【ゆいこのトライアングルレッスンB】私がパーソナリティー!?
「ラジオネーム、アラサーおさげさんからいただきました!」
「それでは、また来週お会いしましょ〜お相手はゆいこでした!」
ON AIRのランプがパッと消えると、私は息を吐いた。
そのとき、ブースの外のお客さんの中に、懐かしい顔ぶれが見えた。
(……あれ?)
慌てて支度をしてサテライトスタジオから出ると、ひろしとたくみが来ていた。
「2人揃ってどうしたの?」
「ゆいこ、お誕生日おめでとう!」
ひろしは、少し照れくさそうに淡いピンクのダリアとオレンジのバラの花束を差し出してくる。
(私の好み、ちゃんと覚えててくれたんだ。)
「ラジオ、聴いてたよ。ゆいこのかわいい声聴いてるとつい甘やかしたくなるな。」
ひろしだっていい声してるのに、本人はその良さに気づいていない。
私はひろしの声が大好きでこの声を聴くと、いつだって嬉しくなる。
たくみは、爽やかな優しい笑顔で手にのど飴をひとつ、そっと乗せてくれた。
「ほら、喉、無理してないか?ゆいこが頑張ってるの、知ってるから。」
「…ありがとう。びっくりしたよ〜まさか来てくれるなんて!」
ひろしが一歩近づいて、耳元で囁いた。
「本当は、ゆいこを独り占めしたかったんだけど。」
たくみは、なぜか得意気だった。
「今日は俺が、ゆいこをめいっぱい甘やかしてやるからな。誕生日なんだから、ワガママ言っていいんだぞ。」
ふたりに見つめられて、だんだん顔が熱くなっていく。
だから、私は、たくみの目をまっすぐ見て、
「じゃあ、今日は……ちょっとだけ、たくみに甘えてもいい?」
いつも何をするにも3人一緒だった。
この年の誕生日に初めて、ひろしとたくみと何より自分の気持ちに向き合った気がする。
私は、たくみにエスコートされて車に乗り込む。
助手席から見えるひろしの顔をぼんやり眺めながら、私たちを送り出してくれたひろしの思いを受け止めて、長年のあいまいな関係性に終止符を打つつもりだったのに…