2-14 アストレア聖騎士団2
次の日、拓海達三人は騎士団の訓練の見学をするためアルカディア城に来ていた。
どうやら騎士団の訓練は上の方の階で行われているらしい。
「訓練の見学とかさせてもらえるのかな? 色々と参考になるといいな……」
「どうだろうね。私も初めて騎士団の訓練所とか来たからな〜。まあ、何にせよ楽しみだね!」
「はい! 私も楽しみです!」
そして三人はモーガンと約束していたアルカディア城の冒険者の酒場の入り口に向かい、約束の場所にモーガンに似た鎧に身を包んだ騎士の格好をした男が腕を組んで壁にもたれながら立っていた。
(あの人かな?)
やがて三人が近づいていくとその男も拓海達に気がついた。
「お、君達がモーガン副団長の客人かな?」
「はい、桐生拓海といいます。よろしくお願いします」
胡桃とアイリスも拓海に続いて簡単な挨拶をすると、男は笑みを浮かべた。
「俺はモーガン副団長の部下のロイだ、よろしくな! いやぁ、それにしてもそうか君達か……。最近君達の活躍の噂をよく耳にしてね! この前、拓海君とアイリスさんはBランクに上がったんだろ? よかったな!」
「「ありがとうございます!」」
拓海とアイリスが照れながらも礼を言ってから拓海達三人とロイは話をしながら騎士団が訓練している階に向かうのだった。
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「これは……」
「ひ、広いです……」
「あれ? 何でこの階だけこんなに広いの?」
目的の階に到着して、目の前に広がる圧倒されるほど広い空間に三人は口をぽかんと開けていた。
「ははは! 驚いただろ? 騎士団が訓練に使用している階は空間魔法で広くしてあるんだよ」
「空間魔法?」
「ああ、空間魔法が使える人は稀にしかいないがな。何やら団長が知り合いに頼んで作ってもらったらしい」
拓海が辺りを見渡すと、訓練所では剣を素振りしている人達や走って体力作りをしている人など様々な人がいた。
それから三人がロイに色々説明をしてもらいながら歩いていると、フロアの中心にある二階建ての建物に着いた。
三人とロイは中に入り、ロイが何やら受付に座る人物に一言二言言葉を交わすと、拓海達は無事客人として二階の奥の部屋までたどり着いた。
そして部屋の前に着いたところでロイが部屋の扉を軽く二回ノックした。
「モーガン副団長。客人三人をお連れしました」
「ロイか、入れ」
「では失礼します」
三人がロイに続いて部屋に入ると、モーガンが部屋の奥の机で書類を片付けていた。
それからしばらくして、ロイはモーガンの指示で部屋から去っていき、モーガンは三人を部屋の中央のソファーに席を勧め紅茶を出して三人と向かい合うようにして席に座った。
「すまなかったな。少し忙しくて手が離せなくてロイに案内をしてもらった。それでどうだ、ここの訓練は?」
「そうですね……。体力作りから戦闘訓練とか色々参考になりそうです!」
笑顔でそう返す拓海にモーガンは満足そうに頷いた。
「そりゃ、良かった。まあ、ゆっくり見ていってくれ……と言いたいところだが騎士団長が拓海君と少し話がしたいらしい」
騎士団長が話したいということに三人は驚いた表情になり、突然のことに驚いた様子の拓海はモーガンに聞き返した。
「騎士団長さんが? まあ丁度聞きたいこともあったのでありがたいんですけど」
モーガンは騎士団長との面識が無いはずの拓海が聞きたいことが気になったのか、拓海を興味深かそうに眺めた。
「ほう? 騎士団長に? そうかそうか。でもまだ騎士団長が来るまで時間があるからな……。よし、拓海君。うちの騎士団のメンバーと模擬戦でもしてみるか?」
そんな突然のモーガンの提案に拓海は驚きつつも、内心わくわくしていた。
「いいんですか? 相手になるかわかりませんが、良ければ是非お願いします!」
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それからモーガンとの会話を終えた三人は先に幻想式闘技場に向かっていた。
「まさか騎士団長と直接話をする機会をもらえるなんて思わなかったな……」
いまいち実感がわかない拓海がそう呟いていると、胡桃が拓海の肩を軽く叩いてそっと囁いた。
「失礼なことを言わないようにね。騎士団長さんはこの街で一番権力があるからさ」
どうやら胡桃の話では騎士団長は滅多に姿を現さなく、通常話すどころか会うことも出来ないらしい。しかも、聞いた話ではそもそもおかしな事に素顔すら知られていないようだ。
そして実質この騎士団に指示を出しているのは副騎士団長のモーガンだという。では騎士団長は何をしていて、素顔すら知られていないのに慕われているのだろうかと拓海は内心何かが引っかかっていた。
(何か違和感あるよな……?)
またそれに対して疑問にならない胡桃やアイリスのことも拓海は気にしながら歩みを進めた。




