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異世界に導かれし者  作者: NS
第7章 ラダトーム帝国
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7-48 最後の守護騎士3

 階段を更に降り続ける拓海は遂にその終点、目的である一つの広い部屋にたどり着いた。


 部屋の中心、分厚い氷の柱から部屋の床と壁に心臓の鼓動のように一定間隔で光の波紋が広がっていく。


 そして、その氷柱の中には意識を失い力無く項垂れている一人の少女が腕と足は十字架の形で首輪と連動した鎖できつく縛られていてその鎖は壁と床に突き刺さっている。


 その少女が柑菜であることに気が付いた拓海は目を見開き走り始めた。



「柑菜!」



 霊気を目に纏い桔梗を握って視力を引き上げた拓海は、柑菜は一ミリも動くことなく生きているのか一目では分からないような蒼白な顔をしていて、口の端には血の跡が残り、辺りには目を背けたくなる程の大量の血痕が残っていることに気が付いた。


 そして同時に、自分に一瞬で接近して殺気を向けながら蒼色の長剣で両断しようと下から上に振り上げたのにも気付くことが出来た。



「っ!?」



 勢いよく迫り来る長剣に、拓海は一瞬で霊気を纏って辛うじて避けると堪らず後ろに跳びのいた。



「お前は……」



 避けて自分に奇襲を仕掛けた人物を確認した拓海は驚いて言葉を失った。


 そこには白銀の鎧に身を包んだ暗めの蒼髪の男がこちらに殺気を向けながら立っていた。


 しかし拓海が驚いたのはそこではない。その男が自分と変わらない歳くらいの若い男だったからであった。


 そしてもう一つ、蒼の長剣に白銀の鎧。それは事前に志乃に聞いた話、柑菜をさらった人物の一人の特徴に一致していたのである。


 拓海が距離を置いて自分を見て驚いているのを感じながらザインは長剣を正面に構えて名乗った。



「守護騎士のザインだ。そういうお前は……」



 言葉を切り、拓海の黒髪と黒の瞳と得ていた情報を照らし合わせて推測した。



「ひょっとして柑菜の兄か?」



 その言葉に拓海はザインを睨み、強めの口調で答える。



「慣れ慣れしく妹の名を呼ぶんじゃねえよ。何様だお前は」



 拓海に憎悪と殺意のこもった目を向けられながらも、表情一つ変えないザインは拓海に予想外の提案をした。



「このまま退いてくれないか? 今なら見なかったことにしてやる」



 それを聞いた拓海は何を言っているんだこいつはと困惑しながらも、全く表情を変えずにこちらを見るザインの真剣な目からはとても嘘を言っているようには見えなかった。


 だが、そんなこと出来るわけない。その為に命をかけて手を貸してくれた仲間達に顔向け出来ないし、何より柑菜はかけがえのない大切な妹だ。迷う要素は一つもなく、答えは出ていた。



「そんなこと出来るわけないだろ。何故そんな答えが分かりきった質問をするんだ?」



 しばらくの沈黙の後、複雑そうな表情を浮かべたザインが答えた。



「何となく、柑菜の兄のあんたにはこんなところで死んで欲しくないからだ」


「俺に勝てると?」



 拓海を殺せるというザインに、拓海が反応して殺意を向けたながらより多くの霊気を纏って尋ねる。


 そんな拓海の殺意を身に受けながらも全く動じないザインは長剣を握り直した。



「あぁ、俺の方が強い。実力だけでなく気持ちの面でもな。試してみるか?」



 その挑発的な発言の裏腹に確かな自信が感じとれるザインの発言に拓海は一度大きく息を吐いた。



「元よりそのつもり。それと柑菜をさらって酷い目に合わせたお前を逃すつもりはねえよ」



 柑菜の周りの血痕や、顔にこべりついた血の跡に気付いていた拓海は心の底の方から湧き上がる怒りの感情を抑えながら桔梗を引き抜いて感覚を研ぎ澄まし始めるのだった。


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