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潜入開始

白狼城の会議室


「イルーサリはこの島のちょうど中央に位置する国ね。産物は、ご存じのように酒とタバコよ」

さなえが地図を広げながら説明する。


「そして問題のアヘンだけど、押収した瓶は約八十本。

このたった一瓶で、三ヶ月もあれば人間一人が十分廃人になってしまうわ」

そう言って、実物の小瓶をテーブルの上へ無造作に放り投げた。


「たったこれだけの量であんなに酷い状態に……しかも三ヶ月なんて……」

真司の顔が強張る。


「真司ちゃん、一本あげましょうか? フフフ」

さなえの冗談に、真司は慌てて首を振った。


「この量のアヘンを作るには、恐らくテニスコート二面分くらいの面積が必要かしら。

この純度のアヘンこうなら、直接刈り取って詰めているはずね」

「へー、さなえさん詳しいのね」

唯が感心した声を出す。


「そりゃあ、こう見えても薬剤師ですもの。……もっとも、生かす薬より殺す薬の方が専門だけどね。フフ」

そう言いながら舌なめずりをするさなえを見て、一同の背筋に冷たいものが走る。


「今は四月初旬。来月にはケシが花を咲かせて収穫時期に入るわ。

できれば花が咲き誇る頃までには、すべて燃やしてしまいたいところね」


「一か月半以内に場所を特定して、灰にすればいい……ということですね」

晴人が確認するように言った。


「俺らにかかれば、そんだけの期間がありゃあ楽勝じゃんか! ギャハハハ!」

いつもの調子で笑う圭太を、銀とKUROが氷のような冷徹な視線で射抜く。

圭太は即座に肩をすぼめ、置物のように小さくなった。


「アヘン製造だなんて……何としても止めさせないと」

真司の目に決意が浮かぶ。


「ケシは真っ赤な花を咲かせるから見つけやすいけど、高い壁に囲われているかもしれないし、畑が一箇所とも限らない。

甘く見ない方がいいわよ。

……私からの説明はこんなところね。あとはKUROちゃん、お願い」


「それでは、潜入方法について私から説明いたします。

真司さんと独露どくろの面々には、運び屋を装い潜入してもらいます。

AOIさん、例の物を」


「はい」


AOIが出したのは、油紙に包まれた『七国物資運送通行許可証』だ。


「どうよ。……って言っても、本物を見たことがないあんた達には、このAOI様の偽造テクニックの凄さは分かんないだろうけどね。

これは、運び屋が持っている各国への入国許可さ」


「はい、AOIさんの技術は間違いありませんので、安心して下さい。

馬車の積み荷には、運搬物資に紛れ込ませて当面の生活物資を載せておきます。

イルーサリは殆どが平地です。この東側の山間に身を潜めて活動して下さい」


「あれ、僕の許可証が無いですが……」

翔が、自分だけ許可証が用意されていないことに気づく。


「そうです。今回、翔さんには私と別行動をしてもらいます。他の方より高度な任務になりますので、気を引き締めておくように。

そしてHAKUさんとAOIさんは、真司さん達と同じ任務を、お互い密に連絡を取り合いつつ遂行して下さい」


「銀様、私からは以上でございます」


「決行開始は明日の朝! 決してぬかるな」

銀の力強い号令に、全員が引き締まった表情で頷いた。


--翌日—


真司、圭太、晴人、唯の4人は、馬車に乗り一路イルーサリの東の森を目指していた。

「あーあー、イルーサリにはよお、カジノに酒場まで有るってのに。

俺たちゃ中心街に近づくなってよ。

しかも4万も銀貨をくれたんだぜ。洞窟暮らしじゃカジノでも行かねえと使い切らないじゃねえか、ウアハハハ!」


「そうだよね。おとっちゃんの言う通り! 皆で変装してカジノ行っちゃうかぁ、ウシシシ」

まるで遠足にでも行くような夫婦の会話に、いつもながら呆れて晴人が釘を刺す。

「まったく、二人とも。中心街ではKUROさんが潜入してるから、変装したってすぐにバレて何をされるか……考えただけで恐ろしいです」


「この島にもお金が有るんですね。この硬貨一枚でどのくらいの価値ですか?」

初めて見る奇度ヶ島の貨幣を見ながら真司が聞く。


「その硬貨が百銀貨で、だいたい日本円の1000円くらいかな」

晴人が答える。


そんな他愛もない会話をしながら軽快に馬車を走らせていた。

すると前方で一台の馬車が斜めに傾き、立ち往生しているのが見えた。

真司が馬車を降り走って行くと、馬車の車輪が外れてしまっていて、2人組の男が困っていた。


真司が声を掛ける。

「大変ですね、手伝いますよ」


そう言って馬車の荷台を持ち上げ始める真司。

「おいおい、そんな一人で持ち上がる……って、おい!」


ぬぬぬぬうぅぅぅ~

徐々に持ち上がり始める荷台。


目を丸くして呆気に取られている馬車の2人組。


おりゃぁ~


最後に一気に力を込めて腰の高さまで持ち上げた真司。


「さあ、早く車輪をはめて下さい」


「あっああ! わりいわりい、早くしねえと」


すっかり見入ってしまっていた2人は、慌てて車輪を軸にはめ込んだ。

そうこうしているうちに、圭太たちの乗った馬車も追い付いてきた。


「いやあ、兄さん助かったぜ。一度、荷物を全部降ろそうかって話してたところだったんだ」

「しかし、すげー力だなぁ、ビックリしたぜ」

白人っぽい顔立ちの男が満面の笑顔で真司の肩を叩いて礼を述べた。


もう一人の男は、深々と頭を下げて礼儀正しくお礼をした後で、車輪の留め具を周囲から探し出した。


「おいクリス、くさび有ったけど完全に割れちまってるよ」

「マジか……オーケー誠、そしたら適当にその辺の枝でも削って代用しよう」

そう言って、クリスと呼ばれていた男は、近くの木の枝を持っていたサバイバルナイフで切り落とした。


どうにか2人組の馬車も直りそうなのを確認し

「それでは、僕たち行きますね。お気をつけて」


「ちょっと待ってくれ。ほれ、お礼だ」

クリスはそう言って、瓶入りの酒を投げて渡した。


「イルーサリの特急品だ。ラベルだけ変えた偽物なんかじゃないぜ」

誠と呼ばれていた男がグーサインしながら言う。


「ありがとうございます」

そう言って真司たちは、その場を後にした。


ちょうど太陽が真上に登った昼頃、真司たちはイルーサリの関所に着いた。

真司たちの前の入国者が何やら不備のようで中々進めないでいると、

後ろから先ほどの2人組が追い付いてきた。


「おー、また会えて良かった」

クリスが手を振りながら真司たちの後ろに並んだ。


「なんだ、トラブルで進まないのか。まったく、ここの入管は、いちいち厳しいんだ」

誠がイラつきながら文句を言っている。


「おい、俺たちの許可証大丈夫なのか」

圭太が小声で心配そうに言う。

「きっと大丈夫です。AOIさんを信じましょう」

真司は満面の笑顔で皆を安心させようと努める。

「KUROさんにいつも平常心って仕込まれたんです。自信をもって行きましょう」

きりッとした表情の晴人。

「そうそう、どうにでもなるさぁ」

いつも通りあっけらかんとしている唯。


そうこうしているうちに前の組がようやく通過して、真司たちの番になった。

「こんにちは、白狼から食料の運搬です」

そう言って全員の許可証を渡す。


「お前たち、運び屋か。初めて見る顔だな」

「イルーサリは初めてなんです」

KUROに鍛えられたせいか、まったく怯えずに晴人が話す。


一人一人の許可証を入念に見る役人。 許可証を役人が持っている印影と重ねて、太陽にかざす。


それを後ろで見ていた誠の視線が曇る。


「おい、何かおかしいのか?」


クリスが誠の視線に気づき聞くと、


「ありゃ偽造だぜ、クリス」


【機密情報:奇渡ヶ島・裏ファイル】


AOI:

「……はあ!? 偽造を見抜かれた!? ちょっと待ちなさいよ、私の偽造テクニックは完璧だったはずよ! あの役人じゃなくて、後ろにいたあの男……誠だっけ? 何者よあいつ!」

+2


HAKU:

「………………」


KURO:

「まあまあ、AOIさん。弘法も筆の誤りと言いますし。

それにしても、あそこで立ち往生していた二人組……単なる運の悪い旅人ではなさそうですね。

+2


皆様、お騒がせしております。KUROでございます。

ついに始まったイルーサリ潜入作戦ですが、作者さんのPCによれば、イルーサリの酒場では渋い大人の駆け引きが繰り広げられ、翔さんの成長と活躍が見られそうですよ。

+1


そして、今回も本編で一言も喋らせてもらえなかったHAKUさんを『可哀想だ』と思われた心優しい方がいらっしゃいましたら、ぜひ彼への同情票として、下の星(評価)を頂戴できれば幸いです。

その一票が、もしかしたら次回のHAKUさんのセリフを一行くらい増やす……かもしれません。


偽造を見抜かれた真司さんたちの運命は。 そして、翔さんに与えられた『高度な任務』とは一体何なのか。


それでは皆様、次回の更新まで……手に汗握ってお待ちください」

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