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異世界に導かれし者  作者: NS
第8章 逢魔時の街メーテス
358/434

8-27 深淵の教会5

 牢屋から飛び出したノアの左側、見覚えのない男が約五メートル先に迫っていた。


 その男は地上を彷徨っている人型の黒い塊ではなく、防具を身に纏い、長剣を片手にしている。

しかし、異常な点がいくつかあった。それは男の両腕が不自然に太く膨れ上がっていて、眼が紅く染まっているということである。


 そして、口の端からよだれを垂らして口が半開きなその男は、何かを普通の人間ではあり得ない速度と跳躍力で一瞬でノアに飛びかかり、ノアの頭に向かって長剣を振り下ろす。



 しかしノアは男の一挙一動、全ての動きが見えていて冷静であった。


 そして接近してきた男の掠れた声が聞こえる。



「助……け、て……」



 ノアは静かに息を吐く。


 そして振り下ろされる長剣の側面を左手の甲で軽く払い受け流して、魔剣クシアで左腕を叩き斬り、男の心臓部をクシアを手放した右手の拳を捻りこませるように殴る。



 そのコンマ数秒で行われ、辺りに衝撃波が走り叩き斬られた左腕だけをその場に残して男が消える。


 直後、拓海達が牢屋から廊下に姿を現すのと同時に轟音が鳴り響いた。


 そして離れた壁にめり込み、床に崩れ落ちた男に気付いた拓海が、拳に付いた血を払って、手放して地面に落ちたクシアを拾い上げるノアに声をかけた。



「近づいてきたのはあいつか?」


「うん、ちょっと待ってて」


「分かった」



 拓海はどこか複雑そうな表情のノアに気付き、一言そう答えると、ノアはクシアを右手に完全に脱力しきった男に近いた。


 胸部がえぐれた男の眼からは既に光が消えていたが、ノアが近くと少しだけ頭をノアの方に向けて口元が微かに動いた。



「ぁ、り……ぁと……」



 掠れた声で呟くと、男の頭は力無く垂れ下がり、それを見たノアは手を合わせ小さく呟いた。



「後は任せて」



 ノアはクシアを鞘に納めて拓海達の元に戻ると、ノアの一連のやり取りを見て異形となって襲いかかってきた男が何者なのかを察した三人は黙ってノアを迎い入れた。



「行こう」



 三人が頷いて応えたのをノアは確認し、ノアと魁斗が先頭になって再び先を進み始めるのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 牢屋があった円環状の廊下を抜け、拓海達四人は長い螺旋階段を降り続けること約十分。先頭のノアが顔色を変えて立ち止まり、皆も止まると拓海がノアに尋ねた。



「ノア、どうしたんだ?」


「この先に何か……凄まじい魔力と力を持った何かがいる」


「た……確かにとんでもない量の魔力を持った何かがいます」



 すると、魔力に敏感なアイリスが気圧されて微かに震えたような声でノアに同調しているのを見て、二人ほど魔力を感じとれないが微かに気配を感じていた魁斗がアイリスに言った。



「アイリス、お前はノアの後ろで援護してくれればいいからな。恐怖で動けなくなる冒険者は沢山いるし、絶対に離れないようにしておけよ」



 そこで自分が無意識のうちに気圧されていたことに気付いたアイリスは、我に返って拳を握りしめて魁斗を見返した。



「ありがとうございます、絶対に足手まといにはなりませんから大丈夫です」



 そんな気合いを入れ直すアイリスにノアは小さく笑った。



「肩の力を抜いて。それぞれ自分の出来ることをしてくれればいいからね」


「いつも通り援護頼むよアイリス。頼りにしてるぜ」


「はい!」



 ノアと拓海の言葉にアイリスが頷くと、魁斗が手を一度叩いた。



「今は魔力の変動も特にないみたいで、向こうはまだこちらに気付いてないみたいだがいつ気付かれるか分からん。慎重に……素早く行くぞ」



 そして四人はまだ見ぬ強大な力を持つ何かに向かって、地下深く続いていく螺旋階段を再び降り始めるのだった。


 

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