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晴人と翔

【前書き:これまでのあらすじ】

流刑の島「奇渡ヶ島」。七つの「国」が覇権を争うこの島で、真司シンジたちは「アヘン工場の破壊」と「ケシ畑の焼き払い」という極秘作戦を計画する。


隠密のKUROは、敵のナンバー2である大内を調略すべく、伝説の焼酎を手に接触を開始。一方、作戦決行までの期間、真司、翔、晴人、そして夫婦である圭太と唯の5人は、AOIによる過酷な修行に身を投じていた。


ラグビーで鍛えた肉体を武器にする真司、意外な才能を見せ始める翔、そして焦燥を抱えながら食らいつく晴人。それぞれの想いが交錯する中、一週間の猶予は刻一刻と過ぎていく。

独露のアジトでは、AOIによる修行が開始された。


「そんじゃ、まずはお手並み拝見でこの酒の瓶を砂時計の砂が落ちるまでに私から奪ってみな」  

そう言って、AOIは足元の木箱に酒の瓶をしまう。


「では、30数えたら開始するぞ。1、2、3……」


AOIがカウントを始めると、真司と独露たちは森の中へと走って行く。


「28、29、30、よし」

AOIは数え終わると砂時計を裏返して木箱の上に座り、腕を組んで静かに目を細めて、周囲の音に神経を尖らせる。


森の中、圭太と唯はここでも一緒に行動していた。

「唯、俺たちで速攻終わらせてやろうぜ」

「おう、おとっちゃん頑張ろ」

「でだ。俺が囮になってAOIを木箱から引き離すから、その隙に唯が奪う作戦なんてどうよ」

「良い作戦だね~」

「名付けて俺が囮になって唯が奪う作戦だ」

「よ~しAOIの鼻を明かしてやろうぜ~」


作戦決行のため、ギリギリまで木箱への接近を試みる二人。

「あれ?AOIが居ないよ」  

木箱の見える位置まで近づくと、AOIの姿がないことに唯が気付く。


「あいつしょんべんにでも行ってんじゃねえかハハハ」  

と言った瞬間、背後にはAOIが立っていた。

秒殺で縛られる二人。


「はい二人確保!お前らもっと慎重に近づけよ。近寄って来たのがバレバレなうえに、私の存在にまるで気付かないもんな」

あまりにも簡単に捕まってしまい、しょげる二人。


再び木箱に腰を掛け、目を細めるAOI。

砂時計の砂が三分の二ほど落ちてきた頃、AOIの目が軽く開き、目線で周囲を見渡す。


するとAOIが突然走りだし、森の中に入って行く。

森に入った瞬間、逆側の森から晴人が飛び出し、木箱に向かって勢いよく走って来た。  

晴人が木箱にたどり着きそうになったその時、森の木の上からAOIが飛び降りて晴人の前に着地。

素早く晴人を拘束した。  


悔しがる晴人。

「お前、最初からあそこに居て圭太を確保してる時には、出てくるの躊躇ったろ。AOI様にはお見通しだぜ、ハッハハ~」


それを見ていた真司が、森からゆっくりと姿を現す。

「もしかしたら僕もバレてましたか?ずっと見てて分かりました。僕に出来るのは実力行使です」  

そう言って身構える真司。


AOIはそんな真司を見て目を細め、睨みながら手のひらを上に向けて「来い」の合図で挑発する。

「そんじゃ遠慮なく行かせてもらいます。うお~~」  

勢いよく木箱に直線に向かう真司。

AOIも真司に向かって走り出す。


真司が華麗なサイドステップでAOIをかわした途端、AOIが転倒した。

「痛って~」  

大きな声で痛がるAOI。


真司が振り向く。

すると、目の前にAOIが……。

AOIは一瞬の隙に真司を拘束した。


「やられた~」  

悔しがる真司

だが……AOIの目線は瓶の入っている木箱に向いていた。  

木箱の前には、翔が立っていた。


「やっべ~」

AOIが木箱に向かって走りだす。翔が木箱に手をかけた、その時……。  

無情にも砂時計の砂が落ち切った。


「うあー危なかった。私に気付かれずに木箱に辿り着くなんて、やりやがるな翔

やはり、実戦でKUROに鍛えられてるだけはあるな」


「おいおい!アイツすげーな」

「うあ~翔すっげー」  

圭太と唯が驚く。


真司が翔に走り寄り、肩を叩いて称える。

「翔さん凄いっす」


そんな中で、晴人は一人だけ悔しそうに俯いていた。


落ち込む晴人をよそに修行は続く。


「よし、つぎは、木登りの往復20回だ!いけー!」


AOIの号令と共に、皆が木によじ登る。

しかし、唯が木の下でうずくまってしまった。

「唯、どうした」

圭太が心配して駆け寄る。


「うん、大丈夫。だけど疲れたのかな……うっ……おえっ……」

吐き気をもよおす唯。


「おい大丈夫か。今日は、もういいから休んでろ」


AOIは、唯の様子を見て、修行から外した。

「ずっと緊張続きだったから、疲れが溜まっちまったかな。まあ休むのも必要かもな……。

そんじゃ、お前らは木登り再開だ!」


「えー! みんな休みじゃねえのかぁ~」

一瞬期待した圭太が残念がる。

その日から唯の修行は、変装の練習、心理学や毒物の知識などの座学中心に変更された。


そんな日々の修行の裏で、静かに、そして確実にKUROによる大内の調略が繰り返されていた。


4日目の修行が終わると、AOIから翔に指示が出る。


「翔、KUROがお呼びだ。急いでKUROの元へ行け」

「はい」


「KUROから直々の指名なんて、やっぱすげーな」

圭太が驚く。


「本当にKUROさんから認められるなんて、翔さん頑張って下さい。でも命だけは、大切にしてくださいね」

真司が心配そうに話しかける。


その様子を横目で見ながら、晴人は一人黙ってアジトに戻っていく。その手は固く握られ、僅かに震えていた。


その夜、KUROと翔は中心部の外れの住宅街を歩いている。


とある家の前でKUROが立ち止まると、その家のドアを軽くノックした。

「うん、大丈夫そうですね。翔さん、開けられますか?」

翔は小さく頷き、懐から針金を出して鍵穴に静かに差し込んだ。

カタカタ……カタ……カタ……ガタン……ガコッ。

鮮やかにドアを開ける翔。


「おー、素晴らしい」

そう言いながら小さく拍手をするKUROだが、

「開けられたのは素晴らしいですが、次はもっと早く、そして音を立てずにやりましょう」


「はっ、はい」


「では、お邪魔しましょう」


そう言って入って行ったのは、例のアヘン工場だった。

KUROの手の中で、ガラスの小瓶が静かに光っている。


【機密情報:奇渡ヶ島・裏ファイル】


晴人:

「……クソッ、なんで俺じゃないんだ。

誰かの役に立ちたいなんて、今まで一度も思ったことなかったのに。

翔の背中が遠いのが、たまらなく悔しい。みんなに必要だって思われたいんだよ、俺だって……!」


KURO:(闇の中から現れ、光る小瓶を弄びながら)

「……おや、人を想う心は毒よりも厄介ですね、晴人さん。


読者の皆様。作者のメモには不穏な一筆がありました。

『このメンバーの中から、一人が脱落する』。


それが何を意味するのか……。

次回、潜入のアヘン工場。私の『仕事』が始まります。


彼らの熱い想いが無慈悲な現実に潰されないよう、心配な方はぜひ**【評価】や【ブックマーク】**で彼らを照らしてあげてください。それが唯一の標になるのですか

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