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異世界に導かれし者  作者: NS
第2章 聖都アストレア
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2-4 討伐依頼 ゴブリンの群れを狩れ!

 拓海は魔力測定の後、受付に戻って簡単な手続きをして無事に冒険者登録を終えた。


 その後拓海は早速依頼を受けようとしたが、胡桃の「拓海、何か武器は持っているの?」という一言で現在拓海と胡桃は街の武器、防具を取り扱う店に来ていた。


 店にはたくさんの剣、槍、弓、おそらく魔導士が使う杖といった多様な武具が、安価な素材で作られた初心者用から高価な素材で作られたベテラン冒険者が使いそうな武具まで売られている。

 冒険者の中には専属の鍛治師を雇って、オーダーメイドで装備を作る者も中にはいるらしい。胡桃もその一人だったが、全てがオーダーメイドという訳ではないため、よく街の武器や防具を取り扱う店にはよく来るようだ。



「どう? 重さ、持ちやすさとか馴染むものは見つかった?」


「う〜ん……。やっぱり長剣が一番しっくりくるかな」



 拓海は自分に合った武器を探すため、駆け出し冒険者用の色々な武器を店の中で試し振りが出来る部屋で素振りしたり構えてみたりと試していた。


 それから色々試してみたが、最初に好感触を覚えた長剣が拓海的には一番しっくりきていた。拓海は幼い頃から剣道をしていて、何となくではあったが長剣が竹刀と同じような感じで振ることが出来て使えそうな気がしたのだ。


 胡桃は拓海が長剣を素振りし終わり鞘に戻しているのを見て、自分が冒険者になりたての頃を思い出しながら腕を組んだ。



「そっか長剣かぁ。拓海は予備用の武器は持たないの? いざという時とか結構必要になる場面が出てくると思うよ」



 速さを武器の一つとしている胡桃は主要武器が脇差で、速さと動き易さを損なわないために予備武器として邪魔にならずに扱い慣れた短剣を持っている。



「予備武器か……。オススメとかあったりする?」


「そうだね〜……。うん、やっぱり短剣がオススメだな〜! 長剣よりも軽いし、小回りもきいて使いやすいし、場面によって使い分けれるからね!」



 胡桃はそう言うと拓海に見せつけるように短剣を抜くと同時に舞うように剣技を空に放ち、自慢気に鼻をならした。



「ってね!」



 拓海は感嘆の声を上げながら胡桃に拍手を送った。



「なるほど、短剣か。じゃあ、長剣と短剣にするよ! 短剣も練習しないとなぁ」


「ふふっ、私、短剣は一番長く使ってるからレクチャーしてあげるよ!」


「本当か? 助かるよ、ありがとな!」



 その後、拓海は駆け出し用の長剣と短剣、そして簡単な防具を買った。防具は攻撃されたら致命傷を負うところのみを厚くした鉱石と皮膚の丈夫なモンスターの皮から作られた機動力重視の防具だ。


 店を出て新しい装備を装着した拓海が上機嫌な様子を見た胡桃は何か思いついたのか拓海の腕の袖を引っ張った。



「ねぇねぇ! せっかく装備を買ったんだから、試しに簡単な討伐依頼でもしてみる?」


「討伐依頼……。そうだな、ちょっと感覚をつかんでおきたいしな」


「じゃあ決まりだね! 行こ〜!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そして二人は依頼を受けるため、再びアルカディア城に訪れた。ギルド指定の依頼は受付でも見られるが、掲示板にも張り出されており、それぞれランク別に分けられている。


 たまたま掲示板の前に人があまりいなかったので拓海と胡桃は様々な依頼を見て回った。


 薬草の採取や人探し、護衛からモンスター討伐まで様々な依頼があった。ランクの高い依頼は全体的に数は少ないようだが何やら竜種など危険そうな依頼が張り出されていた。


 そんな拓海の前で少し背が低い胡桃は何か見つけたのか張り出されていた依頼書を指差して振り返った。



「拓海! これなんかどうかな? ゴブリンの群れ討伐」



 依頼の内容は聖都の西の森に最近住み着いたゴブリン数体の討伐だ。どうやら近くの村が出した依頼で早急に頼みたいらしい。ゴブリン自身がDランクモンスターだが、数が数匹いるらしいのでCランクの依頼となっていたようだ。



(ゴブリンってこの世界に来て遭遇したあいつらか……。そういや色々な武器を持ったやつらが群れてたっけ)



「へぇ……Cランクの依頼か。俺のランクで受けられるのか?」


「私が同行するから可能だよ。ゴブリン戦の前に色々基本的なゴブリンの情報も教えるし、武器にも慣れる時間も作るからどうかな?」


「何から何までありがとな。できる限り頑張ってみるよ」


「最初は皆緊張するものよ。私もサポートするから頑張ろ!」



 受注する依頼が決まったので、胡桃げ依頼書を取って二人で受付で手続きを済ませた。受付嬢がSランクの胡桃がCランクの依頼を受けるのに一瞬驚いていたが、隣の拓海を見て一人納得していて拓海は内心複雑な気持ちになるのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それから依頼を受けた二人は早速目的の森に向かった。幸いなことに道中何事もなく、アストレアを出て一、ニ時間ほど歩くと目的地の森の近くにある依頼主である村長がいる村に辿り着いた。

 その道中、拓海はゴブリンの主な生息地や行動パターン、習性などの情報を胡桃から学ぶだけでなく、武器が手に馴染むように低ランクのモンスターを狩ったり、胡桃にレクチャーを受け、歩きながら動きのイメージしていた。


 村が視界に入った拓海は、伸びをして息を吐いた。



「ふぅ、結構歩いたな……」


「そうかな? この村はまだ近い方だと思うよ?」


「途中で色々やってたからかな? 意外と距離は歩いてないのか」



 それから村の入口に向かうと槍を持った門番が立っていた。二人は村の門番に事情を話し、村長の家に案内してもらった。


 しばらく村の門番を先頭にして村を歩いていると、村の門番が木造のこの村では珍しい二階建ての建物の前で立ち止まった。



(ここが村長の家か……。確かに他の建物に比べて割と立派だな……)


「村長! 依頼を受けた冒険者の方々をお連れしました!」



 しばらくして家に入る許可が出ると、二人は村長の家に村の門番を先頭にして入った。


 部屋の奥の椅子には村長らしき一人の老人が座って何か書類を書いているのが見える。そして村長は拓海達が家に入ると杖を使い立ち上がって三人の方にゆっくりとした足取りで近寄り、手を差し出した。



「おぉ、お待ちしておりました」



 すると一歩前に出た胡桃が村長の握手に応えながら自己紹介をした。



「依頼を受けてきた者です。私は冒険者の神崎胡桃、『黒流星』とも呼ばれています。以後お見知りおきを」


「おぉ!? Sランクの冒険者!! そんなすごい方が来てくださるとはありがたい」



 胡桃がそう自己紹介すると村長は笑みを浮かべながらそう歓迎した。


 しかし、それとは真逆な対応で拓海を上から下まで不満そうな顔で見てきた。じろじろと見られて嫌な気はしたが、拓海も胡桃に倣い頭を下げて自己紹介した。



「えっと、まだ駆け出し冒険者の桐生拓海です」


「そうですか……。まあ、せいぜい足を引っ張らないように頼みますぞ」


(うわぁ……。やっぱり扱いが違うな……)



 拓海がそんなことを思った矢先、隣からすかさず胡桃が村長に尋ねた。



「依頼書にかかれたこと以外で追加で何か気になることはありますか? なければ二人ですぐに片付けてきますが」


「と、特にはないはずです」



 拓海の隣で微笑む胡桃の語気に圧を感じた村長は少したじろぎ、軽く気圧されながらそう答えた。



「では依頼が終わったらまた来ますね」


「あ、ああ。よろしく頼みましたよ」



 拓海は隣の笑みを浮かべているが明らかに怒っている胡桃に冷や汗をかきながらも、何とか落ちついて軽く会釈し、笑みを浮かべながら拳を震わせている胡桃と共に黙ってその場を立ち去るのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それから、無言のまま足早に村を出て先を歩いていた胡桃が森に着くと振り返り、腕を組んで唇を尖らせ不満気な表情のまま拓海の方を向いた。



「あの言い方はないよね! 拓海、依頼を達成して絶対見返してやろうね!」


「ははは……。まあ、低ランクの冒険者だから仕方ないんじゃないか?」


「いいや、依頼を受けてくれた冒険者に対してあれは失礼すぎよ」


「まぁまぁ……胡桃が気に病むことはないって。早く行こうぜ」



 拓海は苦笑しながら自分のために怒ってくれた胡桃に感謝しながらもそう返し、しばらくして軽く作戦会議をした二人は森に入った。


 それから二人が森に入って痕跡を探し始めて数分が経ち、胡桃が突然地面を見つめて立ち止まった。



「見つけた……」



 拓海は覗き込むように胡桃が立ち止まってから指を差した地面をよく見ると、小さめの何かの足跡がついていた。何となく予想はついたが、一応胡桃に確認した。



「これはゴブリンの足跡か?」


「そうね。まだ新しいし、近くにいるはずだよ。ちょっと待って、気配を探るから」



 そう言って、静かに目を閉じて地面に手をつく胡桃に拓海は驚き小声で尋ねた。



「え、気配とかわかるもんなのか?」


「感覚さえ掴めばある程度わかるようになるよ。ふむふむ……あっち! 三体いる」



 そして、ゆっくりと目を開けた胡桃が差した方に二人は他のモンスターに悟られず見つからないように慎重にしばらく進んでいくと、緑色の小さな人型。剣と盾を持ったゴブリンが三体彷徨いているのを見つけた。


 二人が草むらで腰を下ろすと、胡桃は拓海を手で制して短剣を抜き放った。



「三体か……。じゃあ私が二体やるから拓海は一体よろしくね!」


「了解!」



 小声でそう言葉を交わすと、胡桃が先に飛び出してまず二体に腰のポーチから取り出したクナイを放ち二体の注意を引きつけたところで、拓海は遅れて草むらから飛び出した。


 拓海は長剣を腰から引き抜き一気に距離を詰めた。標的となったゴブリンは胡桃に気がとられ、遅れて拓海に気づいたようで唸り声を上げた。



「遅い!」



 ゴブリンが剣を上に振り上げた瞬間に拓海はゴブリンの懐に飛び込み、すれ違い際に叩きつけるようにゴブリンの腹を長剣で切り払った。すると、ゴブリンの身体の傷口から鮮血が飛び散り、唸り声をあげながら衝撃で後ろに少しよろめいた。



(くっ……浅かったか!)



 拓海は振り返って確認すると致命傷にはなりきらなかったらしく、ゴブリンは呻き声を上げながら振り返ると剣を握り直してこちらに走ってきた。



(ちょっと試してみるか……)



 それを見た拓海は腰から新たに短剣を抜き放ち、走ってきたゴブリンが振り下ろてきた剣に沿わせるように短剣を当てて落ち着いて剣の軌道をわずかにずらした。



(よし、いける!)



 拓海はそのまま短剣を捨てて、バランスが崩れたゴブリンに長剣を構え狙いをつけた。



「付加魔法 “氷”」



 拓海が魔法を詠唱すると長剣は冷気を纏った。そして振り下ろした長剣を、受け流されてそのまま前のめりに体勢を崩したゴブリンの胸に向かって、拓海は勢いよく突き出した。


 それに反応したゴブリンは苦し紛れに盾を構えて防ごうとしたが、拓海の長剣が纏ってる冷気が盾を氷つかせて、長剣はそのまま盾を貫通してゴブリンの身体を貫き返り血が拓海にかかり拓海は顔をしかめた。


 そして、長剣に胸を刺されたゴブリンは流石に耐え切れずにそのまま膝をついて前のめりに倒れて息絶えた。


 拓海の冒険者としての初戦闘は拓海の勝利という形で無事に終わって安堵の声を漏らした。



「ふぅ……」



 ゴブリンが再び動き出さないのを確認した拓海は頰についたゴブリンの返り血を手の甲で拭った。



(血……か。この世界ではモンスターとの戦闘で血を見るのはよくありそうだな。早めに慣れないとな……)



 ふと胡桃の方を見ると丁度向こうもちょうど戦闘が終わったところだった。



「流石だね拓海! やっぱり戦闘のセンスあるよ!」


「複数体を同時はちょっと厳しいかもしれないけどまあ一対一だったからな。それよりこれで終わりかな?」


「う〜ん、どうだろ? 奥の方にまだいるかもしれないね……。ちょっと見てくるから先戻っててよ!」



 そして森はそこそこ広いので結局、移動スピードが速い胡桃に任せて拓海は村に戻り始めるのだった。

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