灰色
数時間前の山道。
真司たち三人は順調に歩みを進めていた。
だが、翔だけは何度も背後を振り返っている。
「翔、やっぱり気になるんだ?」
晴人が小声で聞く。
「うん……何かの音かな、誰かに見られてるのかも……」
その様子にHAKUも警戒を強める。
(おかしい、あの小さいの俺の存在を感じているのか)
距離をさらに広げ、気配を殺した。
「ここまで気になるなら、試してみよう」
晴人は二人に小声で話すと、小走りに前へ出た。
それに合わせ、真司と翔が左右へ広がる。
HAKUの眉がわずかに動く。
(ん!まさか、ばれたのか)
次の瞬間、晴人が走り出した。
同時に、真司と翔も左右へ散る。
――追跡を察した動きにHAKUは足を止めた。
だが次の瞬間、晴人が踵を返し、一直線に向かってくる。
するとHAKUの左右の木陰から真司と翔が姿を現す。
「さすが翔、本当にいたんだね」
三人にわずかな安堵が生まれた。
その刹那。
気づけばHAKUが晴人の背後を取り、首元に短刀を突きつけていた。
「晴人さん!」
真司が反射的に踏み出した瞬間――
HAKUは晴人を真司へ目掛けて突き飛ばす。
晴人は木の根に足を取られ、派手に転倒。
視線がそちらに向いた一瞬。
HAKUの姿は、もうなかった。
ほんの一瞬の出来事だった。
HAKUは、ほんの一瞬で消えて行った。
唖然とする三人。
「いってぇ……」
立ち上がろうとした晴人の足首は、すでに赤く腫れ上がっている。
真司はしゃがみ込み、慎重に足首を確かめた。
「たぶん捻挫ですね」
近くの小枝を拾い、服を裂いて固定。
手際のいい動きに迷いはない。
「どうですか、晴人さん」
「うん、しっかり固定されてる。ありがとう」
翔は周囲を見回し、杖になりそうな枝を拾って差し出す。
「これ、使ってください」
「翔もありがとな」
晴人は苦笑した。
「みんなごめん。これじゃ足手まといだ」
「大丈夫です。背中、使ってください」
真司がしゃがみ込み、背を向ける。
だが晴人は首を振った。
「だめだ。真司くんは白狼城でどうなるかわからないんだ。体力は残しておくべきです。俺はゆっくり歩いて行くよ」
「しかし、まだ敵が何処で襲ってくるが分からない、晴人さんを置いてく訳には……」
真司は困り顔で考え込む。
すると
「まだ時間あります、みんなでゆっくり進むのはどうですか」
「それで間に合わなそうなら、真司くん、先に行ってください」
普段、あまり意見を言わない翔が珍しく提案してきた。
その提案に覚悟を決め、三人は歩き出した。
晴人を支えながら、痛みに耐える足取りで山道を登っていく。
――白狼城。
広間の玉座の脇に、KUROが跪いていた。
洞窟での出来事を静かに報告している。
銀はこめかみを指で叩き、口元を歪めた。
「ふっ……これは、なかなか楽しめそうだ」
「KURO、阿吽とさなえを呼べ」
「御意」
やがて三人が現れる。
「あら銀ちゃん、何か楽しそうな顔してるのね」
銀は、薄く笑う。
KUROが一歩進み出る。
「今夜、四人組が潜入します。
この広間まで来させますので、対処をお願いします」
さなえは楽しげに首を傾げた。
「私のスペシャルなドリンクでおもてなししても良いのかしら」
「構わない。ただ、価値があるなら殺すな」
「わかったわ、その時は、銀ちゃんを呼べばいいのね」
銀は静かに頷いた。
阿吽の2人は腕を組んだまま、静かに聞いている。
――
屋上。夜風が城を撫でる。
KUROは紅茶を口にしていた。
背後に気配。
HAKUが跪く。
「気付かれました」
短い報告。
「HAKUさんの追跡に気付くとは……意外ですね」
HAKUは俯く。
KUROは肩に手を置いた。
「無事に戻れた、十分です」
「それに相手の力量も測れました。上出来ですよ、HAKUさん」
HAKUの拳がわずかに震える。
「……KURO」
その声には、悔しさが滲む。
KUROは、しゃがんでHAKUと目線を合わせて指示を出す。
「HAKUさん、もうすぐAOIさんが来る頃でしょう合流して下さい」
「はっ」
HAKUは、薄暗い森の中へ消えて行く。
そして夜の帳が下りる頃。
ようやく真司たちは圭太と合流した。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今後の展開や伏線についても細かく構想を練っており、一歩ずつ丁寧に書き進めております。少し更新にお時間をいただくこともあるかもしれませんが、この先の主人公の歩みを見守っていただけたら幸いです。
もし「この先が気になる」「設定が面白い」と思っていただけましたら、下の**【☆☆☆☆☆】やブックマーク**で応援いただけると、執筆の大きな励みになります。皆様の応援が、この物語を完結まで運ぶ力になります。




