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第87話 (76)ラブソング-1

「はぁ〜。今日もいなかった。」


 カルーアちゃんはゾンビナイトの混雑を抜け出し、いつぞやのようにフードカートでコーヒーを買い、ベイサイドエリアのデッキにあるベンチで一息ついていた。


ーーそう言えば、ここでカッピーさんに会ったのが最後だったな。


 『アレ』の後、カッピーさんがストリートにゾンビとして姿を現すことは無くなってしまった。その代わりにりゅうじん君が毎日出てきているが、私の推しはもうカッピーさんなので特にどうということはない。しかし、囚人エリアはりゅうじん君オタクによりずっと混雑している。もしかしたら、カッピーさんは『アレ』のせいで顔を隠して、他のエリアに出演しているのかもしれないと思い、日々パーク中を歩き回っているが、どうにも見つけられない。カッピーさん、貴方はどこにいるんですか?私はもう貴方を推すことはできないのでしょうか?


ーーこのカメラも最近何も撮ってないな。


 首から下げたカメラのずしりとした重さを感じる。カッピーさんがいないと、カメラで写真を撮る気にもならない。カメラのメモリーはあの日から空っぽのまま。


ーーまるで今の私みたいだ。


 推しを失って空っぽの私。カメラとオタクは一心同体なのだ。カメラのレンズは私の目。ゾンビのオタクとなったその日から、UPJオタク達はいつもレンズ越しにゾンビを見ることになる。久しぶりにカメラのレンズキャップを外してみる。そして、カメラを通してパークの夜景を眺めてみる。


ーーキラキラしてて綺麗。


 片目を瞑り、シャッターボタンを半押ししてピントを合わせる。レンズを通した私の視界にはキラキラとした綺麗な夜景が写っているが、そこには何かが足りない。そこにカッピーさんがいたらなぁ。カッピーさんの囚人ゾンビのキラキラが足りないんだ。推しを失った私のレンズは、何か足りない景色を写すだけだった。


ーーあっ。


カタン、コロコロコロコロ。


 レンズキャップを落としてしまう。私がカメラを構えてぼーっとしている間に、それは転がっていき、ベイサイドエリアの池へと落ちてしまいそうだった。しかし、私にそれを止める気力はなかった。


ーーもう間に合わないし、また買えばいっか。


 諦め切った私はカメラのレンズ越しにキャップがコロコロと転がるのを見ていた。すると視界に誰かの手が写る。カメラキャップを拾ってくれたのだ。私はカメラを置き、男の人に礼を言いにゆく。


「あっ、すいません。ありがとうございます!」


「これ、カメラの大事な部品ですよね?池に落としたら大変ですよ。落ちなくて良かった〜。」


「部品というか、カメラキャップなんですけどね。ありがとーー。」


「「あっ!!」」


 拾ってくれたその男の人を見た瞬間、私の視界は再びキラキラと光り出した。今度は夜景のキラキラだけじゃない。もっともっと素敵なキラキラだ。私の目にはキラキラした夜景と、その中心にはカッピーさんが写っていた。あぁ今、私の目がカメラだったら良いのに。そうだったら、私はシャッターを切ってこの瞬間のキラキラを永遠にメモリーに保存できるのに。

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