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異世界に導かれし者  作者: NS
第2章 聖都アストレア
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2-9 決闘2

 三人組の男達と決闘の約束をした次の日。今回の決闘は幻想式闘技場で行われることになっているため拓海と胡桃、そしてアイリスはアルカディア城に来ていた。


 幻想式闘技場とは名前の通り仮想空間にある幻想の闘技場である。まず決闘する人達はそれぞれ特殊なカプセルに入る。このカプセルに入った後、カプセルを作動させると自分の意識と一緒に自分の分身が仮想空間の幻想式闘技場に送られる。


 そしてここでは、これ以上戦闘が続行出来ないと機械が判定すると自動で意識がこちらに戻ってくる仕組みになっている。


 仮想空間での怪我や痛みといった感覚のオンオフも可能で現実の戦闘とより近い体験をすることが出来るのにも拘わらず、現実の体には何も影響しないので冒険者の中でもこの決闘方法がよく使われているらしい。ちなみに決闘の様子はモニターで観戦することが出来るそうだ。


 開発者は不明らしいが、最新のマジックアイテムが行き交うソーサリーに住む誰かが作ったとか。


 やがて拓海達が十階に着き、指定されていた部屋に着くともう男達三人はカプセルに入る準備をしていた。


 リーダーの男が拓海達を一瞥してにやりと笑った。



「ほぉ……来ないかと思ったんだがな。まあいい。しっかり教育してやるよ、駆け出しの坊主」


「御託はいい。さっさと始めよう」



 そして、職員の指示のもと拓海と男達三人がカプセルに入ると笑みを浮かべた胡桃が拓海のカプセルに近寄った。



「拓海、頑張ってね! アイリスと私はモニターで観戦するね!」


「あぁ、行ってくる!」



 胡桃がカプセルから離れたのを確認した幻想式闘技場の職員がカプセルを作動させた。



(ーーッ!!)



 拓海は体が一瞬浮いたような感覚に襲われ、目の前が真っ暗になった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それからわずか数秒後、意識がはっきりとした拓海はゆっくりと目を開けると大きな闘技場で男達三人と向かい合うようにして立っていた。



「おぉ……!!」


(おおぉ……!!!!)



 初めての体験に拓海が一人興奮していると、突然アナウンスが流れ始めた。



「幻想式闘技場へようこそ! 今回は一対三の決闘です。今から三十秒のカウントの後決闘を開始して下さい。なお、この決闘はどちらかが全滅するまで続きます」



 そうアナウンスが流れるとカウントが始まった。


 拓海は大きく息を吐くと腰の長剣に手をかけた。



 ーーーーーー二十、十九、十八……



 正面の三人の男達もそれぞれ武器を構えた。


(集中しろ。目の前の相手を倒すことだけを考えろ……)



 ーーーーーー五、四、三、二……



(……………)



 ……、一、決闘開始!



(いくぞ……!)



 拓海はスタートの合図と同時に長剣を抜き放ち、真ん中の男に向かって走り出した。

 敢えて片手で長剣を握って、片手は空けておく。先日胡桃から相手の強さにもよるが、まずは自分の動きを一つに絞らせないことが大事ということを教わっていた拓海は、片手を空けて長剣以外の選択肢があることを相手に警戒させていた。



「ほぅ……やれ」



 三人組は肉体強化無しでも冒険者の中で素速い部類に入る拓海のスピードに少し驚いた様子を見せたが、リーダーの男が指示をすると拓海の剣の射程が男に到達する前に、左右の男が魔法を唱えた。



「「“フレイムウォール”!」」


「っ!?」



 拓海の前方に突然大量の炎の壁が現れた。しかし、拓海は走りを止めずに落ち着いて片手を炎の壁に向けた。



「“アイシクルレイン”」



 拓海の左手が青白く光と共に炎の向こうにいる男達の上空に展開した魔法陣からいくつものつららが降り注ぐ。リーダーの男がいち早く上空の魔法陣に気付き魔法を唱えた。



「“ウインドインパクト”!」



 魔法を詠唱したリーダーの男が握りしめた拳が緑に光り、上空に勢いよく突き出した拳から強力な風が放たれ降り注ぐつららを全て弾き飛ばした。



「おら、どうした! こんなもんか?」



 弾き飛ばされたつららが砕け散り、降り注ぐ細かい氷の破片を意に返すことない調子づいたリーダーの男の声が闘技場に響き渡った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 観客席では多くの人がこの決闘を見て、それぞれ賞賛の声をあげたり戦い方について学んでいる冒険者らしき人物がいたりと様々な人がいる。そんな中、アイリスと胡桃は拓海の戦いを中継しているモニターの真ん中に陣取って座っていた。


 モニターで拓海の魔法がリーダーの男に吹き飛ばされたのを見たアイリスは早くも少し絶望感に浸っていた。



「そんな……拓海さんの魔法が効いていないなんて……」



 そんなアイリスの様子を横目に見た胡桃はクスリと小さく笑うとモニターに再び目を向けた。

 確かに駆け出しの冒険者が今拓海が使ったような攻撃魔法を使えること自体珍しいことではあるが、あくまで一般的にはということで、魔力の質が高い拓海にそれは当てはまらない。



「大丈夫、あれは囮よ。拓海をよく見てみて」


「え?」



 モニターの拓海は炎の壁の前で立ち止まると、熱気に少し顔をしかめながらも剣を下段に構えた。そして、身体の中心から右手、握った剣にと力が徐々に移動していくイメージをしながら集中力を高め、徐々に揺らめく銀色のオーラが拓海の剣から溢れ出す。

 その様子を見て目を丸くしたアイリスは驚きを隠せないまま胡桃の肩を揺すった。



「胡桃さん! 胡桃さん! あの銀色のオーラは何ですか!?」


「ちょ、落ち着いて! 拓海の必殺技みたいなものよ。まぁ……色々不安要素がある技だけどね」


「え!? そ、それって大丈夫なんですか?」



 アイリスが胡桃の肩を手放すと、胡桃は何とも言えないような微妙な表情を浮かべながらも、小さく笑ってみせた。



「大丈夫、私は拓海を信じるよ」


(色々試したけど、一日一回の大技……拓海、頑張って!)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



(集中しろ……一撃で決めてやる!)



 炎の壁の前で静かに剣を構える拓海はこれまで以上に剣にオーラを纏わせることに集中していた。


 そして炎の壁の向こうのアイシクルレインとウインドインパクトが相殺している音が消えてリーダーの男の声が響き渡り、左右の男達が炎の壁を一旦解除しようと炎の壁が弱まり揺らいだ瞬間、拓海は炎の壁ごと剣を勢いよく横になぎ払った。



「ふっ!」


「「何!?」」



 すると剣に纏わっていた銀色のオーラが銀色の斬撃となり剣から炎の壁を切り裂く。

 迫り来る見たことがない銀色の斬撃に思考が停止してしまった男達三人に、そのまま広がっていった銀の斬撃が直撃してまとめて吹き飛ばした。



「ご……かっ……は」


「ごふっ……」



 今の一撃で腹部に直撃した左右にいた火属性使いの男二人はそのまま立ち上がることなく苦悶の声を漏らすと、徐々に身体が光の粒子に変わって消えていった。


 しかし、リーダーの男は左右の二人を盾にして直撃を免れていたようだが、驚きと受けたダメージを受け入れ切れずに肩で息をしていた。それでもリーダーの男は膝をついていて、身体を支える右足も震えていた。



「て、てめぇ……何だ今のは……?」



 完全に予想外の一撃を受けたリーダーの男の顎から噴き出して滴ってきた汗が落ちる。死を直感していた。冒険者になって初めてだった。咄嗟に左右の二人を掴んで盾にしたお陰で致命傷とはならなかったが、肉体的なダメージ以上にリーダーの男は格下で年下の冒険者から恐怖と屈辱を与えられたという精神的なダメージに表情を歪めた。


 三人はまとめて倒し切れなかったが、リーダーの男の様子からも確かな手ごたえを感じた拓海は敢えてにやりと笑みを浮かべ挑発するように返した。



「お前に教える義理はないね。それより早く立てよ。ここからはタイマンだぜ」


「ちっ、野郎……ぶっ潰してやる!」



 拓海と男は睨み合いながらお互い武器を構え直すのであった。

戦闘シーンを文章で表すの難しいです……。

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