2-15 アストレア聖騎士団3
拓海達三人は幻想式闘技場がある階に着いて、とりあえず観客席に向かっていると前から何やら見覚えのある白衣を身に付けた男が歩いてくるのに三人は気付いた。
そして男はこちらに気づくと声をかけてきた。
「おや? 拓海君じゃないか! 久しぶりだね!」
急に拓海に話しかけた白衣の男に会ったことがない胡桃が首を傾げ、知り合いかと拓海に聞いた。
「えっと、前に魔力測定してくれた人だよ。お久しぶりです」
「そういえば自己紹介がまだだったね。俺はエル=ルーク。この城で研究者をしている。まあルークとでも呼んでくれ。それはそうと今日は幻想式闘技場で特訓かい?」
「はい。騎士団の方と手合わせしてもらうんです」
「なるほど、そうなのか。俺も見に行きたいけど仕事があるからな……。ま、頑張りな!」
そう歩きながら後ろに手をヒラヒラと振って颯爽と立ち去っていった。
拓海はルークの姿が見えなくなったのを確認して再び歩きだそうとすると隣で何故か胡桃が目を見開いて固まっていた。
「胡桃? どうしたんだ? そんな驚いたような顔をして」
胡桃に声をかけるとビクッと反応した。
「あの人きっとただ者じゃないよ」
拓海とアイリスは胡桃の言葉に顔を見合わせキョトンとしていた。胡桃の話ではルークから違和感を感じたらしい。ただの研究者、一般人では説明がつかない言語化にできない何かを本能で一瞬感じとってしまい驚きのあまり固まってしまったらしい。
そんな胡桃の言葉に拓海は不思議そうに首を傾げた。
「おいおい。あの人研究者だぞ?」
「うーん……。本当にそうかなぁ……? まあいっか、うん」
胡桃はそう呟きながら流石に考えすぎかと、一人納得していた。
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そうこうしていると三人は幻想式闘技場の観客席に着いた。観客席にはまだ早い時間帯ということもあり、人はあまりいない。
拓海がちらりとモニターに目を向けると、何やら先に誰かが戦っていた。片方は黒いローブを着て背中に複数の杖を持った男性で、もう片方は身軽な格好をした短剣を使う女性だ。
するとアイリスがモニターの男を見て思わず感嘆の声を上げた。
「あの人すごいです! 魔力がどんどん上がっていきます!」
そんなアイリスに胡桃は驚いて目を見張って尋ねた。
「え、アイリスって人の魔力とか見えたりするの?」
「私は魔力の変化に敏感なんです。実際どのくらいとかは見ただけでは分からないですけどね……」
結局ローブの男が周囲の大地を動かす特殊な土属性の魔法を使い女の人が動けなくなって降参していた。
「相当強いね、まだまだ余裕そうだったし。あの男の人、多分Sランク以上だね。私でも勝てなさそうだなぁ……」
胡桃が一目置くということは相当な使い手なのだろう。黒ローブの男の勝利で試合が終わり、しばらくしてから一人の騎士が観客席に入ってきた。拓海の手合わせの相手だろうか。向こうがこちらに気付き三人に向かって歩いてきた。
「や、さっきぶり! あ〜なるほどな。拓海君かぁ俺の相手は」
「え!? ロイさん?」
そこには頭の鎧を外し不敵な笑みを浮かべたロイが立っていた。




