2-17 アストレア聖騎士団5
ーーーーー三、二、一、決闘開始!
開始のアナウンスがあったが、拓海とロイは一定距離を保ちながらお互い武器を構えて様子をうかがっていた。
ロイはそんな拓海の様子を見て、目を細めて少し感心していた。
(ふーん……始まって突っ込んできたところにカウンターを合わせようかと思ったんだが、そう簡単にはいかないか……。それに、なんだか対人に慣れてる感じがするな……。構えに隙という隙がないな……)
そして、拓海はロイの一挙一動を見逃さないようにと集中力を高めていた。
(自分からはこないか……それならっ!!)
「付加魔法“氷”」
拓海の剣に魔法の冷気が纏わりつき、魔法の詠唱の終わりと同時に拓海はロイに向かって一歩踏み出した。
「ッ!?」
いや、一歩しか踏み出せなかった。
「はあぁぁ!!」
ロイが拓海が踏み出すと同時に素早く飛び出して一気に距離を詰めると、気迫のこもった声を上げて凄まじい速さで拓海に向かって剣を切り上げたのである。
ロイの想像以上に速い動き出しに反応が遅れた拓海は身をよじりながら何とかロイの動きに反応して長剣の腹でロイの一撃の軌道を逸らした。
だが、ロイは剣を持ってない左手でもう一本剣を抜き放ち身をよじって態勢が崩れた拓海の長剣に向かってなぎ払った。
「ぐっ!?」
拓海は態勢を崩しながらもロイのなぎ払いをそのまま剣で受け、金属同士が激しくぶつかり合う音を響かせてそのまま後ろに転がった。
「くっ!?」
吹き飛び地面を転がりながらも今の一瞬のうちに放たれた連撃を防ぎきれた自分に拓海は驚いていた。
(何て速さと威力だ!? それに二つ剣を使うのか……。よく今の防げたな俺。こんなの一発でもまともに受けたら即やられるぞ……。胡桃よりは早くないけど一撃が重い!?)
そんなことを考えながら素早く立ち上がった拓海を見たロイは表情には出さないものの内心かなり驚いていた。
「へぇ、今の二連撃で決めるつもりだったんだけど……」
「ははっ、まだまだ!」
ロイの攻撃を何とか防いだが、今の攻防でロイは拓海の技量と力をある程度見抜いていた。
「これは思ってた以上に楽しめそうだなぁ……。だが、今度は逃さないぜ! 付加魔法“水”“風”!!」
魔法を詠唱したロイの二本の剣がそれぞれ水と風を纏ったのを見ながら、拓海も対抗して全身に銀色のオーラを纏わせた。
実は拓海自身まだこのオーラの事がよくわかってなくて今は自分の身体能力の向上、武器と防具の一時的な強化ということしかわかっていない。
そして再び拓海が剣を構えると同時にロイが先程と同様、一回の踏み込みで一気に距離を詰めて剣を振り下ろしてきた。
「なっ!?」
拓海は付加魔法とオーラを纏う剣でその剣を受け止めると同時に身体が何かに斬られかけたのに気付き、素早く魔法を詠唱しながら後ろに飛びのいた。
「ちっ、“アイスソーン”」
「おっと」
魔法を詠唱すると床から三本の氷の棘が飛び出しロイの追撃を防ぎつつ拓海は距離を取り、斬られた自分の身体を見てみると防具に斜めに削れた跡がついていることに気がついた。
(三、四メートルの間合いは一回の踏み込みだけで詰められるのか。それに、今のが風の付加魔法の効果かな? 少し遅れてたら身体が真っ二つにされてたな……)
拓海は次のロイの攻撃に備え、反撃するタイミングを探りつつ構えなおした。




