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異世界に導かれし者  作者: NS
第7章 ラダトーム帝国
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7-57 譲れないもの3

 拓海はザインの斬撃を受け止め、痺れる右腕に顔をしかめ、桔梗により自身の智力と集中力を高めてザインを分析した。



(志乃の白虎と似ているな。さっき刀の斬撃をオーラで受け止めていたーー)



 四神の力『玄武』。それは衝撃、物理的力を全て無力化して自身の身体能力を飛躍的に上げる力だった。


 そして拓海がある程度どのような力か推察すると、ザインの姿がその場から消えた。


 いや、それは違う。消えたように見えるほど速く移動したのである。


 自分の死角に入られたと理解し、拓海は直感で真後ろに後ろに身体を反らすとザインの魔剣ネーヴェが身体を掠める。



「無駄だ!」



 翠のオーラで残像を作り出しながらザインは怯む事無く拓海を上から叩き斬ろうとネーヴェが動き出す。


 それを目にした拓海は一瞬桔梗で受けようとするが、第六感が働きそれは危険だと感じとった。



「くっ!?」



 そして高速で振り下ろされるネーヴェと桔梗が触れ合う瞬間、拓海は咄嗟に身体を捻る。


 すると桔梗で受け止めようとしていた拓海の力が消え、そのままネーヴェは拓海が先程まで立っていた場所に刃の軌跡を残すと、横に避けた拓海に向かってネーヴェを下から斬り上げた。


 咄嗟に霊装を盾にしたが、今度は避けきれなかった拓海は後ろに吹き飛ばされ地面を転がる。



(くそっ、受ける力まで無力化するのかよ!?)



 他にも色々思うことはあったが、ザインがすぐに接近してきてそれをさせる余裕を与えてくれない。


 だが桔梗で集中力が増している拓海は一つ発見をしていた。


 そして、拓海は即実行に移す。



「ちっ」



 振り下ろしたネーヴェが弾かれ、ザインは舌打ちと共にそれを弾いた。



「やはり精霊の力は無力化させることが出来ないようだな」



 霊装のマントを自分の身体の一部のように、自在に操る拓海は伸びたマントを元に戻して、一度ザインから距離を置いて桔梗の切っ先をザインに向けながら魔法を詠唱して、桔梗にありったけの魔力を注ぎ込んで増幅させた魔力を解放させた。



「“グレイシア・シュヴァリエ”!」



 突如部屋の床や壁が凍りつき始める。



(これは……!?)



 ザインは部屋の温度が急激に下がるのを感じながら、拓海の魔法の詠唱と共に現れた巨大な氷の剣に目を向けた。


 そして、避けて追撃しようと考えるがそれが出来ないことに気がついた。氷の剣とザインを結ぶ直線上に柑菜が囚われている氷の柱があったのである。


 避けるのを早々諦めたザインは呼吸を整えて、両手を前に広げて意識を集中させた。



「はぁあああ!!」



 するとザインの雄叫びと共に、翠色のオーラが手の平で渦巻き、やがて巨大な盾の形となった。


 そして周りを凍りつかせながら高速で飛んでくる氷の剣と、形を変えて盾の形になった玄武のオーラがぶつかり合う。



「くっ……!?」



 床に足をめり込ませながら氷の剣を受け止めているが、氷の剣の冷気により腕や足が氷つき始めて表情を歪める。


 そして盾が一際大きくなると共に氷の剣は砕け、鋭い氷の欠片が柑菜が囚われている氷の柱に命中してヒビが入り、粉々に砕け散った。



「はぁ、はぁ、はぁ……」



 だがザインは呼吸は荒いが、その場でとどまり拓海の全力の魔法を受け切っていた。


 ザインからは拓海の魔法を防ぐため力を使い切ったため、玄武のオーラが消えて身体には氷の欠片により鎧が削られて出血していたが、まだネーヴェを握りしめて拓海を睨んでいた。



(くっ……あれを防ぎきるのか)



 魔力が今の一撃で底をついた拓海は身体に倦怠感を覚えながらも、桔梗を構えてザインの一挙一動に注意していた。


 そんな時だった。



「なっ!?」



 突然暗かった部屋に光が満ちる。


 直後、響き渡る絶叫。



「ああぁああああぁあぁああああ!?」


「柑菜!?」



 鎖に囚われていた柑菜が一度大きく痙攣させると、柑菜から急速に力が鎖に吸収されて塔を伝わっていく。


 それに気付いた拓海は声を荒げ、怒りに満ちた表情で複雑そうな表情を浮かべるザインを睨んだ。



「殺す……」



 桔梗により怒りの感情が増幅し、より力を増した拓海は桔梗を手にザインに向かっていくのだった。

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