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星影が導く花明かり  作者: 天りあま
第二章 仲間との出会い

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31. はしたないことです

「お、発見! ここに居たんっすね~!」

「……レオニクス、何をしている」


 明るい表情のストラメルと、なんだか怖い雰囲気のラキュスがやってきた。

 急にどうしたのだろうか。


「まあ、二人とも。どうしたの?」

「レオニクスが戻ってこないから探しに来た」

「お二人さんは何の話をしてたんっすか? わざわざ、二人っきりで」


 ストラメルが何故か楽しげにそう尋ねてきたので、下手に誤魔化してもしょうがないかと考える。ちら、と視線を向けた先のレオニクスはなんとも苦い表情をしている。


「レオニクスの身体の記憶をどうにか消せないか相談していたの」

「は?」

「へぇ~、レオニクスさんの身体の記憶を……身体の記憶ってなんすか!?」


 端的に伝えすぎたためか、ラキュスとストラメルの反応も当然といえよう。であればやはり、もう少し説明しなければいけないのだろう。

 彼らに変な目で見られるかも、と少しばかりの不安が芽生える。変な表情をしてしまうかもしれないと思い両頬に両手をそっと当てた。こういう話は切り出し方が難しい。


「昨日、レオニクスのその……裸を見てしまったのだけれど、自力ではどうしても忘れられそうになくて……」


 途切れ途切れに紡いだ言葉に、その場にいたらしいラキュスはすぐにピンと来たらしい。

 

「あのときか……そんなことなら、レオニクスにはさっさと服を着せておけばよかった。すまない」

「ラキュスのせいじゃないわ!」


 反省している、といった様子でそう言ったラキュスだが、彼には何の落ち度もない。

 すると、ストラメルが思わぬことを言い出した。

 

「どうしても忘れられないって、チェラシュカさんがすんごい変態みたいっすね。昨日は全然反応してなかったっすけど」


 目元だけニヤリとした彼の言葉にいち早く反応したのはレオニクスだった。

 

「おまっ、なっ、……馬鹿!! チェリちゃんになんてこと言うんだよ!?」

「妖精は変態しないぞ」

「ラキュス、そういう意味じゃねえ!」

「ならどういう意味だ」

「ラキュスさんこれも知らないんすか? 何て言ったらいいっすかねー、とりあえずやばくて異常な、」

「お前はちょっと黙れ!」


 ――変態。

 聞いたことはある。ラキュスが言っているのは恐らく虫の形態変化のことだが、ストラメルが言ったのはそうではなくて、つまり……。


「やばくて……異常な……」


 ――私は、やばくて、異常な妖精になってしまったのかしら……。


「チェリちゃん? こいつの言うことなんか真に受ける必要ないぜ?」

「チェリ?」

 

 頬を押さえたまま、視線はどんどん下がり焦点が合わなくなっていく。頭の中がふわふわとしてよく考えられないままに、思考がそのまま口からまろびでた。

 

「や、やっぱり私、とっても……は、はしたない子になってしまったのだわ……」

 

 心の底がどんどん冷たくなっていくのを感じるが、これ以上この気持ちを誤魔化せそうにない。

 

「チェリははしたなくなんかない」

「……そ、そうだぜ、何を急にそんな」

「ちょっと、俺のこと殴りつけて無視するって酷くないっすか」

「今それどころじゃねえって!」


 ラキュスもレオニクスも、そんなことないと慰めの言葉をかけてくれる。レオニクスなんて被害者と言ってもいいのに、こんな自分の味方になってくれるなんて。

 そんな彼に対し、本音を隠したまま記憶を消してもらおうだなんて自分勝手だった。ここは正直に言わなければ。

 チェラシュカはそっと視線を上げると、レオニクス――の腹部に目を遣った。

 

「お腹を……」

「お腹?」

「私もあんな固そうなお腹になれるかしらって、思ってしまったの……」

「……」

 

 ――こんな考えを持ってしまっただなんて、もうみんなから呆れられてしまったに違いないわ。


「ああダメ、やっぱりはしたないわ……。ごめんなさいレオニクス、本当は見せたくなかったでしょうに、勝手に見た上にいいなと思ってしまって」


 そう。チェラシュカは昨日レオニクスのバキバキに割れた腹筋を見て、あろうことか憧れを持ってしまったのであった。

 しかし、そんな自分は恥ずべきである。本来なら目にすることのないものだったのだから、早く忘れてこんな思考も無かったことにしてしまいたい。

 そう思うものの、顔に熱が集まってくるのを感じる。

 

「え、いや……え?」

「あんな腹筋バキバキになりたいんすか? チェラシュカさんには似合わないと思うっすよ」

「チェリはどんなお腹でも似合う」


 ストラメルとラキュスがあれこれと口にする中、レオニクスが「なんでそんなことを……?」と聞いてきたので、少し躊躇いつつも答えることにする。


「……以前触ったセルヴィエルさんのお腹がね、とっても固かったの」


 それを聞いたレオニクスの声が、ぐっと一段低くなった。

 

「……へえー、あいつの」


 やはりレオニクスも彼のことはよく思っていないからだろう。チェラシュカも別に思い出したくはなかったのだが。

 レオニクスに続いてラキュスも不機嫌そうに目を細めた。

 

「チェリ、セルヴィエルのお腹なんていつ触ったんだ」

「え、誰っすか?」


 ラキュスたちとは対照的に、ストラメルはカラッとした声でそう尋ねてきた。


「お馬さんに乗ったときよ」

「ただのちょっとした知り合いだぜ」


 レオニクスと答えるタイミングが被ってしまった。確かにセルヴィエルは単なるちょっとした知り合いでありそれ以上でもそれ以下でもないな、と思う。

 目を細めたレオニクスがむっとしたような声をあげた。


「あいつの腹がちょっと固かったからって、なんで……」


 なんで、と問われたチェラシュカは何も偽らず思ったままを伝えることにした。

 

「そのときに、ラキュスとレオニクスのお腹はどうなってるのか、いつか確かめたいなと思っていたのだけれど」


 すると、ぎゅっと寄せられていたレオニクスの眉が今度はふわりと持ち上がり、目がじわりと見開かれていった。

 

「オレの腹を確かめる……???」


 そこでラキュスが自身のお腹を軽く叩いてこう言った。

 

「触りたいのか。なら、チェリの好きに触ればいい」


 流れですんなり許可が得られた。「ありがとう。ならまた後で」と伝えると、今度はストラメルが怪訝そうな顔をする。


「見るのはダメで触るのはいいんすか? そんでバキバキになりたいと思うって、変わってるっすねー」


 変わっている、と言われれば否定はできない。故郷の友達に身体を鍛えている子なんて居なかったし、チェラシュカ自身がそう思ったのも昨日が初めてであり、自分でも戸惑っているのだ。


「……私のぺたんこでふよふよなお腹とは全然違っていて、強そうだなって思ったのよ」


 そう告げると、こちらへ向けられていたレオニクスの視線が一瞬下方へ向き、その後ゆっくり横に逸れた。なんだか気まずそうな表情をしている。

 きっと自分も同じような顔をしていることだろう、と自分の膝に目を向ける。

 

「チェリちゃんは、強くなりてえのか?」

「ええ。だって、お腹は生き物の急所だから、守りが固いほうがいいでしょう?」


 話しかけられて反射的にレオニクスの目を見て……それから思わず逸らしてしまった。脳裏に再度よぎったのは彼の腹筋のこと。

 彼に対しての申し訳なさが募る一方、その罪悪感から逃れたい一心で、ついこんなことを口走ってしまった。


「私もレオニクスみたいにお腹をカチカチに鍛えられたら……、腹筋を見せておあいこになるかしら……」

「いや、腹筋は別に……」


 そこで不自然に途切れたレオニクスの言葉。即座に彼の腕を叩くラキュス。

 急にどうしたというのだろう。


「おい。お腹を見たいかどうかを熟考するな」

「……熟考はしてねえ」

「チェリもレオニクスに見せたりするな」


 流れるようにラキュスに窘められてしまった。自分でも混乱していたようだ、と反省する。

 

「……そうね、やっぱりはしたないもの」


 であれば、レオニクスに対してどう落とし前をつけるべきか……と思案する。

 そんな中、ストラメルがこんなことを言い出した。

 

「まあ、なら丁度いいっすね。あそこに行ったらレオニクスさんのことも忘れられると思うっすよ。みんな裸なんで」

 

 彼の言葉に対し、ラキュスからこの日一番の「は?」が漏れ出た。

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