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異世界に導かれし者  作者: NS
第2章 聖都アストレア
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2-7 エルフの少女

「は〜駄目だ……。まともな情報が全然入ってこない……」



 拓海がジャイアントゴブリンを討伐してからもう四日経った。拓海は怪我が完治するまで絶対に安静にしててと胡桃に言われたが、流石に宿の自室に引きこもっているのは時間の無駄と感じて現在街の色々な酒場で父親について聞き込み中である。


 ちなみに胡桃はこの数日自分宛てにたまっていた依頼を順番にこなしているらしい。だから拓海はここ数日は胡桃とは別行動をしていた。



「はぁ、今頃柑菜は何しているかな……。それに早く元の世界に戻る方法も見つけないと……」



 拓海は一人でそうぶつぶつ呟きながら酒場から外に出ると、前から丁度酒場に入ってきた人にぶつかってしまった。



「きゃっ!?」


「うわっと!? す、すいません!」



 ぶつかったのは白いローブを着た拓海より少し背の低い長くサラサラとした金髪の女の子だった。耳が尖っているのを見ると、どうやらエルフの女の子のようだ。



「あれ? もしかして君ってこの前、魔力測定の時に俺の前に測ってた子かな?」



 見覚えがあったその女の子に拓海は思わず尋ねた。



「え? あ! あなたはあの時『黒流星』さんと一緒にいた人でしたか!」



 エルフの女の子も拓海とすれ違った時のことを覚えていたようだ。


 それから拓海はエルフの女の子に聞き込みの休憩がてら少し話さないかと思いつきで誘ったら、笑顔で快く付きあってくれた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 二人は酒場から少し歩いたところにあるカフェに入いることにした。


 窓際の席に座り、二人が飲み物を注文するとエルフの女の子が早速とそわそわしながら小さく咳払いをして話し始めた。



「そういえば自己紹介をしていませんでしたね! 私はアイリスと申します。見ての通りエルフで、まだ駆け出しの冒険者です」


「俺は桐生拓海。同じく駆け出し冒険者だよ。よろしく! 胡桃とはまあ何だかんだで知りあった仲なんだけど、やっぱり胡桃って有名なのか?」



 拓海が不思議そうにアイリスに尋ねると、アイリスは大きく頷いて答えた。



「はい! 彼女は若くしてSランクになって実力もかなりのものと噂で聞いています。これからの成長にも期待されているそうですよ!」



 拓海は胡桃が結構な有名人であることに驚きながらさっそく父親のことを聞いた。



「なるほどな……やっぱり胡桃って有名人だったんだな……。あ、そうだ! 桐生楓って名前に聞き覚えとかない? 俺の父親で、今探してるんだけど」


「桐生楓さん……ですか……」



 アイリスはその名前に何か思い当たる節があるようで、思い出そうと考えて話し始めた。



「以前エルフの里にいた時に聞いたことがある名前ですね。たしか凄腕の水属性の使い手であらゆるモンスターを倒して凄い勢いでランクを上げていったらしいですよ。拓海さんのお父さんでしたか」


「知っているのか!? 何か他に知っていることとかあるか?」


「わわっ!?」



 この街に来て初めての父親の情報だったので拓海は少し興奮してしまい身を乗り出して聞いた。

 その拓海の様子にアイリスはちょっと驚いたような表情で申し訳なさそうに答えた。



「すいません……。私はこれ以上のことはよく知らないです」


「そっか……」



 ちょっと残念だったが、アイリスにお礼を言ってその後一時間くらいここ周辺に現れるモンスターのことやオススメのお店など様々な話題で盛り上がって雑談をした。


 あと、拓海がEクラスでジャイアントゴブリンを討伐したことがいつの間にか広まって期待のルーキーと少し噂されているらしい。拓海は照れながらも自分の名前が広まれば、もしかしたら父の耳にも届くかも知れないと期待が膨らむのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 アイリスとの話に夢中になっていると、いつの間にか陽が落ちて暗くなってきているのに拓海は気付いた。



「ごめんな。急に長話に付きあってもらってさ」


「いえいえ、拓海さんとのお話楽かったですよ! それに二人きりで誰かと話をするのは久々でしたので楽しかったです! ではまた縁があったらお話しましょう」



 満面の笑みでそう言葉を返したアイリスにこちらこそ楽しかったと言って、アイリスと別れた拓海は店を出た。


 そして拓海はそのまま宿に帰ろうとしたが、不意に視線を感じて後ろを振り返ると、拓海の目の前に腰に手を当て、ジト目でこちらをじっと見つめる胡桃が立っていた。



「あっ」


「久しぶりに拓海を見つけたと思ったら。へ〜……情報を聞き込みに行くとか言ってたのに女の子と二人でデートか〜! そうなんだ〜! へ〜」


「い、いや、これはその……誤解だって!?」



 その後、拓海は不機嫌そうな胡桃の誤解を解くのに結構な時間を要したのだった。

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