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月華抄  作者: 葉月
6/21

月隠 五

 ひとの気配がする。

 うとうとと、夢と現の狭間でまどろんでいた桔梗は身じろぎした。

 起きあがろうにも身体がうまく動かない。日中さまざまなことがありすぎて疲れているためなのか。

 茵に横になったまま、意識を外に向ける。

 夕方の闖入者のこともあり、邸には結界を張り巡らせている。解術かいじゅするか、術をかけた者が死ぬかしなければ消えることはない。

 念入りに結界を張っておけば敷地内の大抵のことは術者に筒抜けになる。

 まだ頭がぼんやりとしている。それでも放っておくわけにはいかない。

 桔梗は邸に広がる結界の術と同調すべく集中した。

 邸の外にいるのは、知っている人物のようだ。気配に覚えがある。だが誰なのか判断がつかない。

 覚醒しつつある頭で、桔梗は気配の主を探ろうとした。

 夜半に旅立った忍が戻ってきたのかと思ったが、違う。彼はこんな風に足音をたてて歩かない。

 では瑠璃か玻璃――それも違う。ふたりは人ではないから眠る必要はないが、夜中に外へ出る用事もない。それ以前に、主人の眠りを妨げるような行動はしない。

 侵入者は寝殿へと近づいてきているようだ。

 桔梗の意識がその者を捉えた。

 それと同時に、結界の一部が熱を帯びはじめたのを感じた。

「……だめだ」

 止めなければ。

 だが桔梗の呟きも虚しく、邸の外でどすん、と音がした。

 続いて少年のうめき声。

 桔梗の唇が、誰かの名を口ずさんだ。

「……すまない」

 ここで謝っても相手には届かないのだが、反射的に口にする。

「だけど、お前も悪い」

 先に訪問を知らせる術を持っているのだから。

 いくつか独り言を言っているうちに、頭がはっきりしてきた。

 桔梗は起きあがると、身体にかけていた綿衣に袖を通す。薄暗い塗籠の中を難なく移動して扉を開けた。

 廂から簀子縁へ抜け、寝殿の中央に位置する階で立ち止まった。ここからは庭全体を一望できる。

「桔梗様。どうなさいました?」

 異変に気づいた瑠璃と玻璃が姿を現した。

 周囲を見渡さずとも探し人はすぐに見つかった。

 少しひんやりとした風が桔梗の髪をなびかせた。欠けた月の明かりを反射して、淡い光を放つ。

「……動けるか?」

 横たわる少年に、そっと声をかける。

 庭にいたのはひとりではなかった。正確には、人間ひとりと人ならぬモノが一体。

 伏せっている少年を取り押さえているモノが一声唸った。それは勝利宣言をしているかのごとく雄々しい。

 結界が反応したのは目の前に倒れている少年だ。蛇に全身を縛られ、亀の前足に押さえているので、身動きが取れないでいる。

 対侵入者用に結界を張り、四神を模した式神を敷地内の四方に据えた。四神のうち応じたのがこの式神だったようだ。

「戻れ、玄武げんぶ

 桔梗の命に応じて式神・玄武の体が光の粒子に包まれる。瞬時に、跡形もなくその姿が消滅する。

 重りとなっていたものが消えてほっとしたのだろう。横たわる少年の全身から、力が抜ける様子が見受けられた。だがぴくりとも動かず、遠目には作りの良い人形にも見える。

「すまない影明。起き上がれるか?」

 影明と呼ばれた塊が、ゆっくり右手を持ち上げた。大丈夫だという意思表示のようだ。しかし伏せったまま動かない。

 桔梗は手を貸すべく素足のまま庭へ降り立った。



「いやー……驚いた」

 しみじみと影明が呟いた。

 いつまでも外にいても仕方がないので、一行は寝殿へと移動した。

 室内を照らしている燈台の炎が揺れる。それにあわせて人影も揺らいだ。

「ごめん」

 桔梗が眉を下げてひたすら謝っていると、影明は慌てたように否定した。

「元はといえば、先に連絡しなかった俺が悪い。それに、今までが開放的すぎたんだ。術者の邸なんだから、このくらい当然だ」

 そう言ってもらえるとありがたい。

 桔梗は硬い表情を解いた。気持ちがやわらいだところで疑問を口にする。

「それで、こんな夜更けにどうしたんだ?」

 そろそろ丑三つ時のはずだった。黄泉と現世の境が曖昧になるときとされ、注意が必要な時刻だ。

 もっとも、不可思議な術を行使する者たちには、さほど脅威ではない。だが用心するに越したことはない。

「影明?」

 桔梗は、目の前に座る少年の様子がおかしいことに気づいて声をかけた。

 先ほどまで穏やかだったはずなのに今は渋面を浮かべ、影明は低く唸るように何かを呟いた。

「……なに?」

 声が小さすぎてよくわからない。

 再度訊ねようとする前に、影明が口を開いた。

「あんの狸爺! 次から次へと人に無理難題押しつけやがって!」

 声量は抑えているものの、影明は目を三角にしてがなった。握りしめた拳が小刻みに震えている。

 あぁ、いつものか。

 桔梗は思い至って苦笑した。

 入れ違いだったのかもしくは別室で課題をこなしていたのだろう。影明も玄翔の邸にいたらしい。

 影明はいずれ陰陽寮で働くことになるのだが、今は勉強の傍ら、兄弟子から頼まれた用事をこなしている。使用人とは違うのだが、役割的には似ているのかもしれない。

 彼の話しぶりから、相当こき使われたのだと推測した。

「やっと全部終わったと思ったら真夜中だし、帰ろうとしたらなんか気分が悪くなるし」

 少々頬を紅潮させ、眉をつりあげて、影明は不快だと言わんばかりな表情を浮かべている。

「邸に帰るよりも桔梗んとこに寄らせてもらった方が近いから来てみたら、忍はいないし式神にゃ潰されるし」

 一息に不満を吐き出してから、影明は今日は厄日だ、と肩を落とした。

 厄日の原因はこの邸の主にもある。

 何と声をかけたらよいのか……と桔梗が途方に暮れていると、影明はからからと笑った。

「だーからもういいって。替えの衣を貸してもらって、夕餉もご馳走してもらったし。いつの間にか気分もけろっと治ったし」

 玄武の一方的な攻撃――もとい、式神との激しい揉み合いで影明の狩衣は汚れてしまった。

 両親の形見だと玄翔に渡された品の中に、彼が今着ている狩衣があった。

 最初はそんな大事な物をと断った影明であったが、唐櫃にしまっておくよりも使った方がいいからと説得されて袖を通したのだった。

「……で、俺は邸に黙って入って桔梗を驚かせちまったから、これでおあいこ」

 白い歯を見せる影明につられて桔梗も少し笑んだ。

 お互い様とはいえ、客人に式神をけしかけた形になってしまったのだ。せめてもの償いにと酒を勧めると、影明は杯を手にした。

 側に控えていた玻璃がゆっくりとした動作で酒を注ぐ。

 白くとろりとした甘口の酒を口に運んでいた影明だったが、ふと思い出したように杯を置いた。

「ところで忍は? あいつがいれば何も問題なかったろうに」

 たしかに、真っ先に気づくのは忍だろう。

 彼が常にいるのは、表門にほど近い場所に設けた随身所である。変化に敏感な彼のことだ。門が開けば、たとえ眠っていても察知するはず。

 影明もそう考えていたため疑問に思ったようだ。

「お師匠の仕事で不在だよ。しばらくは戻らないかな」

 夕方の事件を含めて簡単に説明する。

「なるほど。だから結界強化してたって訳か」

 納得した風情で頷いた影明は、片膝に肘をのせて頬杖をついた。

「……にっこりしながら得体のしれない薬を差し出す門番に、自分の邸に四神を据える術者かー」

 影明は呟くように言い、杯を手にする。

「なかなか侵入しようとは考えないと思うんだが、度胸のある賊だな。……あぁでも誰が住んでるか知らなかったのかもなぁ。気の毒に」

 明るい声だが、目がどことなく笑っていない。

 それに気づいて桔梗は眉尻を下げる。

「忍も似たようなこと言っていた。……そんなに、怖いかな? この邸」

「いや、今のは半分冗談だ」

 ということは、残り半分は本音ではないか。

 桔梗が口を尖らせると、影明は悪びれもせずに笑ってみせた。

 元々の人懐こい顔つきと人柄をよく知っているので、彼から厭らしさは微塵も感じられない。

 それでも無駄と思いつつ影明をじろりと見る。しかし、あまり効果はない。

 仕方ないなぁ、と桔梗は表情を緩ませた。

 影明とは玄翔に弟子入りした時期が近いこともあり、昔から遠慮のいらない間柄だ。少々きつい物言いもお互い慣れている。

 玻璃が酒の入った瓶子を桔梗に差し出した。

 それを片手で断って影明を見つめる。考え事をしているのか、彼は視線を床に落としていた。

「俺が賊だったらさ、都中の情報集めて、侵入したくない邸のひとつにまずお師匠のとこを挙げる」

 幾分か真顔になった影明が言った。

「……お師匠様の邸は頼まれても嫌かな」

 呟くと、影明はうんうんと相槌を打つように首肯した。

「そうだろ? はっきり言って、得体の知れない術を使う得体の知れない爺さんになんか、近づきたくない」

 昼間の恨みがあるのだろうか。影明は本人が耳にしたら不快に思うであろう言葉を強調した。

 気持ちはわからなくもないので、桔梗は黙って彼の主張を聞いている。

「……怖いと思うのは、俺が術者の端くれだからってのはあるかもな」

 酒を飲み干して影明がぽつりぽつりと話しだす。

「同じ術者って立場だとさ、初めから手の内見せてるようなものじゃん。相手が自分よりも強いか否か、だいたい初見でわかるだろ?」

 目前の術者は己と互角か、あるいは、実力はどちらが上か。纏う気配で大まかに察することはできる。もっとも、相手が何枚も上手では、力量を計れず敗れてしまうのだろうが。

「あー……だったら、鈍感な奴は気づかないかもしれないか」

 影明はひとり納得した様子で頷く。

 何がと訊ねようとしたが、こちらの反応は特に求めていないようだ。

 少し顔の赤い影明の様子をうかがいつつ、彼が何を言わんとしているのか考えを巡らせた。

 鈍感の一言で片づけるのはいささか乱暴だ。しかし妖を視る力のない者は、真正面にいる物の怪と目があったとしても、まったく気づかないのだ。視えていないから。

 そんな風に気づかぬまま妖の棲家に足を踏み入れることも、あるかもしれない。

 おそらく影明も同じように考えたのだろう。

「人間しかいないと思ってた邸で妖に遭遇。うん、怖い」

 神妙な顔つきと口調がいささかちぐはぐで、桔梗は堪えきれずに吹き出した。

「影明、酔ってる?」

「……かもな」

 目は虚ろでひどく眠そうだ。たいして杯を重ねていないはずなのだが、疲れで酔いが早かったのだろう。

 影明は首を左右に動かして、

「そろそろ帰るか」

 立ち上がろうと腰を浮かせた。

「影明」

 慌てて呼び止めると、影明は首を傾げて座り直した。

「なんだ?」

「もう遅い。そのまま帰るのは危険だよ」

 素面ならばそのまま見送ったかもしれない。しかし今の僅かな動作で、足元がおぼついていないのがわかった。

 牛車はこの邸にはない。影明は徒歩で来たから、当然帰路も歩きだ。

 さらに、今の都には正体不明の幽霊が出るのだ。通常ならば心配はない。ないが、いくら陰陽師の端くれでも、今の状態の彼を黙って帰らせるのは憚れた。

「今宵は泊まっていけば? 場所はいくらでもあるから」

 式神ふたりと住むにはここは広すぎる。ひとりやふたり、急に増えても困ることはない。

 桔梗の提案を聞いて、影明の眉間に皺がよった。

「お前……。それ、あんまり、良くないんじゃないか?」

「わたしが貴人の娘ならば問題かもしれない。でも、今更な気がするけれど?」

 噂されることには慣れていると言外に告げる。

 影明は何とも言えない表情で黙りこんだ。

「ああ、影明が変な噂たてられたら困るね。忍がいれば良かったかな」

 玄翔の弟子の中で年齢が近く付き合いが長い三人は、幼馴染のような関係と言ってもよい。

 まだ右も左もわからぬ幼い桔梗と影明の面倒を必然的に見ることになった忍は、ふたりの兄代りでもあった。その彼がいればまた違っただろう。

「俺は別に、そんなの気にしない」

 小さく、だがはっきりと聞こえる声で影明が言った。

「桔梗様」

「っ――なに?」

 それまで口を閉ざしていた玻璃に突然呼ばれ、そちらに顔を向ける。

 真っ直ぐ桔梗を見つめる彼女の瞳に、一切の感情は浮かんでいない。

「こういったときは『心細いから側にいてほしい』が適切かと」

 がたん、と音がした。

 身じろぎした影明が目の前の膳を引っかけたらしい。

「悪い」

 短く侘びて傾いた膳を直している。幸い使用していた杯は空だったので被害は特にない。

 桔梗は咳払いをひとつした。

「玻璃。ここはもういいから下がりなさい」

「はい」

 頷き、玻璃は立ち上がった。そのまま静かに退出する。

 姿が見えなくなったのを確認して、桔梗はため息をついた。

 思いもよらないことを言われて動揺したのは影明だけではなかった。

 困惑気味に俯いて、桔梗は心の中でもう一度ため息をついた。鏡を見なくても顔が赤くなっているのがわかった。頬のあたりに熱を感じる。

 精神を落ちつかせようとして拳を握りしめる。手のひらに食いこんだ爪の痛さで沸き起こった動揺を霧散させた。

 横目でそっと影明の様子をうかがう。彼は真逆の方向に視線を泳がせていて、こちらの態度には気づいていない。

 桔梗は胸を撫で下ろした。

 落ちついたところで、玻璃について改めて思案する。

 普段何を考えているのか、玻璃を作った桔梗にもわからない。無口の反動なのか、時々こうして周りがぎょっとする発言を炸裂させる。

 瑠璃が裏で糸を引いているのだと何となく気づいているのだが、以前問いつめたときにはぐらかされ、うやむやにされてしまった。

「桔梗様の幸せのため!」――と言うのなら、心を乱す言動は止めてほしいものだ。

 一度深呼吸をして、桔梗は何事もなかったかのように声をかけた。

「影明。最近物騒だから帰りが心配だよ」

「……平気だと思うけどなー」

 向き直った影明の表情は、先ほどと比べはっきりしている。玻璃とのやり取りで度肝を抜かれて酔いは冷めてしまったらしい。

「玻璃が心細いと言ったけれど、そうじゃなくって、心強いってのはある」

「何だよそれ」

 しばし疑問符を浮かべていたが気づいたようだ。途端に影明の顔が険しくなった。

「そいつが気弱で報復を考えてなければ、二度と来ないだろうが……そんな後じゃ心配にもなるか」

 何が心配なのか、影明は察した。呟いてから黙してしまう。

「忍を送り出したのはいいけど、正直ひとりでどうしようかと思っていたんだ。瑠璃と玻璃は逃げることしかできないから」

 桔梗はそう言って目を伏せた。

 式神ふたりは戦闘向きではない。だから今まで行っていなかった結界を邸全体に張ることにしたのだった。

 己の術に自信はある。それでも、呪術に明るい賊を相手にしたときに、自分ひとりでどこまで通用するのか不明だ。報復とまではいかなくても、仲間を連れてくる可能性がないとは言い切れない。

「桔梗」

 不安げに瞳を揺らす桔梗の心情を悟ったのだろうか。影明は目を細めて桔梗の顔を覗きこむようにし、

「なにを言ってる。俺のこと散々な目にあわせといて」

 続けて楽しそうに口角を上げた。

 桔梗は反射的に目を上げた。

 きょとんとした顔で見返すと、影明は笑ったままだった。少ししてから真意に気づいて、同じように口元を緩めた。

「それは仕方がない。あれは侵入者用の結界なんだから。先に連絡をよこさないのが悪い」

 互いに顔を見合わせどちらともなく笑う。

 いつもの調子が戻ってきた。

 桔梗は肩の力が抜けていくのを感じた。

 こうして心が弱っているときの何気ないやりとりに救われる。

 ひとしきり笑ったところで桔梗は唇を引き締めた。

「心配なのももちろんあるよ。影明も大切なひとりだから。嫌じゃなければ泊まっていったらどうかな?」

 もう一度提案する。すると、影明の耳がほんのりと色づいた気がした。

「今から帰るのは、面倒くさい、かな」

 あれこれと考えを巡らせているのだろうか。影明は途切れ途切れに言葉を紡いだ。

「……うん、じゃあ、今夜は世話になります」

 ぺこん、と頭を下げられる。

 桔梗が命じる前に式神の動く気配が感じられた。ここからではふたりの姿は見えない。肩越しに振り返り、しばし様子をうかがっていたが、その後影明に向き直る。

 客人を迎える準備は瑠璃と玻璃に任せておけばよい。

「お前、明日の予定は?」

「明日? ……市に顔出して、その後は塗籠の中を見ようと思っているけど」

「塗籠ん中?」

 桔梗が頷く。

「そう。片付けなきゃならないんだ。どうやら先の住人が、ご丁寧にしまってくれたようで」

 含みのある物言いに、影明は察したらしい。渋面を作っている。

 式神ふたりが懸命に整えた邸内だが、実はまだ手をつけていない場所があった。

 それは西対の一角だ。内装は直したものの、塗籠の中に様々な物がしまわれていた。

 どうしましょうかと瑠璃に問われた桔梗は、目前の混沌とした空間を覗きこんで眉をしかめた。

 放りこんだ者は、後から必要な物はあるか確認する気はなかったのだろう。塗籠の中は、纏まった時間があるときでなければ手をつけられないほど、ぎっしりと埋まっていた。

 隙間に辛うじて身を滑りこませて、覚えのある行李を発見した。

 一度外に出て、扉近くに無造作に重ねられた書物を手に取って開くと、それは陰陽道に関わる内容だった。

 祖母は大雑把なひとではなかったので、勝手に住み着いていた荒くれ者が自分に必要ない物を塗籠に押しこんだのだろう、と桔梗は判断したのだった。

「それで、瑠璃と玻璃は何が必要か判別しづらいと思うから、明日は時間がありそうだし見てみようかと」

 中身が祖母の思い出の品ばかりとは限らない。以前の住人を知らない瑠璃たちだけに片付けを頼むのは気がひけた。

「じゃあ男手必要だろう。俺手伝うぞ」

「でも、影明も忙しいんじゃない?」

「へーきへーき」

 手をひらひらと振る影明の表情は明るい。

「出された課題はぜーんぶ済ませてきたからな。一日くらい休まなきゃ身体がもたない」

「手伝ってくれるのなら助かるけど……本当にいいの? 結構乱雑しているよ?」

 整頓しなければと思いつつも、今日まで引き延ばしてしまったのは、塗籠の中があまりにも魔境と化していたからだ。

 念を押すと、影明は任せろと言わんばかりに力強く頷き、

「なんか、面白そうだしな。宝探しみたいでいいじゃん。でなけりゃ思い出探し?」

 そう言って無邪気に笑う。

「思い出探し……。いいねそれ」

 たしかにそう考えれば楽しそうだ。

 塗籠の惨状を脳裏に浮かべ、正直鬱々とした気持ちになっていた桔梗は、ふわりと表情を和ませた。



 軽い音を立てながら、桔梗は引き戸を閉めた。

「んじゃ、帰るか」

 先に外に出ていた影明と並んで歩き出す。時折、左右に並ぶ物売りを冷やかしながら見ていく。

 一日のうち太陽が最も高く昇る頃、ふたりは市井へと足を運んだ。

 昨晩話したように、桔梗邸の塗籠にしまわれていた様々な物を一通り確認してから、ふたりは鬼の営むよろず屋へとやってきた。塗籠から出てきた物品を引き取ってくれないかと持ちかけるためだ。

 店主に快く了承してもらい、詳細は後日ということになり、桔梗たちは早々に小路を戻っていく。

 まだ片付けは終わっていないのだ。日が暮れる前にもう少し進めておきたかった。

「なかなか面白いもんだな」

 興味深そうに辺りを見回していた影明が言った。

「うん。洛外からも行商が来るから、珍しい物もよくあるよ」

 落ち着かない様子の影明に、桔梗は微笑んだ。

 初めて市井へ来たときは自分も同じだったと思い出したのだ。玄翔の邸にも珍しい物は多々あったが、呪術の書や吉凶を判断するときに使用する式盤など、大抵が陰陽道関係だったので、心が踊るほどではなかった。

 加えて、活気溢れる雰囲気が楽しい気持ちにさせるのだろう。最初は驚いたものの、今はこの喧騒がとても心地よく感じる。

 玄翔邸は常に緩やかな時間が過ぎていた。

 宮廷に出仕する者――特に陰陽師には冷静な判断力を求められる。邸内で騒ぎたてるのはご法度だった。

 だがそれは活発な子供には少々酷であった。影明いわく「息が詰まりそう」な場所というのもわかる気はする。

「このまま帰るのはちょっともったいない気がするけど、片付け終わらないと困るからな」

「また来ればいいよ、合間を見つけて。息抜きも必要でしょう?」

 夜は自身の邸に帰っているとはいえ、兄弟子たちに囲まれた生活は相当気が張るに違いない。

 桔梗がそう提案すると、影明は僅かに視線を落として小声で言った。

「そしたら、案内してくれるか? お前詳しそうだし」

「うん。市井も広いから見応えがあると思うよ」

「そりゃ楽しみだ」

 影明の顔が綻ぶ。その後も他愛もない話に花を咲かせていたが、不意に真顔になった。

「なあ、ここで仕事を請け負ってるんだよな」

「そうだけれど……何を今更」

 言わんとしている意図が掴めず、桔梗は眉をよせた。

 今の邸に移り住んだ頃に大体の話はしてある。言葉にしたとおり、何を今更聞いてくるのか。

「いや……よくお師匠が許可したなって思ってさ」

 影明の疑問は尤もだった。

 朝廷に仕える者が知り得る事柄を市井に漏らすことは当然禁じられている。天文道や暦道ならまだしも、呪術系は特に。

「わたしも、そう思っていたんだけれどね」

 桔梗は肩を竦めた。

「まだ陰陽寮に関わっていないし、これからも携わる機会はないだろうから大目に見てもらえたんじゃないかな」

 呪術その他の方法を誰かに伝授する行為は言語道断、と念を押されている。

 だから必要最低限の依頼しか受けていないのだと告げると、影明は神妙な顔つきになった。

「まあ、そうだよな。陰陽寮で働くのは無理だし、新しい仕事見つけるのも困難だろうしな。……貴族相手もな……」

 人脈があればどうにかなろうがそれもない。あるのは陰陽道の知識だけ。

「……そうだね」

 影明の言葉を引き継ぐようにして桔梗は呟いた。

「妖が凶事を持ちこんだと言われても困るから」

「……別にそんなの、お前だけじゃないさ」

「影明?」

「異能を持つ者は、どんな奴でも恐れを抱かれる」

 幾分か声音を低くした影明は、呼びかけにも応えずに歩みを早めてしまった。

 桔梗は少々面食らいながらも慌てて後を追う。

 小路から大路へと抜けた。都は入り組んでいるので、一度大路へ出た方が早いのだ。

 角を曲がったところに影明が立っていた。

「さっさと帰ろう」

 先ほど感じた仄暗さは微塵もない。

 桔梗は黙って頷いた。

 相手が話したくないのなら、無理に聞き出すのも酷だ。

 その後はとりとめのない話に花を咲かせながら帰路につく。

「……」

 ふと影明が口を閉ざした。

 彼の表情が微かに強張っている。一点を凝視して、瞬きも忘れているようだ。

「どうした?」

 微動だにしない影明の肩に触れようとして桔梗も気づく。

 宙の一部がぐにゃりと歪んだ。水面に波が立ったかのように、その部分だけ焦点があわない。

 歪みはやがて人の姿を形どった。

 ソレは雪を思わせる白い袿に身を包んでいた。裾にうっすらと花の模様が見えた。円錐状の花穂が描かれている。

 すぐそばで悲鳴があがった。

 桔梗たちの横を歩いていた行商の女の声だ。歯をがちがちと震わせて、少しずつ後ずさる。

 気がつけば、周りにはひとがいなかった。みな隅の方で縮こまっている。

「これが例の……」

 心のどこかで目の錯覚ではないのかと疑っていた。

 怪異など滅多に遭うものではない。様々な思念が渦巻く大内裏ならまだしも、この辺りは平民が多い。

 しかも今は昼間だ。話には聞いていたが、本当に日中から現れるとは思いもよらなかった。

 件の霊は、ただ歩いているだけだった。周囲に瘴気を撒き散らす訳でもなく、近くの人間にちょっかいを出すそぶりもない。一心不乱に歩いているだけだ。

 いや……と桔梗は考えを改めた。

 注意深く観察すれば、女の霊は時折辺りを見回すような仕草をしている。何かを探しているようにも見えた。

 そっと影明をうかがうと、視線に気づいたらしい。目が合った。

 音を発せずに唇を動かして、影明は何かを伝えてくる。

 意思を読み取って、桔梗は答えるように顎を僅かに引いた。続いて、ゆっくりと足を動かして影明から離れる。霊を中心に、影明の反対側へと移動した。

 害のないものは、たとえ妖でも手を出すことは許されない。この世は陰と陽、異なる二つが対立しながらも共存している。片方のみを消しては均衡が崩れてしまう。

 だが暴れ出したら話は別。いつでも対処可能なように神経を研ぎ澄ます。

 ふと甘い香りがして、桔梗は瞬きする。

 香を焚きしめるような雅な者は近くにはいない。

 桔梗がつい気を逸らしている間に、歩みを進ませていたソレが前触れもなく姿を消した。

 途端に安堵のため息があちらこちらから聞こえてくる。何もしないとわかっていても、アレは存在するだけで人々の不安を煽るのだ。

「ついこの間は八条の辺りだったってのに……六条でもか。どうなってんだ」

「おいあんた」

 男の呟きを聞きつけて、影明が声をかける。

「それ本当か?」

 どこかの邸の舎人とねりだろうか。褐衣かちえ姿の男は最初胡散臭げな顔をしていたが、影明の気迫に圧倒されて首を縦に何度も振った。

「あ……ああ、本当だ。その前は羅城門の辺りだったって話だ」

 桔梗と影明は顔を見合わせた。

 おそらく同じことを考えているのだろう、と桔梗は思う。

 羅城門から八条。そして今回は六条に姿を現した。件の霊は、少しずつ北上しているのではないか――?

 影明は厳しい顔をしている。

 北方へと続く大路を見つめて、桔梗もまた眉をひそめた。



「わ……っ」

 舞い上がった埃を吸いこんでしまった桔梗は、ごほごほと咳をする。

「大丈夫か?」

 涙を浮かべている桔梗の様子に、影明が声をかける。

 大丈夫だと答えるように数回頷く。――が、桔梗は耐えきれず両手で口元を覆いながら外へ出た。

 ひとしきり咳こんでようやく落ち着きを取り戻した桔梗は、ふたたび塗籠へと足を踏み入れる。長年閉め切っていたためか、中は湿った空気が充満していた。

 かび臭さに影明が顔をしかめた。

「まぁ、当然だな。放ったまま数年経ってるし」

 塗籠の中を見回して、影明は感想を述べる。

 無造作にしまわれていた品々を外へ運び出すと、言うまでもなく一般的な塗籠と変わらない。先ほどまで何があるのかわからない魔境のようであったのだが。

「あれはそのままでいいんだな?」

 影明が指差した。

 真横に位置する母屋。そこに塗籠の中身が並んでいる。

「うん。こちらはほとんど使用していないからね。よろず屋の店主が来るまで置いたままでいいよ」

 普段使用しているのは主に寝殿と東の対だ。住人は人間二人と式神が二体。たまに訪ねてくる者もひとりふたり。西の対を使わずとも充分な広さがある。

「んじゃ、残りも出すか」

「影明待った」

 腕まくりをする少年を止める。

 桔梗は真剣な面持ちで視線を巡らせた。

「……あとは並び替えるだけで大丈夫だと思う。お祖母様の持ち物のようだから」

 見覚えのある品ばかりだ。

 桔梗はそう断言した。

 塗籠の手前に置かれていた幾つかの品は、前主人である桔梗の祖母の所有物だった。それ以外は覚えがない。

 塗籠の中身をほとんど出すと、奥から以前に見た記憶のある家具類が現れた。

 隙間なくしまわれているように見えたのは桔梗の思い違いで、ぎっしりとしていたのは手前だけであった。奥はがらんとしていた。だが整頓など一切お構いなしに積み上げられたことは一目瞭然だった。

 二階棚の上に行李。そのまた上に行李を乗せ、さらに書物が重ねて置いてある。

 物置として使うならば、もう少しどうにかできたはずだ。無断使用とはいえ、前住人は何を考えていたのか……桔梗にはまったく見当がつかない。

「何も考えてないだろ」

 至極あっさりと影明が言った。

「あとで売り飛ばそうとか思ったかもしれないけど、邪魔だったからひとまず押しこんだって感じじゃないか?」

「そうかな」

「多分な。俺もよくやるし」

 影明がにやりと笑う。まるで悪戯が見つかった子供だ。

「それで、どこに何があるかわかるの?」

「自分で探しやすいようにはしてるぞ。他人からは大雑把な整頓にしか見えないかもだけど」

 言いながら、影明は一番上の書物類を退かし、やや不安定に積まれている行李を慎重に下ろした。

 床に置かれた行李の上部は埃で汚れている。手拭いで丁寧に拭き取って、桔梗はそっと蓋を開けた。

 中には衣類がいくつか入っていた。

 手に取って確認する。朧げながら記憶の隅に残っていた袿だった。

「何があった?」

 影明が桔梗の横に座り行李を覗きこむ。しばし考えてから目元を和ませた。

「……これ、ばあ様が好んで着ていたやつだっけか」

 浅縹色あさはなだいろの袿に触れて、影明は驚嘆する。

「懐かしいな」

 少々くたびれてはいるものの、綻びもなく綺麗な状態だ。

「賊が住みついてた割によく売り飛ばされず残ってたな」

「うん」

 桔梗は同感だと頷いた。

 質の良い物だ。単に気がつかなかっただけなのかもしれないが、売らずにいた賊に感謝したいくらいだ。

「……ん?」

 影明が手を伸ばした。行李から別の衣類を取り出す。

 広げたそれは小さめの千早ちはやだった。真っ白い布地全体に細やかな刺繍が施されている。

「これ、桔梗のか?」

「えっ」

 桔梗の肩が揺れた。

 幼い頃の思い出に浸っていた彼女は、一瞬惚けた顔をしていたが、

「違うと……思う」

 差し出された衣をまじまじと見て、自身なさげに答えた。

「なんでこれあるんだ?」

 困った桔梗の眉尻が下がる。

 行李の中には単衣と緋袴もあった。

 己が着た覚えはない。

 千早は巫女が身につける正装のひとつだ。なぜここにあるのか疑問が浮かぶ。

 祖母の邸には数える程度しか訪問していないが、巫女の血を引く者は身内にも知り合いにもいなかったはずだ。

 その旨を伝えると、影明も困り顔になる。

「じゃあ、こっちに来ていない間かもな。縁なんて意外なところから転がってくるもんだから」

「そうだね」

「……陰陽道の書物があるのも不思議だけどな」

 影明はちらりと上方を見やった。

 まだ開けていない行李の上に重なっているのは、桔梗の祖母にはおおよそ必要のない物だ。

「きっと、わたしが〝視える〟と知って集めてくれたんだと思う。只人でないことをひどく心配していたというから」

「視えるっていえば」

 いくらか声を低くした影明がぽつりと言う。

「さっきのあれ、なんなんだろうな」

 大路に出現した女の霊のことだ。

「うん……」

 言葉が見つからず、桔梗は曖昧に返事をして黙した。

 長き年を経て魂を持つ付喪神つくもがみの類とは違い、霊体は非業の最期を遂げるなど、その者に心残りがある場合に現れやすい。

「あれは、人間じゃなさそうだけど」

 桔梗はきょとんとした。

「どうして」

 そう思うのか、と続けようとして口を噤む。

「何に見えたんだ? わたしには人の霊にしか視えなかった」

 影明は手を止めて考えこんだ。眉を寄せ時折唸り――しばしそうしてから、桔梗と視線を合わす。

「精、かな。あえて言うなら。人の匂いがなかった」

「精……精霊か」

「俺がそう思っただけだからなー?」

「いや、影明の視る力は確かだから。間違いないよ」

 言い切ると、影明は照れたように鼻の頭を掻いた。

 影明の妖を視る能力はどの兄弟子たちにも勝る。もっと経験を重ねれば、師匠である玄翔をも凌ぐ陰陽師になるかもしれない。

「でも、アレが何の目的で彷徨っているのかはわからないからなぁ」

 相手が影明の言うように精ならば理由はまったく思いつかない。動物でも人間でも、霊であれば突き止めることも可能なのかもしれないが。

 霊が現れる原因は、大抵怨みだ。

 しかしそれは想像にすぎない。今のふたりにはどうすることもできないのだ。

「とりあえず、お師匠の判断を待とう」

 影明の提案に頷く。

 大路での出来事を文にしたためて、桔梗は玄翔に使いを出した。介入が必要とあらば何か指示がくるだろう。

 ひとまずこの話は終わりにして、桔梗と影明は片付けに専念することにした。

 影明が床に下ろした行李の中身を、身内の桔梗が確認していく。誰でもわかる書物などは影明に任せ、分担作業で事は順調に進んでいた。

 これならば今日一日であらかた終わるだろう。

 そう考えていた矢先に、

「桔梗っ」

 切羽詰まった影明の声が聞こえた。

「なに?」

 桔梗がそちらを向くと、慌て顏の影明と積み上げられた書物がこちらへ向かって崩れる様子が視界に映った。

 反射的に目を瞑り、落ちてくる書物の衝撃に耐えようとする。

「いてっ」

 物が落ちる音が聞こえたが、頭や身体に衝撃はなく、代わりに背中を軽くぶつけた痛みが広がった。

 桔梗がそろりと目を開けると、影明の後ろに天井が見えた。彼が身を挺して庇ってくれたのだと瞬時に気づく。

「怪我はないか?」

「背中を少しぶつけたけど……」

「わりぃ」

「いや、ありがとう。影明こそ怪我してない?」

 互いに相手を気遣っていると、衣擦れの音が近づいてきた。無駄な動きが感じられない規則的な音だ。

 邸には、桔梗と影明の他は今ひとりしかいない。

「桔梗様。大きな音がしましたが――」

 開け放たれている扉から瑠璃が顔を覗かせた。

 目があった。

 桔梗は床に仰向けに転がったままだ。端から見れば押し倒されたのだと思うだろう。

 別段驚く様子もなく、瑠璃は右手を頬にあてて、ほぅ、と吐息を洩らした。

 それから桔梗と影明を交互に見やり、

「ごゆっくり」

 にっこりと笑う。

 それ以上何も言わず、瑠璃は「うふふ」と笑いながら姿を消した。

「え……瑠璃!」

 今度は衣擦れの音が遠ざかっていく。

 予想もつかなかった瑠璃の言動に呆気にとられていると、どこからか吹き出す声がした。

 声の主は影明だった。桔梗から顔を背け、肩を震わせている。笑いを堪えきれなかったようだ。

「影明」

 少々声を荒げて名を呼ぶが、影明はあっけらかんとしている。

「わ、悪い……あんまりにも情けない顔だったから」

 悪いと言うが笑うことを止めない。

 ひとりで慌てているのが馬鹿らしくなった桔梗も口元を緩ませた。

「立てるか?」

 差し出された手を掴み起きあがる。

 丁度そのとき、風切り音と共に黒い塊が塗籠へと侵入してきた。

「なんだぁ?」

 それはふたりの頭上をしばし旋回すると、桔梗の手に収まった。

 塊は鳥だった。正確には鳥を模した式神だ。纏う気配はよく知っているもの。

「お師匠のか」

 影明も気づき呟いた。

 鳥は瞬く間に文へと変化した。

 折りたたまれた文を開き目を通す桔梗の眉間に皺がよる。

「お師匠の用件って、あれか?」

「たぶんそうだと思うけれど」

 曖昧に返事をして、文を影明に渡す。

 用件は短くしたためられていた。

『桔梗と影明、すぐに来るように』

 たったそれだけなのに、文から厳格な雰囲気が伝わってくる。

「……なんで俺がここにいるって知ってんだよ」

「さぁ。玻璃が話したんじゃないかな」

 大路の様子を書き綴った文を持っていったのは玻璃だ。影明はいるのかと訊ねたのかもしれない。

「聞かなくても弟子全員の居場所把握してそうだけどな」

 影明は言いながら立ち上がり、堅苦しいからと着崩していた身なりを正す。

「急いだほうがいいね」

 口元を引き締めて、桔梗は塗籠を後にした。

 大路での騒ぎと関係しているのか今はわからない。しかし状況に変化が生じたのだと悟った。

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