プロローグ2
プロローグ1の続きです
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(……ん、ここは……。どこだ? 俺は一体どうなったんだ? 川から落ちて、それから……)
目を開けると拓海は周りに何もない真っ白な空間に一人漂っていた。四方八方見渡しても何もない空間ーー
ーーいや、拓海から遠く離れた場所にどことなく現れた誰かが歩いて来る。
見た感じ拓海の頭一つ分くらい背が高いようなので身長は百八十センチ以上はあるだろう。黒いマントで身を包んでいてフードを深く被っているせいで素顔がよく見えない。
拓海は怪訝な顔で目を凝らした。
(誰だ? それにあの人……どうやってこの何もない所で歩いてるんだ……?)
やがて、その人は拓海から三メートルくらい離れた位置まで何もない空間を歩いて来るとピタリと立ち止まった。
何事かと拓海は怪訝そうな顔で近づいて来た男を見ていると、頭の中に突然言葉が流れこんできた。
ーーよく来たな……少年。そちらの世界から導かれた者はこれで二人目だーー
「っ!?」
透き通った声が拓海の頭の中に響いた。正面に立っている人が話しかけてきているのだろうか。そして声と口調からして、どうやら男のようだ。
そして、突然頭の中に流れこんできた言葉に驚きながらも我に返った拓海はその男に聞きたいことが山ほどあったので質問をした。
「あなたは誰ですか? それに俺は一体どうなったんだ……」
ーー……俺は『悠久の地の番人』ーー
「悠久の地……?」
ーー……。そうだな……君は偶然、不定期にランダムに現れる君がいた世界とここを繋ぐ門をくぐってここに来て、今に至るーー
「何を言ってるんだ? 俺はさっき柑菜とスーパーの帰り道で通り魔に襲われて、川に落ちてーー」
そこでハッとした拓海は恐る恐る尋ねるように呟いた。
「ーーまさか川に落ちる途中にその門とやらが現れたとでも言うのか?」
ーー……。まあ……そうなんだろうなーー
どこか引っかかるような返答をされるが、突拍子のない事が立て続けに起きているせいか拓海はそれどころではなく、頭の中で情報処理が追いつかなくなっていた。
「そ……そんな急に違う世界に来たと言われて信じるとでも?」
拓海の動揺した声に男は肩をすくめた。
ーー信じるか信じないかは自由だ……。早目に自分の現状を理解しておいた方が賢明だとは思うがな……ーー
それから男はしばらく拓海の方を向いて黙っていると、何か思い出したように頭の中に直接語りかけてきた。
ーーそうだな……。君の姓はもしかして桐生というのではないか?ーー
「まあ……そうだけど。何で知っているんだ?」
ーーふむ……やはりその血筋の者かーー
男は何か意味深なことを呟き、まだ困惑している拓海を一瞥して背を向けた。
ーー君の肉親、おそらく父親にあたる人物に俺は会ったことがある。彼は今こちらの世界のどこかにいるはずだーー
拓海は目を見開き、男の言葉に口を半開きにして驚いていた。
まさか行方不明になって既に二年も経ち、もう生きているかすら分からなかった自分の父親の情報が突然入り込んできたことに驚愕している拓海は、男の言葉を信じ切れずにいた。
「父さんが!? まさか、そんな……」
ーーそろそろ時間だ。君に七帝の加護があらんことを……ーー
「ちょっと待ってくれ!? 詳しく教えてくれ! 父さんは、父さんは本当に生きてるのか!? 頼…….む……」
自分に背を向け、そのまま離れていく男の背中の輪郭が徐々にぼやけていく。そして、それと同時に拓海は自分の視界が狭くなっていき、意識が遠のいていくのであった。