探索開始
真司と晴人、圭太と唯は、サツマイモやタバコの畑が広がる農村地区の探索。
一方、クリスと誠は、中央本部、酒場とカジノや醸造所、タバコ工場などがひしめき合う中心部の探索に向かった。
そして、HAKUはクリスと誠を陰から見張る。
圭太と唯は、馬車で拠点から遠い位置まで向かっていた。
「しかし、一面真っ平らな畑ばっかりだな。ってことは、林の中とかにケシの畑があるんじゃねえか?」
圭太が周囲を見渡して予測する。
「さすがおとうちゃん、いい推理してるねえ」
ニコニコしながら、唯がいつものように旦那を褒める。
「まったく、あんたたちはいつもお気楽だよなぁ」
馬車の荷台から突然、聞き慣れた声がした。
「うわっ、誰だいつの間に!」
圭太が飛び上がらんばかりに驚く。
「私だよ。HAKUが向こうの尾行は一人で十分だって言うからさ。あんたたちだけじゃ心配だから、私も行くよ」
声の主は、いつの間にか潜り込んでいたAOIだった。
「あんだよ、俺たちじゃ心配だなんてまったく」
圭太が不貞腐れたように言うと、すかさず唯が同調する。
「そーだそーだ! 心配ご無用ってんだ」
「……。じゃあ、真司たちの方へ行っちゃおうかなぁ」
AOIが立ち上がろうとする。
「い、いや……もうここまで来ちまったんだ……特別に居てくれてもいいんだぜ」
圭太は、やはりAOIがいた方が心強いことに気づき、歯切れ悪く引き止めた。
「はいはい。特別に付いていってやるよ、感謝しな」
「お願いいたします」
夫婦揃って、今度は素直にお願いした。
「しかし、圭太の言う通り、この真っ平らな畑の中じゃケシがあったらバレバレだな。
あるとしたら、やっぱり林の中とかかもな」
AOIが圭太の意見に賛同する。
「だろ? さすが俺様だぜ、ウアハハハ!」
「はぁ、やっぱり真司の方へ行けばよかったぜ」
AOIが後悔しているうちに、馬車は畑を抜けた先の林に着いた。
一行は馬車を降り、林の中へと足を踏み入れる。
林の中で、唯がふと足元に目を留め、異変に気づいた。
「ねえ、この足元、人が通ったみたいに見えない?」
「ああ、よく気づいたじゃんか、唯。正解だ。明らかに人が通っている跡だぜ」
AOIが唯を褒める。
「いぇーい! やるねえ、私。ハハハ!」
唯が嬉しそうに笑った、その時。
「しっ!」
AOIが鋭く人の気配を察知した。
「おい、お前ら止まれ」
低い声で指示を出し、茂みに身を隠すよう促す。
AOIが前方を見るように、白狼独自の手話で伝えた。
『おい、あそこをよく見てみろ』
目を凝らすと、前方には周囲に不釣り合いな古びたレンガの壁が見えた。
その壁には門があり、警備の兵が二人、険しい顔で立っている。
『たぶんビンゴだろ。でも、どうやって中を確認する?』
圭太も手話で返す。
『よし、裏に回るぞ。お前ら、気配を消して音を立てるなよ』
AOIの指示が飛ぶ。
KUROに見つかっては「壁登りの刑」を課された日々を過ごした圭太と唯は、見事な身のこなしで警備兵に気づかれることなく、壁の裏へとたどり着いた。
『KUROに比べたら楽勝だな』
圭太が余裕の手話を見せた瞬間。
『ぬかるな!』
AOIが短い手話と共に、圭太を鋭く睨みつける。
肩をすぼめて反省する圭太。
『ここからどうする?』
唯が聞くと、AOIは「待っていろ」とジェスチャーで示し、壁にそろりそろりと近づいた。
持っていた細いピックを使い、レンガの継ぎ目を丁寧に切り抜くと、一個のレンガを音もなく引き抜いた。
AOIはレンガの隙間から静かに中を覗き込んだ。
壁の向こうには、想像していた以上に広い畑が広がっていた。
腰の高さほどの細い茎が、几帳面に並んでいる。
その先端には、まだ固く閉じた丸い蕾。
無数の蕾が風に揺れ、青白い波のように畑を覆っていた。
その規模は、小さな農園などではない。
間違いなく密かに育てられた大規模なケシ畑だった。
AOIは小さく息を吐き、振り返る。
『ケシの畑だ』
AOIが合図を送ると、圭太と唯は音を殺してガッツポーズを作った。
しかし、またもやAOIに睨まれ、二人は小さくなる。
『よし、燃やしてやろうぜ!』
圭太が鼻息荒く手話で提案するが、
『馬鹿じゃねえのか。他と同時にやらなきゃ意味ねえだろ!』
とAOIに厳しく嗜められた。
『お前ら、一旦帰るぞ』
その頃、イルーサリ中心部では、クリスと誠が街道の端に座り込み、頭を抱えていた。
「まいったぜ、こんなに建物が有るってのにどうやって探せばいんだ」
クリスがため息交じりに言う。
「お前、みんなの前であんなに自信満々だったから何か当てでも有るかと思えば…何にもないのかよ…」
誠が驚きつつも呆れてしまった。
「すまねえ、良く来る町だからさ。来りゃ何とかなるかとさ……」
ガックリしながらクリスは謝る。
「まあどのみち探さねえといけねえんだ、落ち込んでも仕方ねえ、知恵を振り絞れ~」
そう言って誠は、クリスの頭を両手でつかみ激しく振った。
「うあ~~、やめろよ~~」
冗談っぽくクリスが言うと、急に真顔になり、
「ってホントに待ってくれ」
「なんだどうした?」
急に真顔になったクリスを不思議がりながら誠が聞いた。
「いやな、俺たちがふざけてるのを見て笑いながら通って行った運び屋さ。知ってる顔だったんだ」
「そりゃ俺たち散々ここに荷物運んでるんだ。大体の運び屋の顔をしってんだろ」
「そうなんだ、もしアヘンの工場が有れば何かしらの運搬が有って当然だろ」
「ああ」
「知ってる運び屋だったら大体行先わかるだろ」
「そうだな」
「ちゅうことはだ!」
「ん?」
「 知らない運び屋を追跡したらアヘン工場へ案内してくれるんじゃねえかぁ」
「おー、間違いねえぜ相棒。俺が頭を振ったおかげだな」
「ばかやろー、俺の頭がさえてんだよー」
「へへ、さっきまで頭抱えてたくせに」
「よっしゃ、知らない運び屋を徹底的に尾行しようぜ」
そして、クリスと誠の尾行作戦が決行されたのであった。
【機密情報:奇渡ヶ島・裏ファイル】
AOI:
「……全く、あの夫婦の緊張感のなさはどうにかならないのかい? 隠密の技をなんだと思ってるんだか。でも、まあ……壁を登らされる恐怖で叩き込まれた身のこなしだけは、及第点をあげてもいいけどね」
圭太:
「ヘッ、見てくれたかよ! KUROのしごきに比べりゃ、壁の裏を這い回るなんて朝飯前よ。ウアハハハ!」
誠:
「……その『朝飯前』のせいで、AOIさんに睨まれて縮こまってたのはどこのどいつだよ。
皆様、お疲れ様です。誠です。中心部の方はクリスのおかげで、なんとか作戦の糸口が見えてきました。知らない運び屋を追う……灯台下暗しってやつですね」
KURO:(いつの間にか誠の背後に現れて)
「おやおや、皆さん順調なようですね。ケシ畑の発見に、工場の特定……。
ですが、読者の皆様。忘れてはいませんか? 私が以前お伝えした、作者さんのデスクにあった**『晴人くんへの鬼の仕打ち』**という計画書を。
実は私、さらにその先のページをめくってしまったのですが……。
クリスさんと誠さんがこれから足を踏み入れる『アヘン工場』。そこには、ただの工場とは思えないような悍ましい光景が記されておりました。
第2章、ここからが本気の地獄のようです。
真司さんと晴人さんが探索するエリアの不穏な影。そして、工場に忍び込むコンビを待ち受ける罠。
気になって眠れなくなった方は、ぜひブックマークをして、次の更新を待機しておいてくださいね。
それでは皆様、次回……絶望の足音がすぐそこまで迫る頃にお会いしましょう」




