2-18 アストレア聖騎士団6
ロイと拓海の決闘を観客席のモニターで見ている騎士団の人達はロイの猛攻を何とか凌ぎ続ける拓海に驚きと賞賛の声をあげていた。
そして、その様子を見た胡桃は嬉しそうにモーガンに話しかけた。
「どう? 拓海ってかなり対人戦のセンスあるでしょ!」
「うむ……。まだ反撃出来ていないものの、相手の技を防ぐ技術は目を見張るな。うちの団員でもあそこまでロイの攻撃を防ぎ続けられる奴は多くはないしな……」
モーガンは胡桃にそう返しつつ鋭い目つきで拓海の動きを観察していた。
(あの銀色のオーラ……どこかで見たことがあったような……。気のせいか?)
皆がモニターを見ている中、魔力に敏感なアイリスは観客席に一人の騎士が入ってくるのに気付いた。身長は拓海と同じくらいだろうか?いや、もっと小さいかもしれない。また、他の騎士とは甲冑の装飾が違い白銀に輝いている。そして何よりその騎士からとてつもない量の魔力を感じ、アイリスは身震いした。
「あ、あのお方はどちら様でしょうか?」
アイリスの声で気がついたモーガンは振り返ると笑みを浮かべ敬礼をした。
「ん? お、団長! お帰りになられましたか! 現在、騎士隊長のロイと拓海が模擬決闘をしております」
アイリスとモーガンの言葉に他の人達もアストレア聖騎士団の団長に気付いたようで、騎士団の人達は皆団長に向かって急いで跪いた。
団長はその様子を一瞥して、モーガンを手招きして何かを指示してモニターにも一度目を向け、観客席から無言で去っていった。
そして団長が立ち去っていったのを見届けた騎士団の人達は、息をついてまた拓海とロイの決闘を見始めた。
そんな様子を見ていた胡桃は不思議そうな顔を浮かべた。
「今のが騎士団長? 初めて見たけど、思ってたイメージと違うなぁ……。もっといかつい感じかなって思ってたよ」
胡桃の言葉にモーガンは苦笑した。
「まあ、それはよく言われてるな。だが、実力は本物だぞ」
そうこう言っているうちに決闘の局面が動いた。ロイの剣が少し大振りになったのを拓海は見逃さずロイの剣を一本吹き飛ばした。
拓海がしてやったとロイの顔を一瞥するとそこにはロイの驚いた顔ではなく、口元にしてやったりと笑みを浮かべたロイの顔があった。
(ま、まさか今のは囮か!? まずい!?)
拓海が距離を取ろうとした瞬間にロイのもう片方の剣が今までの倍くらいの速度で振り下ろされた。拓海はなすすべもなく斬られ、目の前が真っ暗になった。




