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異世界に導かれし者  作者: NS
第7章 ラダトーム帝国
312/434

7-55 譲れないもの1

 ーーギンッ



 塔の最下層。中央にそびえ立つ氷柱の中に柑菜が囚われているその部屋で、守護騎士であるザインは自身の蒼色の魔剣『ネーヴェ』で拓海から放たれる桔梗による連撃を火花を撒き散らしながら受け止めた。


 その重い斬撃にザインは思わず一歩下がり弾き返しそのまま拓海に素早く切り込むが、拓海は素早く後ろに跳んでその斬撃を避ける。


 拓海は霊気で明らかにザインより素早く、力強く連撃を繰り返すがザインはそれら全てに対応して防ぐだけでなく、時折カウンターを繰り出していた。



(こいつ……)



 魁斗のような速さがあるわけでもなく、仁のように気配を使って特殊な技術を織り交ぜているわけではない。


 ただザインは純粋に近接戦に関しての天才であった。直感と相手を観察して先読みする事で、相手からすればザインが構えた場所に攻撃を叩き込んでしまっていると錯覚してしまうほどである。


 そして、後ろに下がった拓海は桔梗を構えて心の中で念じた。



(桔梗よ、龍を創れ!)



 ーーグォアアァアァァアアーー



「ッ!?」



 桔梗が輝くと同時に氷の龍が勢いよく飛び出し、ザインに向かっていく。


 そして、桔梗から現れた龍に驚愕しながらザインは魔剣ネーヴェを構えて心の中で念じた。



(ネーヴェよ、龍を創れ!)



 ーーグォアアァアァァアアーー



 すると桔梗と同様に、ネーヴェが輝くと同時に氷の龍が飛び出して二体の龍が噛みつきあって相殺し氷の欠片が辺りに飛び散る。


 だが桔梗から創り出された龍の方がより多くの魔力を内包していたため、余波がザインを襲い後ろに飛ばされかけるが何とかその場に踏み止まった。


 その後、顔を上げたザインは驚きで言葉を失い目を見開いていた。



「何故あんたの武器が団長の『創造』の力を使える?」


「創造……」



 ザインの使う蒼の魔剣ネーヴェにはクレアの白龍鱗が使われていて、その恩恵によりネーヴェにはクレアの力のほんの一部である簡単な『創造』の力を使うことが出来る。


 しかし、拓海はクレアと会ったこともなければその事を知らない。


 よって考えられる可能性は一つ。桔梗を作り出した桜が勝手に加えたという素材の中に、何故持っていたかは分からないがクレアの白龍鱗があったのだろう。



「知らないな、俺が作り出した訳ではないからな」



 拓海はそう答えるが、ザインの中ではまだ納得がいかない所があった。



(あり得ない……団長が創った武器だぞ?)



 それは創造の力を使えるネーヴェより、桔梗によって創り出した龍の方が圧倒的に質が高く多くの魔力を内包していたからである。


 ザインが拓海と対峙したところ、拓海の魔力は自身と同等か少し上程度と認識していた。しかし何故同じ創造の力で生み出された龍に差が出るのか。


 それもそのはず。桔梗にはネーヴェにない力、使用者の魔力を吸収して質を高めて増幅する力を持っていたからである。



「“ポテンシャルライズ”」



 距離を置いての魔法の打ち合いでは分が悪いと感じたザインは、身体能力を魔法で上げて素早く動き出し拓海に向かって一気に距離を詰めていく。



(きた……!)



「“ファントム・ミスト”」



 距離を詰めてきたザインに、拓海は桔梗の力で集中力を高めながら魔法を詠唱した。



「ッ!?」



 そして霊刀を持った拓海の実体を持つ幻影がザインを囲むように現れ、拓海自身も一気に距離を詰めて魔法を詠唱する。



「透涼の太刀“飛燕”」



 ーー四連ーー



 仁には全て受け流されたが通常ならば不可避の連撃。視界に映っているものだけではなく、死角からも放たれる刃が複数に増えたように見えて襲いかかってくる拓海が魁斗から習得した秘剣。


 そして、それらの四つの刃は全てザインに襲いかかり拓海は確かな手ごたえを感じるのだった。

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