8-19 エンヴィー卿2
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整った形の草木や、暗闇の中でも微かに光って見える色鮮やかな赤い花を筆頭に様々な美しい花々が咲き乱れる庭園。
拓海達四人はモンスターから逃げながら、ようやくエンヴィー卿の領地にたどり着いたのであった。
四人はモンスターがこれ以上何故か追ってこないことに疑問を抱いていたが、現在のメーテスの暗い雰囲気とは真逆の前方に広がる美しく広大な庭園と建物に、圧倒されると共に異様な違和感を感じていた。
門を境に世界が突然変わった。
それはまるで拓海達がメーテスに向かって来ていた時に突然景色が変化したのと同じような、そんな感覚。
そんな皆が困惑している中、いち早く冷静さを取り戻したノアは耳と尻尾をピンと立てて建物に目を向けた。
「人の気配、ここからするよ。誰かいるみたい」
その言葉に四人は顔を見合わせ、出来るだけ気配を消しながら小声で会話し始めた。
「明らかに異様だが……」
「あぁ、さっきも誰かに攻撃されたばかりだしな。素直に正面から入るのは危険過ぎる」
魁斗と拓海の二人は横目で、その純白で傷一つないような建物を見ながら話を切り出すと、アイリスは不安気な表情で二人に訴えた。
「お二人の言いたいことは分かりますが、家が襲われたりして怖い思いをしながら避難している方々がいて、助けを待っているのかもしれないんですよ? 素直に正面から中の人々に呼びかけるべきだと思います」
意見が割れて、三人はリーダーの意見を聞こうとノアに目を向けると、真剣な表情のノアはまずアイリスと目を合わせた。
「アイリス、その気持ちは分かるけど最優先は私達の安全よ。助けに来たのに、私達が一人でも死んだりするようなことがあったら意味がない」
「はい……そうですね」
「でも、今回は敢えて正面から行く。相手は一度かなり距離が離れた位置にいたはずの拓海を逆に探知したはずの力の持ち主よ」
「この領地に足を踏み入れたのもばれているだろうってことか?」
「うん。でも、まだ襲いかかってくる気配がないところを見ると本当にただ避難している人がいるのかもしれないと思うの。まあ、まだお互い実力が未知数で襲いかかってきていないだけかもだけど」
特に自分達に向けられる殺気と気配を感じることもなく、四人は話し合いの結果正面から建物に入ることに決めて、早速建物に向かった。
建物に近づくにつれて、想像以上の大きさである不気味なほど純白な建物に緊張感が高まる。
何が起こっても出来るだけ対応できるよう、ノアとアイリスを真ん中に、魁斗が先頭、拓海が殿という配置で、魁斗が建物の正面のドアをノックして呼びかけた。
「他の街で冒険者をしている者だ。街の現状等で話したい事がある、誰かいるか?」
その後、そう呼びかけてドアから少し下がってしばらく待つと、ドアが音を立ててゆっくりと内側に開き始めた。
そして、開き切ったドアの奥。建物の中、ホールの巨大な階段の前には一人の執事姿の男性が立っていた。
「ようこそ。我が主人、エンヴィー卿より皆様をお通しするように承りました執事のカイルでございます。以後お見知り置きを」
そう笑みを浮かべる三、四十代であろう執事は四人に優雅に一礼をするのであった。
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