第95話 (83)雨傘-1
「皆さーん、ナイトベアー様とその子分リトルナイトベアーが来てくれましたよ〜!」
カシャカシャカシャカシャ
「ナイトベアーダンサーズ達も出てきました〜!皆様、思う存分お写真撮っていって下さいね〜!」
カシャカシャカシャカシャ
パークの一角、レストラン横の軒下で雨グリーティングは行われていた。ゾンビやナイトベアー達は雨に濡れない軒下でポーズを取ったり、手を振ったりしながらカメラを持った集団に囲まれてひたすら写真を撮られている。
(おい、ブラザー!練習の成果を見せる時だぞ!)
(ミッキーさん、練習の成果って…?)
(馬鹿野郎!!見とけ!こうだ!)
ふりふりふりふり
「きゃー!ナイトベアー様がお尻振ってる〜!可愛い!!」
カシャカシャカシャカシャ
(見たか…?ブラザー!可愛こぶり、の成果を見せる時だ…!)
(な、なるほど…!あの特訓は今日の為に…!ならば…!)
ふりふり、こてっ!
「きゃー!リトルナイトベアー様が困ったさんのポーズしてるー!可愛い〜!!」
カシャカシャカシャカシャ
(ブラザー、やるじゃねえか…!次は…わかるな?)
(OKです、ミッキーさん…!)
ぴょこぴょこ、ばっ!
「きゃー!ナイトベアー様とリトルナイトベアー様が2人で決めポーズしてるー!可愛いー!」
カシャカシャカシャカシャ
(やったな!ブラザー!成功だ…!)
(ミッキーさん…!涙)
〜〜〜
「雨グリーティングって何ですか?」
「ゔぅえ!?ゔぁゔぇゔぃり、ゔぃらゔぉあえ?!」
「ゾンビさん…それもう喋ってるも同然じゃ…。」
「ぉお…。闇よ…。」
「カッピー、雨グリってのは雨の日に栗を食べ…。」
「もう!2人ともカッピーにちゃんと教えてあげなよ!あのねーー。」
話にならないゾンビさんとハナさんの代わりにオラフさんが丁寧に教えてくれた。雨グリとは雨グリーティング、つまり雨の日に行われるグリーティングであると。グリーティングで何をするのかと言うと、写真や動画をひたすら撮るらしい。ん?写真と動画ならいつも撮るじゃないか?ならば、いつもと何が違うのか、ゾンビとグリーティングする人なんかいるのか、と思いきやこれが結構人気らしい。ゾンビナイトの本番は雨グリにある、とまでいうオタクもいるらしい。
「何でそんなに人気なんですか?」
「僕も最初はそう思ったんだけど。ほら、ストリートにいる時はゾンビは基本的に歩き回ってるじゃない?ダンスの時は立ち止まるけど、ダンスするから動き回るしさ。」
「なるほど!雨グリの時は動き回らないから、写真が撮りやすいんですね!」
「そうそう。軒下でスペースも限られてるし!それに…。」
そう話しかけたオラフさんがちらっと横に視線をやる。そこでは、ハナさんとゾンビさんがひそひそと話し合いを行なっていた。
「私がこうしたら、ゾンビさんはごにょごにょ。」
「ゔぅ…。ゔぉあ!」
ハナさんの提案に対し、ゾンビさんがゾンビ口調で返事をする。ていうか、ゾンビ口調の返事って何だよ!本当のゾンビは別に返事しないだろ!いや、本当のゾンビて!本当のゾンビもいないだろ!だめだ、ツッコミ所が多すぎて、僕の手には負えない。ツッコミを放棄した僕は、何やら詳細に打ち合わせを行う2人を側から眺めていた。
「ゾンビ同士の絡みが見られるから、それを見たくて雨グリに来る人もいるんだよ。」
「まさか…。ハナさんとゾンビさんが話し合ってるのは…。」
「そう。雨グリの時にどういう風に絡むのかの打ち合わせをしているんだよ。」
何でわざわざ打ち合わせをするのか?と一瞬思ったが、オラフさんの説明を聞いて妙に納得している自分がいた。確かに普段ストリートで歩き回っている時に、他のゾンビと絡む機会はまずない。特に最近のストリートの混雑だと他のゾンビと会う機会が極端に少ない。ニセ姉も「このゾンビとこのゾンビはこういう関係性で…。」と演出してくれているのだが、その関係性の披露の場は少ない。それを披露できる絶好の場が雨グリというわけか。
「雨グリは写真や動画が撮りやすいってのもあるし、ゾンビ同士が絡み合ってるのを楽しんで見たいって層にも人気なんだよ!」
「雨グリがオタクに人気って話、よくわかりました!でも…。」
僕の中に一つの疑問が浮かぶ。
「でも?なんだい??」
「いや、オラフさんにしては流暢に説明するなぁって…。謎に詳しいですね?」
「失礼な!僕だって、ゾンビ歴はそれなりにあるんだからこのくらいの情報は持ってるよ!」
オラフさんは巨体を揺らしてプンスカと怒り出した。そこへゾンビさんとの打ち合わせを終えたハナさんがやってきて、文字通り口を挟んできた。
「オラフっちが言ってることは、まーーーんま去年ビッグボスが言ってたことの受け売りなんだよねー?」
「もう!ハナさん!バラさないでよ!」
「怪しいと思った!やっぱりそうなんですか!」
「カッピーに先輩としての威厳が示せるかと思ったのに…!」
雨グリの解説ができたからと言って、それなイコール先輩としての威厳になるのかは疑問だったが、とにかく優しいオラフさんが教えてくれて助かった。ハナさんしかこの場にいなかったら、僕は雨の中栗を待って立ち尽くすだけの栗待ち人になっていたかもしれない。
「でも、カッピーは関係ないんじゃ?」
「え?どうしてですか?」
「いや、去年はナイトベアーはグリーティングに参加してなかった気がするんだよね。」
「え?!そうなんですか?それなら、僕はまだ待機になるんでーー。」
バタン!!
突然扉が開いた。僕は嫌な予感がしていた。こういう時に突然扉を開けて入ってくるのは大体ーー。
「おい!ブラザー!早く用意しろ!雨グリだぞ!」
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