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第9話 視線

「サカイ。私も入っていい?」


裸で浴室の扉を開けたホミ。

突然の事に困惑しているうちに、沈黙を肯定と受け取ったのかホミが入って来る。

そして、シャワーで軽く身体をすすぐと、隙間に入り込むように浴槽に浸かってきた。


「「………」」


2人で浴槽に肩まで浸かろうと思うと、どうしても向かい合う形になる。

溢れるギリギリのお湯。

いや、ホミが入ってきた時の揺れで少し溢れている。

けど今はそんな事どうだっていい。


(ホミの…裸……!)


特別意識することなんてない、同性の肉体。

それが今は…突然お父さんがお風呂に入ってきたかのように、過剰に反応してしまう。

けどそれを悟られないように、必死に平静を保ってホミの顔を見る。

ホミは何でもなさそうに私の顔を見つめていて…なんだか気まずい。


と言うか、私ホミにこんな風に見られるような事したっけ?

心当たりがあるかと聞かれれば…心当たりしかない。

でも、心当たりがなくてもこうして見られるのは不思議じゃないと私は思ってる。

ホミにとって私は、自分の知らない世界に住む人間だ。

気になることは山ほどあるはず。


「サカイ…胸おっきいよね」

「え?あっ、うん……でも、ホミも負けてないと思うよ」

「そうかな?サカイのほうが大きいと思うけど…」


会話の中で視線が下に下にと落ちていき、やがてジーッと胸を見つめ合う。

私と同じで、同世代の女子よりも大きい胸。

E…いや、私と同じFくらいありそうだ。

この存在感の主張の仕方はそうだと思う。


「…比べてみる?」

「比べるって、どうやって?まさかえっちな方法で……!?」

「いや、普通にメジャーで測る」

「……サカイのバカ」

「逆にホミは何を想像してたのさ……」


ホミが想像していたことは…まあ、無かったことにして、胸のサイズを測るか少し考えてみる。

こういうのは…白黒ハッキリさせずお互い色々と考えられる余地があったほうがいい。

…これでホミのほうが大きかったら私がショックだし。


「ま、まあ胸はいいとして…サカイはいいよね、すごく細身でこう…モデルみたい」

「そうかな?今にも倒れそうな、栄養の足りてない身体だと思うけど…」

「まあ…言い方を変えればそうかも。でも、私みたいな筋肉が見える身体よりは…その、女の子らしくていいと思うよ」

「女の子らしい、か…最近はそういう言葉も男女差別だ!ってうるさいからね。でもまあ、言いたいことは分かるよ。ありがとう」

「そうなんだ…都会は大変だね…」


ホミは苦笑いを浮かべる。

自分の想像する都会と実際の都会のギャップを極わずかでも知れたからだろうか?

けど…私にとって重要なのはそこじゃない。


(モデルみたい、か…)


…自分だって、少しはそう思った事がある。

けどそれは自惚れで……コンビニで目に入った、スタイルを売りにしている女性たちは凄かった。

そもそも、あの人達はそれで生きていくために並々ならぬ努力をしている。

言い方は悪いかもだけど、体を売っているんだ。

つまり、金銭を貰っていると言うこと。

自分の体は生命線。

それで生きていくと決めた彼女らと…何もしていない、する気がない私が同じな訳が無い。


けど……


(モデルみたい……こうして褒められると、やっぱり嬉しい…)


私と彼女らを比べるなんて、ましてや『モデルみたい』と同列視するなんて……

その人達に失礼だし、到底及ばないモノと比べられて私も傷ついてきたはずの言葉。

ホミに言われると、嬉しかった。


「…ホミに褒めてもらった事だし、私もホミのことを褒めようかな」

「え?なになに?」

「ホミの体も、すごく良いよ。無駄がない。きっと毎日色々と働いているから、その分筋肉がついたんだよね」

「まあ、ね…」

「私はうらやましい。私の体なんて…太ってないだけで、不健康そのものだよ?ろくに食べないし、ろくに運動しない。…まあ、それでもどういう訳か体形は良いんだけどさ」

「え?自慢?」

「そ、そう言うつもりじゃないんだけど……と、とにかく!ホミの体は無駄な肉は無いし、健康体を維持出来るだけの筋肉がある。私が、良いなぁって思える体だよ」


ホミの体の事を、私の思う素直な感想で褒める。

そして最後に私よりも少し太い腕に触れてみると…私と違い、確かに筋肉を感じる。


「…ありがとう」

「どういたしまして。私の事も褒めてくれたんだから、ホミも褒められるべきだと思っただけだよ」

「…それでも、すごく嬉しい」


ホミはゴソゴソと動いて体の向きを変えると、私の方に迫ってきて……


「ほ、ホミ…!?」


そのまま抱き着いてきて、お互いの胸が触れ合って潰れる。

心臓が今までに無いほど激しく脈打ち、身体がどんどん熱くなっていく。


「あったかいね。サカイの体」

「ちょ、ちょっと…!大胆過ぎるって…」


えっちだ…あまりにもえっち過ぎる。

なに?

田舎ではこうやって裸を見せ合うのも、裸で触れ合うのも普通なの!?


「…都会だとこれが普通じゃないの?」

「はぁ?」

「いや、キスくらいのスキンシップが普通なら、気を許しあった相手ならこれくらいするのかなって」


……うわああああああああ!!!

て、適当な理由をつけてキスしたことを誤魔化したのが裏目に出た!

こ、こんなの全然普通じゃないし、友達同士でもこんなのしない!

こんな事をするのは恋人くらいで、でもこうしてドキドキしてるのはどういう感情の―――


「…サカイ?顔が赤いよ」

「あ、あぅ…」

「え?大丈夫?そう言えばさっきからずっとお湯に浸かってたよね…のぼせてない!?」


慌てたホミが私の前髪を捲り上げ、額をくっつけてくる。

ホミの顔が目の前にあって、視線を落とせば胸が見えて、額は触れ合ってて……しかもお互い全裸で…

も、もうこんなの実質セッ―――――


「あ、あぅあ……ブクブクブク……」

「ちょっ!?サカイ!?ヤバい!!?」


興奮で頭に血が上り…更にずっとお湯に浸かっていたために体は熱々。

ヒートショック?か何かを起こしたのか、ほぼ意識を失った状態になって溺れそうになり、ホミに必死に救助されて事無きを得た。










「う〜ん……ぅん?」


頭の熱がようやくマシになり、正常な思考力が戻ってきた。

視線を感じてそちらを見ると……ホミが私の胸をガン見している。

私の体はというと…全身が収まるほど大きなタオルを下に引いて、その上に裸のまま寝かせられている。

もちろん、掛け布団ならぬ掛けタオルがあり、身体がエアコンの冷気に当てられて冷え過ぎる事はない。

けど…私の体の輪郭はなんとなく分かるみたいだ。


(あっ、おっぱい触ろうとしてる)


ホミはまだ私が意識を取り戻した事に気づいてないらしく、私の意識が無いことを良いことに胸を触ろうとしているのだ。

どうしよう…このまま寝たふりをしてたら触ってくれるかな?

それとも罪悪感から手を引いてくれるかな?

少し気になって目を閉じ、触れられないか肌の感覚に意識を向ける。


……まあ、流石に触ってきたりしないだろう。

いくら激しいスキンシップが都会の普通だと勘違いしているとは言え、寝ている人の胸を触るのは違う。

普通にセクハラ…と言うか痴漢?

まあ訴えたら勝てるくらいの犯罪に相当するだろうし、流石にね?


ホミもそこまではしないだろうと安心しきって、何事もなく目を覚ました風を装おうとしたその時…


「ひぅっ!?」

「――っ!?」


胸を鷲掴みに……そう、ツンツンと触れるとか、優しく揉んでみるとかではなく鷲掴みにされた。

反射で目を開けなかったのはファインプレーだと思う。

もしこのまま目が合ってたら、私たちの関係がこの上なく気まずいモノになっていたはずだ。

私が悲鳴をあげた事でホミの手は離れている。

このまま、触られた反射で変な声が出ただけって事にして寝たふりを続けよう。そうしよう。


「……起きてる?」 


ホミが声を掛けてくる。

気付かれたかと思って、心臓が高鳴るが…必死に我慢する。

決して動かない…このまま耐えるんだ。


すると、私が起きているか疑ったホミは鼻をつまんできた。

…それで起きたことにしてやろうか?

いやでもそれだと勘違いされそうだし……

ここは我慢。

…でも、ずっと耐えるのも変だ。


「……んん」

「っ!?」


それっぽく嫌がる素振りを見せて、ホミの確認から離れる。

するとホミはそれ以上私を試すような事はしなくなった。

けどその代わりに…


「んっ……ぅ……んん…」


私が寝ているフリをしていることを良いことに(気付いてはいないと思う)、胸を当たり前のように揉み始めたのだ。

恥ずかしいし、揉まれるたびに変な声が出て…意識してしまう。


それでも耐えて、ホミの好きなようにさせてあげていると……流石に罪悪感を感じてきたのかホミは離れてくれた。

そしてホミが部屋を出て行ったのを見計らって身体を起こすと……


「少しだけ……」


ホミに触られて、ムズムズ…と言うか、ムラムラする胸を自分から揉んで、自分を慰めた。







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