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異世界に導かれし者  作者: NS
第8章 逢魔時の街メーテス
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8-7 探索

 メーテスに足を踏み入れた四人は思わず足を止めてしまった。


 別に敵を見つけたという訳ではない。門をくぐって、再び景色が変わったのだ。しかも、それは現実ではあり得ないものだった。


 欠けた二つの不気味に紅色に輝く月が暗い空に浮かび、黒い雲の隙間から差す紅い光は、薄く霧が出ているメーテスの街をぼんやりと紅く照らしている。


 すぐに我に返った四人は敵を警戒しながら、拓海の分身を見張りに立て大通りから街の裏道に入った。



「外から見た時と違って、中の建物は壊れてないな」


「ですね。でも人の気配は感じられなくて、モンスターの気配はやはり感じますね……」


「どうするノア?」



 魁斗の問いかけにノアは表情を変えずに素早く三人に指示した。



「順番に建物を探索して、生存者がいないかの確認とこの状況に陥った原因の手掛かりを探索するよ」



 ノアが指示すると、三人は把握して頷いて行動しかけたがノアは手を前に出して声を上げた。



「待って。確かに別れた方が効率はいいけど、今回は何が起こるか分からないわ。時間はかかるけど、四人でまとまって行動して見落としがないように慎重に探索してくよ」


「「「了解」」」



 三人が小声で答えた時、拓海の心の世界からソラが語りかけてきた。



(拓海さん、こちらに歩いてくるモンスターを見つけたよ。分身と視界共有する?)


(了解、ちょっと待ってて)



 ソラから連絡を受けた拓海は三人に確認を取り、ソラが魔法で作り出した拓海の分身と視界を共有させた。


 共有させると、拓海の分身は裏路地に繋がる横道から、表の大通りを覗いていた。



(えーと……っ!? 何だ、あれは? ソラは分かるか?)



 拓海の視界には遠くから歩いてくる人型をした何かがいた。


 モザイクがかかっているかのように黒いもやに覆われ、ぼんやりと気味悪く赤に光る目を持つ人型の何かが三体こちらに向かってゆっくりと歩いて来ていた。



(何だろうね……。私も初めて見たよ)



 それから拓海は一旦視界共有を解いて三人に状況を説明すると、下手に遭遇して居場所がバレたりしないように遭遇しないよう裏路地から、建物の裏口の鍵がかかっていないドアを開けて二階建ての建物内に入った。


 建物内に入り、部屋にあるランプをつけると壁の棚には箱がいくつか仕舞ってあり、床にはいくつかの箱と中から出たのであろうモンスターの素材や薬草が散乱していて、踏み潰された跡がある。


 それに一つだけ置かれた机の引き出しが開けっ放しになっている。


 

「二階は私とアイリス。一階は魁斗と拓海の二人で探索して。十分後ここに集合。何かあったら何でもいいから魔法を使うこと。些細な事でも、気になる点があれば後で報告ね」



 そう言って、ノアは裏路地に続く裏口がある部屋から中の部屋へのドアに手をかけると、目を細めて呟いた。



「鍵がかかってる……。この感じだと、何かから逃げてきて裏路地から急いで逃げたって感じかな」



 それからノアが小道具で器用にドアの鍵を外しドアを開けると、四人は探索を開始するのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 探索し始め、約七分が経過した時のこと。


 二階でアイリスはノアと別れてカーテンが閉まっていて暗い部屋を探索していた。



(変わった点は特に何もないですね……)



 アイリスは魔力を探知しながら、魔法を使った跡やマジックアイテムがないかなどを確認したり、部屋に異常な点がないか探していたが特に何もなかった。


 そして、不意にカーテンの間にできた微妙な隙間から外を見た時のことだった。



「ッ!!」



 アイリスは思わず身を引き、その場でかがんでしまった。


 

(誰かいた……?)



 心臓は高鳴っていたが、アイリスは直ぐに再び気配を出来るだけ消しながらカーテンの隙間から向かいの建物の窓を覗いた。


 しかし、そこには何もなかった。



(あ、あれ……気のせいだったのでしょうか?)



 さっきはそこに長い金色の髪をしたゴスロリ姿の女の子が窓に寄りかかって座っている後ろ姿が見えたと思ったが、気のせいだったのだろうか。


 アイリスは疑問を感じながらも探索を続け、十分が経ったので一階に戻るのだった。

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