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異世界に導かれし者  作者: NS
第5章 覚醒
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5-38 戦乱の大和9

 近距離でリンドヴルムの咆哮によって発生した衝撃波を受けてしまった胡桃は後ろに吹き飛ばされたが、空中で体勢を立て直して着地した。しかし、受けたダメージは少なかったがあまりの音量に胡桃は顔をしかめていた。



「何でこんなところにこいつが……」



 胡桃の呟きに反応したのか蛇のよう長い頭を傾けた。


 そして、胡桃達四人の姿を緑色に輝く瞳が捉えると、大きく息を吸い込み始めた。


 その様子を見た羅刹は目を見開き、三人に指示を叫ぶように伝えた。



「皆! 一箇所に寄れ!」



 皆が一箇所に寄った瞬間、リンドヴルムの口から大量の砂塵を含んだ先程の咆哮の衝撃波より強烈な衝撃波が放たれた。



「「“ダークミュール・エノルム”」」



 胡桃と羅刹が作り出した闇属性の壁が半球状となり四人を包み込んだ。


 そして周りの建物を粉砕しながら迫る砂塵を含んだ衝撃波は二人が作った闇属性の壁に轟音を上げてぶつかり壁に大きなヒビを作ったが、破壊出来ずにそのまま後ろに逸れていった。



「ま、街が……」



 魔法を解いて壁が消えると、周囲の建物は瓦礫の山となり以前の大和の街並みの片鱗すら残ってないほど街が荒れ果てていた。


 それを見た胡桃は悲しそうに表情を歪めると、リンドヴルムを憎しみのこもった目で睨みつけた。



「絶対に許さない!!」



 殺気立つ胡桃の様子を見た羅刹は、冷静に武器を失ったギースと攻撃魔法が少ないシモンに指示をした。



「二人は冒険者ギルドに戻って、Sランク以上……。出来ればSSランク以上の冒険者、『闘神』か『月光』を呼んでくれ。さっきの超広範囲攻撃も文献によれば、連発は出来ないはずだから何とか冒険者ギルドまで辿りつけるはずだ」



 シモンは自分が攻撃魔法をあまり持っていなくて役に立てそうにないことに自覚があるのか悔しそうに歯をくいしばって黙って頷いた。


 ギースもこのままでは足手まといになってしまうことに自覚があり頷いたが、最後羅刹に尋ねた。



「あんたら二人は……」


「時間稼ぎだ……。まあ、殺せたら殺すがな」



 羅刹はそうギースに背中を向けて言葉を返すと、胡桃の隣に刀を構えて並び立った。



「手伝うぞ……」


「ありがと。背中は任せるよ!」


「あぁ。そっちこそ任せたぞ!」



 そう言葉を交わし、リンドヴルムに向かっていく二人の姿を見たギースとシモンは冒険者ギルドの建物に向かって走り出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 リンドヴルムは羅刹と胡桃の二人が接近してきたのを見て、翼がついた巨大な右前脚が微かに緑色に発光すると同時に勢いよく振り切った。


 すると、リンドヴルムの右前脚から発生した一つ一つが胡桃くらいの大きさがあり、目では見辛い幾つもの風の刃が二人に襲いかかる。



「すまん任せるぞ神崎妹! “シャドウダイブ”」



 全て無傷で捌ききる自信がなかった羅刹は、魔法で胡桃の影に沈み込んで姿を隠し、胡桃はリンドヴルムから視線を外すことなく応える。



「任せてよ! “ウインドステップ”」 「付与魔法“闇”」

 


 両足が風属性の魔力に包み込まれ、移動速度が上がった胡桃は抜き放った脇差に闇属性の魔力を纏い、次々に迫り来る風の刃を弾き、避けながらリンドヴルムへ突進していく。



「くっ……!?」



 避けきれない風の刃は脇差が纏った闇を盾型に形態変化させて何とか防いでいたが、いくら胡桃とはいえ全て凌ぐことは至難の技であった。

 近くにつれて刃の数が増え脇差に纏った盾型の闇は砕かれて胡桃の身体には、いくつもの切り傷ができていく。


 それでもリンドヴルムの懐まで胡桃が辿り着くと同時に、胡桃の影が揺らぐ。



「すまん、神崎妹」



 リンドヴルムの側まで駆け抜けた胡桃の影から勢いよく羅刹が飛び出し、リンドヴルムの胸部に向かって抜刀と共に刀を振り抜いた。



「“風牙”」 「“ブラスト・ディフュージョン”」



 羅刹の刀から放たれた風の斬撃がリンドヴルムの胸部に命中した。

 そして、命中した胸部では風属性の魔力が爆発するかのように拡散して周りの鱗を吹き飛ばして肉を抉ると、そこから血が吹き出してリンドヴルムが悲鳴のような咆哮を上げる。


 胡桃は顔をしかめながら耳を塞ぎたくなるのを我慢して、リンドヴルムのそれぞれの前脚に向かって術符のついたクナイを放ち魔法を詠唱した。



「“爆符・ウインドブラスト”」



 前脚の翼に命中したクナイについた術符から『ウインドブラスト』が放たれ、リンドヴルムの前脚の翼にゼロ距離で直撃した。


 そしてリンドヴルムはバランスを崩して、身体をゆっくりと傾けて前のめりに倒れた。


 当然、羅刹と胡桃の二人は既に離脱していてリンドヴルムから距離をとっていた。



「良い感じだね! このまま押し切ろうよ!」



 そう言ってリンドヴルムに接近しようとした胡桃の肩を掴み、羅刹は止めた。



「いや……。こここからが本当の勝負だ」



 二人の視線の先にいるリンドヴルムは、ゆっくりと身体を起こすと身体の周りから砂塵を巻き起こし始めた。


 そしてリンドヴルムは胡桃と羅刹を血走った目で睨み、強烈な殺気を向けて大音量の咆哮を放つのだった。


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