花笠にてPART2
恋人の罪を背負い、罪人の島「奇渡ヶ島きどがしま」へ流された元ラガーマン・大神真司。
彼は奇度ヶ島七国の一つ「白狼はくろう」の幹部・阿吽あうんの猛攻を耐え抜き、さらには白狼の長・銀ぎんや元薬剤師のさなえが仕掛けた残酷な「毒薬ゲーム」をも自らの命を懸けて突破する。
その過程で、独露どくろの面々や隠密・KUROたちと確かな絆を築いた真司は、その覚悟を認めた銀の命を受け、島を蝕む薬物「アヘン」の供給源を絶つ任務に就くこととなった。
アヘンの出処は、島の中央に位置する国「イルーサリ」。
一か月に及ぶKUROの地獄の特訓を経て、潜入作戦を開始した一行は、道中で出会った運び屋コンビ、クリスと誠の協力や隠密・AOI、HAKUの支援を受けながら手分をしてケシの畑と工場を探し当てたのだった
砂埃を上げて、馬車が猛スピードで走って来る。
花笠の前で砂を巻き上げて停まる
「おーまだやってるぜ良かった」
「気分転換にパ~っとやろうぜクリス」
「OH YES LETS GO」
そう言いながら店に向かって走る二人。
「なんで英語なんだよー」
「いやなんとなくノリ」
「ハハハ見た目に反して英語なんて話せねえくせにぃ」
「しゃーねえだろ、こちとらアメリカ人の親父なんて写真すら見せてもらえてねえんだ」
そして花笠に駆け込む。
「おーナナちゃんまだ平気かい?」
クリスが店員のナナに声を掛ける。
「あらそろそろ閉店だけど……」
そう言ってナナが葉子の方を見ると、
「やかましい二人組かい、良いよでもあんまりゆっくり出来ないけど良いかい」
「まあしゃーない、ありがとうママ」
誠がお礼を言い、ナナが席へ案内する。
「どうぞ、しかしクリスさんと誠さんていつも楽しそうね」
「葉子ママは、やかましいってよ~」
クリスが舌を出しながら葉子を見る。
「あんたのそれがやかましいってんだ」
一本取られたと肩をすぼめて、舌を引っ込めるクリス。
そしてクリスは、カウンターから自分たちのボトルを受け取る。
葉子は、渡しながらつまみの注文を聞く。
「つまみは、どうすんだい」
「腹減ってるからいつもの野菜炒めちょうだい、誠は?」
「あー俺も野菜炒、あと御新香、やっぱ葉子ママの新香が一番うまいんだ」
「あら嬉しい事言ってくれんじゃないの」
葉子が上機嫌で、いつものように手際よく料理を作る。
「はいよ野菜炒め2人前ね」
野菜炒めが出来上がったころだった。
「こんばんは、一人なのですが……」
「あら、もう閉店間際なのごめんなさい」
ナナが断ろうとすると、葉子がカウンター越しに来客した男の顔を確認した。
「あら昨日の方かね、ナナちゃん良いよ通してあげて」
そう言ってカウンターに案内する。
来店した男を見て、誠がクリスに男を見るように目配せをする。
クリスが男を確認する。
「あっ、夕方のパン屋のやつじゃねえか」
「ああ、あの紙袋を持ってるぜ」
来店した男は、KUROだった。
KUROはカウンターに座ると、紙袋を隣の席に置く。
「閉店前にすいません、取り合えず水割りと……」
誠の食べている御新香を見て、
「御新香がおいしそうだ、それを下さい」
「はいよ」
葉子が水割りを作りながら、
「もうそろそろ閉店なんでね1、2杯しか飲めないが良いかい」
「こちらが遅い時間に来てるんで構いません。では、これは、次回にしましょう」
そう言って、紙袋から一本の焼酎を取り出してカウンターに置いた。
「これ、とっても貴重な物なんです。せっかくだから雰囲気の良い店で飲みたいと思ったのですが」
それを見て、葉子が目を輝かせる。
「これってあんたもしかして、ここで最初に作った焼酎かい?」
「はい、たまたま手に入りましてね」
誠もその焼酎に興味津々だ。
「おい誠そんなに貴重なのかあの酒って」
「ああ10年前、この島で醸造した最初のロットの焼酎さ、空き瓶だけでも5000銀貨はするぜ」
「マジかっ!てことは、中身入りは…」
「値段つかねえよ、何でパン屋からあんなもんが……」
小声で話すクリスと誠の方へ、KUROが視線を向ける。
その視線は、仕事の邪魔だと言わんばかりの目線、そしてプロの殺気がこもった冷徹な目線だ。
それに気付いたクリスと誠は、身震いと共に彼が只者ではないと悟る。
「さ~てクリスいい具合に酔ったし腹もいっぱいだ帰るとするか」
「そっそうだな、帰ろう、ナナちゃんお会計ね」
そう言って、そそくさと花笠を後にした。
外に出たクリスと誠。
「いやー何者だアイツ」
クリスが言うと、
「しかし、やべー奴には、ちがいねえ。触らぬ神に祟りなしってな」
「間違いねえや」
そして馬車を走らせると、その横を通り過ぎて花笠に一人の男が入って行った。
「おい、あいつ」
入って行った男を見てクリスの表情が曇ると、誠が答える。
「ああ、腹心の大内だな」
「あーあ何だか今日は、ろくなことねえな」
「まあ宿で飲みなおそうぜ」
不貞腐れたクリスを誠がなだめながら、宿へと帰って行く。
そして花笠に大内が入って行くと、葉子がKUROに話しかける。
「すまないね、今日は、もう閉めるからそれ飲んだらね」
KUROは、静かに頷く。
「ナナちゃんもそこ片付いたら上がってな」
そんなやり取りの中、大内はいつものカウンターに座る。そしてカウンターの焼酎を見て驚く。
「葉子それって……」
「ああこちらのお客さんがね持って来たんよ、しげちゃん懐かしいだら」
「すまねえがちょっと見せてくれ」
大内が言うと、KUROは笑顔で焼酎を手渡す。
大内は目に若干の涙を浮かべながら、その焼酎を手にじっくりと眺めている。
「まさか中身が入ったまんまで残ってるなんて……あんたこれどこで手に入れたんだ」
「私は、古美術商をやってまして島を渡り歩きながら珍しいものを集めては売ってましてね、こちらは、私のお客様が持っていた品物を譲っていただきました」
「あんたそれ俺に譲ってくれねえか」
「たいへん申し訳ありません、これ私が個人的に楽しもうと思ってましてね」
それを聞いて残念がる大内を見て、KUROが提案する。
「ではどうでしょう、差支えなければ、今夜ご一緒にいかがですか」
KUROの提案に大内は喜び、KUROの手を握り目を輝かせた。
「いいのか、じゃあ葉子コップを出してくれ」
その晩、大内は散々とこの酒を造ったころの話を何度も何度もKUROに話した。
そしていつの間にかカウンターに突っ伏して寝てしまった。
翌朝、独露のアジトにはAOIの姿があった。
「工場の破壊と畑の焼き討ちは、一週間待てってKUROからの指令だ
そんで、国への報告はHAKUが行ってるからお前たちには、しばらく私が修行を付けるぞ」
「えーゆっくり出来るんじゃないのお」
唯が愚痴を垂れる。
「また修行かよ~」
圭太もしょげながら言うと、AOIが怒る。
「ばっきゃろーまだまだ未熟なくせしやがって、私も甘くないからな覚悟しとけよ」
そんな中に、翔が向こうからやって来る。
「KUROさんからしばらくこっちで一緒に修行しろって」
「翔も一緒かやったー」
真司と独露たちの喜びもつかの間に、AOIの厳しい修行が始まる。
【機密情報:奇渡ヶ島・裏ファイル】
ナナ:
「……ねえ、ママ。昨日のお客さん、一体何者だったの? クリスさんたちが慌てて帰っちゃうなんて普通じゃないわ。それに、あの後にいらした大内様が、あんなに子供みたいに……懐かしそうに笑うなんて」
葉子:
「……あのお客さんかい? 私も長く商売やってるけど、あんなに『底が見えない』男は初めてだよ。丁寧で物腰は柔らかいのに、時折見せる目が、まるで氷みたいに冷たくてね。でも、あの伝説の焼酎を出されたら、私ら島で生きる人間は抗えない。……彼をあんな顔にできるのは、きっとあのお酒だけだったんだろうね」
KURO:(空になったボトルのラベルを静かになぞりながら)
「……おやおや、お二人とも。少し話しすぎですよ。酒場の夜というのは、秘密が溶け込むからこそ美しいのです。
読者の皆様。
大内さんの心を解いたのは、懐かしい酒の香りと……ほんの少しの『言葉の誘導』。計画は一週間の猶予を得ました。ですが、その時間は、決して安らぎのためにあるのではありません。
作者さんのメモには、**『修業の汗と、裏切りの杯。静かに、しかし確実に、決戦の天秤が傾き始める』**と記されています。
自分の信念を貫こうともがく真司さんたちと、闇の中で静かに敵の根元を切り崩していく私……。次回、AOIさんの地獄の特訓が始まります。皆様も、彼らと共に覚悟を決めてお進みください。
【作者より、大切なお願い】
ここ数日、第1話から最新話まで一気に駆け抜けてくださる読者様が増えており、執筆の大きな力になっています!
もし、今この『花笠』の夜の余韻に浸っているあなたがその一人なら……その熱い想いを、ぜひ下の**【☆☆☆☆☆】の評価ボタン**に託していただけませんか?
5万文字を超え、物語はいよいよアヘン工場の核心へ。あなたの『星』が、真司たちの運命を動かす大きな追い風になります。応援、よろしくお願いします!」




