第99話 (87)雨降りのベイサイド
「いや〜。ゾンビナイトも一ヶ月が過ぎましたな〜。」
「あっという間ですよ〜。と言うことは、もうゾンビナイトの半分が過ぎたと言うことで…。」
「い、嫌だ!!聞きたくない!」
私達は雨宿りできる場所を探して歩きながら、他愛もない世間話をしていた。カルーアさんとちゃんと話すのは一ヶ月以上ぶりである。ゾンビナイトが始まってからは、お互い忙しくて話すことがなかった。ここ最近カッピーさんを推すことになってからは、囚人ゾンビエリアで時々視界の端に彼女の姿を捉えることがあったが、ゾンビナイト中のオタクは忙しい。ちゃんと会話するチャンスは全くなかった。なので、ここ一ヶ月はSNS上で多少やり取りをする程度だった。
「いや〜。まさか、ナイトベアーショーの雨グリがあるとは思わなかったですね。」
「ね?私もびっくりしちゃって、夢中でシャッター切ってたよー。たまたま歩いてたら、雨グリの準備してたから、何が出てくるんですかー?って聞いたら、ナイトベアーですって!えー!って感じ!」
「じゃあ、カルーアさんは最初から見てたんですね!いいなー!」
「良かったら写真とか動画とか見る??」
「えー!いいんですかー!」
私達はベイサイドエリアにあった雨宿り出来るベンチに座り、お互いの撮った写真を見せ合ってゾンビ談義をしていた。変人が多いUPJオタク女子の中では、カルーアさんは優しくて話しやすい人だ。先月の炎上事件のような暴走をするのが玉に瑕ではあるが、こうして話している分には優しいお姉さんである。
「はぁ、やっぱりカルーアさんの撮る写真良いですね。」
「本当に?カメラ買い替えたからかな?」
「それもあるかもしれないですけど、なんか被写体が生き生きしてる気がします。カルーアさんが楽しくて撮ってるのが、写真越しで伝わりますよー。」
「すっごく嬉しい。ありがとう。中には、SNSでのいいね欲しさに人気のダンサー撮ってるだけだろって奴もいるもんね。」
「エーソンナヒトイルカナー。ワタシハワカラナイヨー。」
「もう!もじゃちゃん、ずるい!私だけ悪者にしないでよ!」
「あはは、すいません!」
カルーアさんの撮った写真を見ながら、楽しく話していると、とある写真が私の目に留まった。
「あ、これ。」
それは囚人ゾンビに扮したカッピーさんだった。『アレ』以降見れてないカッピーさん。
「カッピーさんね…。カッピーさんの囚人ゾンビ見られないの残念だよね。」
「え…。やっぱりもう見られないんですか?」
「なんかそうみたい。『アレ』が原因なんだって。」
やはりそうだったのか。『アレ』のせいで。私と文子が『アレ』をネットに載せたりしなければ、こんなことにはならなかったのかもしれない。そう思うとカルーアさんへの申し訳ない気持ちが湧いてくる。
「もじゃちゃんも、カッピーさん推しだったもんね。」
「は、はい!カルーアさんの写真きっかけで…。カッピーさんを見られないの悲しいですね。」
「だからこれからはリトルナイトベアーを応援しなきゃね。」
「え?リトルナイトベアーを?どういうことですか?」
「え?」
「え?」
私たちは目をパチクリとして見合っていた。カッピーさんがいないからと言って、どうしてリトルナイトベアーを応援することになるのか。
「あれ?もしかして、もじゃちゃん知らないの?」
「知らないって何をですか?え?どゆこと?」
「知らないで、さっきリトルナイトベアーの雨グリ見てたってこと??」
「え、はい。知らないって何をですか?」
「カッピーさんだよ、あれ。」
ーーカッピーサンダヨアレ?
「あれって…。え?」
「だから、リトルナイトベアー様いたでしょ!さっき!あれの中身がカッピーさんなの!」
「えぇえぇええ!じゃあ、私さっきまでカッピーさん見てたってこと?!」
私は文字通り横転して驚いていた。文子がネットミームとして使う横転どころではない、文字通りの横転だった。私が文子だったら、こう言ってるだろうな。
ーー予想外の展開で、横転。
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