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短編集

このテンプレ……もしや

作者: luna

 私が前世の記憶を取り戻したのは極最近。

 この世界が乙女ゲームで、光の聖女に目覚めたヒロインが様々攻略対象の男性陣と恋愛を楽しむ乙女ゲーム。ゲームだから楽しめるのであって、リアルの話なら別問題。間女になるなんてまっぴらだ。その前に、婚約者がいる殿方と恋愛を楽しもうとは思わない。


 平民だった私は、瀕死の怪我をした子どもを助けたいと一心で願ったら、眩ゆい光に包まれると一瞬で怪我が治ってしまった。その時に前世の記憶も取り戻した。その話はあっという間に広まり、魔法のコントロールを覚える為に魔法王立学園に通うことになった。私の魔法の性質は"光"と"聖"の2つの組み合わせの魔法で、魔法の性質の中でもレア中のレアという珍しいタイプの魔法らしい。2つ共。流石、乙女ゲームのヒロイン。光の聖女ってことは知っていたけど、裏でこんな話があったとは驚きである。珍しいだけではなく、魔力量も多い事も判明した。それは授業の時の出来事の話。

「ニーナさんには、此れをやってもらいましょう」

 私の目の前には、萎れた花が一本。光魔法の初歩的なもので、集中力を高める為にもなるらしい。

「分かりました」

 あの時のことを思い出しながら集中すること数分。指先が暖かくなったと思いきや、眩ゆい光に包まれると、真冬だというのに外が緑と花に染まった。何処まで続いていたのか知らないけど、王都で騒ぎになったらしい。そう言えば、隣のおじいちゃんが長年腰痛に悩んでいたけど、いつの間に腰痛がなくなっていた話を思い出した。


 平民の私が珍しい性質の魔法に、魔力量も多いことが知れ渡ると良く思わない人たちも出てきて、ノートに落書きされたり、物がなくなったりと大変な目に遭っている。

 平民の私からしたら猛獣の中に放り込まれたウサギの気分で、びっく、びっく、怯える毎日。少しのミスで、これでもかというくらいに心臓を抉る言葉の数々。怖すぎる。小心者の私は貴族社会は向いていないとつくづく思う。そんな中、私に目をかけてくれるのが、またも攻略対象の彼らで、私はできるだけ穏便に不敬にならない様に心がけながらも彼らの好意を受け取り距離を保つ。


 間女になるつもりはないからとことん恋愛イベントを避けていたら甘い雰囲気になることもなく、無事に卒業式を迎えることができたと安心しきっていた。

 なのに、何で? こんな事になっているのよ。

(わたくし)、ラウーラ・エローヒナは、アルセニオ・エル・セリンシィリ殿下と婚約破棄を申しますわ」

 え、ヤバくない?

 相手は、王子様よ。

 まだ決まってはいないけど、おそらく次期国王様になる方よ。こんな公衆の面前で断罪していい相手ではないわ。本来は、攻略対象の男性陣が婚約者の令嬢を断罪する場面だけど。いや、それもどうかと思う。自分の浮気を棚に上げて、お前が令嬢を断罪する立場があるのかーー!! と、蹴りを入れたいけど。

「理由を聞いても?」

「私と言うものがいながらニーナ・バラック男爵令嬢と不貞を犯したからですわ」

「……へ? 私!?」

 突っ込むつもりはなかったけど、自分の名前が出てくるなんて夢にも思わず、つい声が出てしまった。静まり返った舞踏会では私の声は響いた。

「も、……ももももし、申し訳ありません! どうぞ続けてくださいまし」

 しーん。と、静かなまま。

 本当に続けて! 私は関係ないわ。この静けさ耐えられない。私は何もしていない。

 ドドドと、足音を立てて私に近づいてバーンと大きな音と共に頬に痛みが走った。

「この泥棒猫!」

 いきなり貴族社会に放り込まれたから殿下や他の方からも良くして貰ったわ。そこは認める。猛獣の中に何も知らない草食動物がビクビクしていたら誰だって手は差し伸べるでしょ?! 彼らや婚約者達に貴族の礼儀作法や振る舞いを教えてもらっただけよ。何でそんな勘違いをしているのよ。私、殿方とふたりきりに居たことは挨拶と少しの日常会話する数分くらいよ。なのに何で!? 私は叩かれなくちゃならないの? え、何で?!

「ふしだら! 不潔! 尻軽女! このビッチ! 阿婆擦れ!!」

 悪口のレパートリー。

 そのまま令嬢は控えた騎士に両腕を抑えられて引きずられていた。

 私は放心状態でそれを見ていた。

 後日、私の元にアルセニオ・エル・セリンシィリ殿下がいらしゃった。

「ラウーラ・エローヒナ令嬢がすまなかった。元婚約者とはいえ、ニーナ・バラック男爵令嬢には落ち度はないと言うのに」

「お顔を上げてください。アルセニオ・エル・セリンシィリ王子殿下。殿下は悪くありません」

 私もアルセニオ・エル・セリンシィリ殿下も悪くない。なぜ? ラウーラ・エローヒナ様が勘違いをなさったのか知らないけど、ふたりきりで会話らしい会話はほぼない。いつも、側近の誰かが近くにいた。それなのに……何故? ラウーラ・エローヒナ様は、私とアルセニオ・エル・セリンシィリ殿下をそう言う意味で勘違いをしたのだろう……もしかして、彼女も――。

 考えるのはやめようと。


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