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異世界に導かれし者  作者: NS
第2章 聖都アストレア
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2-20 啓示

 その女性、アストレア聖騎士団長アンジュ=ルミエールに拓海は見覚えがあり我に返って尋ねた。



「あれ? もしかして前にアストレアの素材屋で会いましたか?」


「そうね……。確かに以前一度会ったね。あの時は君が拓海君だということを知らなくてね」



 それからルミエールは拓海に少し待っててと言って、席を立ちその場から消えた。


 突然一人になった拓海は周りを見渡したり、下を見たりして身震いして思わず苦笑いした。



(怖いな…….これ。そういえば空とか言ってたけど、どうなっているんだ? さっきまでアルカディア城にいたはずなんだが……)



 数十秒後、紅茶が淹れてあるコップを二つ乗せたお盆をもったルミエールが現れた。



「待たせたね」


「いえ……。あ、紅茶ありがとうございます」



 拓海はお礼を言いつつ紅茶をもらうとルミエールに質問をしてみた。



「さっきまで俺はアルカディア城にいたはずなんだけど、どうやってここまで来たんですか?」



 その質問にルミエールは少し困った顔をしてから答えた。



「そうだな……まあ詳しいことは言えないが、私の知り合いが作った魔法道具を使った。今回のように知り合い以外に私の素顔、話の内容を聞かれないようにする時に使っていてね。まあ、そんなことより聞きたいことがあるんでしょ?」



 そんなに聞かれるとまずい内容なのかと拓海は内心思いつつ、拓海はルミエールに一番聞きたかったことを聞いた。



「そうでした、俺がルミエールさんに聞きたかったことは俺の父親である桐生楓についてです。騎士団長のルミエールさんならもしかして知っているのではないかと思ったんです」



 ルミエールは一度天を仰いでなるほどと小さく呟いて拓海の質問に答えた。



「ああ、知っているよ。彼は私にとって大切な人だから」



 予想外の返答に驚きながらも詳しい話を聞こうと拓海が口を開きかけたのを遮ってルミエールは続けた。



「だが、拓海君には悪いけど彼のことについてはまだ詳しく話すことは出来ないわ」



 またもや予想外の事を言われた拓海は一瞬思考が停止したが、拓海はルミエールの話の内容を理解し動揺して声を荒げた。



「なんでっ!? 何故話せないんですか? 少しでもいいんです……お願いします」



 拓海はすがるような気持ちでルミエールに頭を下げて頼み込んだが、ルミエールは首を横に振って頑なにそれを拒否した。



「君には力が足らない。真実を知るための力がね」



 その言葉の真意がわからずに拓海はルミエールに問いかけた。



「力? それを知るには俺は……どのくらい強くなればいいんですか…….?」



 ルミエールは少し考えてから拓海にしっかりと目を合わせた。



「私が戦場で背中を預けれるくらいに、少なくともSSSランク程度には強くなってもらわなければ無理ね」



 ルミエールの絶望的な宣告を聞いた拓海が固まっているのを横目にルミエールは自分の椅子に立てかけられていた物を机の上に置いた。



「君に渡したい物がある。これは君が強くなる上で必ず役に立つだろう」



 拓海は机に置かれた物を見て目を見開いた。それは蒼い何かの鱗と透明感のあるスカイブルーの鉱石のような物でできた鞘に収められた一振りの刀だった。



「これは…….。何故これを俺に?」


「なんとなく……かな」



 真顔で即答したルミエールに何か言えない理由があるのかと思いつつ、恐る恐る刀を手に持った。



(ッ!?)



 刀からまるで強大な生命力を持つ生き物のような感覚を覚えた。


 そして何かが身体に入り込んできて溶けこんでいくような感覚に襲われ、次の瞬間刀から光が溢れだして、光が落ち着いた頃には刀は最初からそこにはなかったかのように消えていた。



「き、消えた……? 今のは一体……」



 そんな中ルミエールは一人納得したように頷くと、突然何かの魔法を使った。



「“ティアリベレーション”」



 すると魔法の詠唱を終えたルミエールの背中から天使の羽のようなものが生え輝きを放った。


 その神々しいルミエールに拓海は圧倒され、口を半開きにして見とれていた。



「楓の子、異世界に導かれし者よ。貴方にはこの先様々な乗り越えなければならない試練降りかかり、辛い選択を迫られることがあるだろう。だがそれらを乗り越えた時、貴方は自分が求める真実に辿りつくであろう」


「試練……真実?」



 ルミエールがふぅと息をつくと羽は光の粒子となり弾けるようにして消えた。そして拓海の目を見据て優しく微笑んだ。



「拓海。後悔のしないように生きなさい。いつか君と共に戦えることに期待して、幸運を祈るわ。またどこかで会いましょう」



 拓海の意識はその言葉を最後に前触れもなく途絶えてしまうのだった。

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