せないバンダースナッチのタフさに驚愕していた。



(くそっ……俺の物理攻撃じゃ鱗を少し剥がす程度しか出来ないのか!?)



 さっき使った『ヘイルブラスト』が現在の拓海が使える一番威力がある魔法だった。しかも拓海の魔力の量では何連発も使えず至近距離で使わないとバンダースナッチにダメージを与えることができるほどの威力がない上に避けられてしまう。


 バンダースナッチに決定打になるような魔法がない拓海は完全に手詰まりな状態になってしまった。

 何とか打開策を考えようとしていると、追い撃ちを仕掛けるバンダースナッチの振り下ろした左腕を拓海は左に跳んで避けた。



「ーーーーーーッ!?」



 拓海の左腕とあばらの骨がひしゃげるような嫌な感覚を覚える。バンダースナッチとの間合いと戦いに慣れてきたと無意識に錯覚してしまっていた拓海は、怠ってしまった。

 目の前の敵に全神経集中して対応することで何とか均衡が保てていたのに、拓海は打開策を考え始めたことで右腕による横殴りに気付けずに直撃してしまった。


 後ろの方にいるアイリスの悲鳴が聞こえた。



「ぐっ……ぁ……」



 予想外の一撃を受けた拓海は、訳が分からないまま地面に何度も叩きつけられながら吹き飛ばされて、その勢いのまま泉に落ちてしまうのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 泉の底にゆっくりと沈んでいく拓海は、朦朧とする意識の中でどこからか誰かの声を聞いた。



 ーーーー頑張ってるから、少しだけ力を貸して上げる……「“ーーー”」ーーーー



(な……んだ……幻聴か……? 今誰かが囁いてきた気が……)



 その謎の声に気付いた拓海は何とか意識を保ち、我に返ると溺れないよう急いで泉から這い出した。



「ぶはっ!? げほっげほっ……」



 そして水面に浮上し咳込む拓海が急いでバンダースナッチに目を向けると、拓海の水で霞んだ視界に驚きの光景が映し出された。


 誰かがバンダースナッチと戦っていたのだ。



(あれは……)



 目をこすって急いで誰かを確認しようとした拓海は、徐々に明瞭になっていく視界に映し出された信じられない光景に唖然としてしまった。



「あれは……俺? ……だよな?」



 どこか見覚えがあるような刀を手にした、拓海と瓜二つの人物が刀一つで次々にバンダースナッチの鱗を斬り裂きながら圧倒していた。


 そして、拓海が呆気に取られているうちにその拓海と瓜二つの人物がバンダースナッチの懐に入ると刀の刃を返して下から頭に向けて切り上げるとバンダースナッチの真下から水で出来た龍が、悲鳴のような唸り声を上げるバンダースナッチを噛み砕きながら巻き込み、水龍は上に上がっていき弾け飛んだ。



(すごい……)



 上空に飛ばされたバンダースナッチに目線がいっていた拓海はふとバンダースナッチを吹き飛ばした人物に再び視線を戻したが、そこには既に誰もいなかった。


 あまりに急な出来事に驚きながらも、このチャンスを無駄にしないように泉から這い出た拓海は立ち上がって空から落下している無防備なバンダースナッチに殺気を向けて睨み、激痛が走る身体に鞭を打って構えた。



(さっきのが何だったかは置いといて、このチャンスを逃してたまるか!!)



「うおぉおおぉおお!!」



 雄叫びを上げる拓海は体に纏ったオーラを全て右手で拾い上げた長剣の刃に収束させる。


 そして、拓海は銀色に輝きを放つ長剣をバンダースナッチが落下する瞬間に薙ぎ払う。

 長剣から大きな鋭い刃となって放たれた銀色のオーラは落下してきたバンダースナッチに命中し、バンダースナッチは大量の鱗を弾き飛ばして黒々とした血を激しく吹き出しながら絶叫し吹き飛ばされた。


 さらに地面に落下して身体を激しく叩きつけたバンダースナッチは身体を痙攣させながらもその場から動けずにいた。

 やがて、痙攣も止まって動かなくなったバンダースナッチを見た拓海は息を吐いてふらつきながらも長剣を鞘に収めた。



「やった……」



 それから安堵した拓海はアイリスの方に目を向けオーラを放出して疲労し切った体で無理矢理歩き出そうとすると、青ざめて強張った顔でアイリスが叫んでいることに気づいた。



「拓海さんっ!? 避けてっ!!!」



 アイリスの声に驚いた拓海はバンダースナッチの方に目を向ける。

 視界一杯に広がるバンダースナッチの鉤爪。最後の力を振り絞ったバンダースナッチが腕を伸ばして爪で拓海を串刺しにしようとしてきたのであった。



(まずいっ!?)



 もう避ける体力もない拓海は死を直感してしまい、思わず目を強く瞑った。すると目を瞑った拓海の耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「さっきのお返し!! 付与魔法“闇”!」 「“ダークウィズドロー”!」



 拓海とバンダースナッチの間に割って入った胡桃はバンダースナッチの鉤爪を細かく切断し、そのまま流れるように伸ばしてきた鱗が所々弾け飛んだバンダースナッチの腕を魔法で強化された脇差で両断し、切断された腕を蹴り飛ばして、切断された腕は拓海の隣の地面を抉りながら転がった。



 ーーーガァ……ァァア………ーーー



 そして流石のバンダースナッチも腕を斬り飛ばされ、呻き声を上げて身体を痙攣させると遂に力尽きて絶命した。


 バンダースナッチが今度こそ動かなくなったのを見た拓海は安堵すると共に意識を手放し、そのまま前のめりに倒れた。

 

対バンダースナッチ戦はこれにて終了です!

次の話で第2章は終わりです。


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