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第84話 (74)偉い偉いさんのボタン

 『アレ』の話題に乗っかり、パークの来場チケットが鰻登りに売れていく。チケットの売上の数字がどんどんの増えていく様子を嬉しそうに眺めている男がいた。そう、ジョージであった。


「ふふふ。」


「どうしたの、ジョージ。ご機嫌じゃん!」


「ふふ。ユーには、そう見えマスカー?」


「見える見える!全然いつもと違うよ!」


 ニコニコしながら、ジョージはユーに返答する。『アレ』の宣伝効果は凄まじく、正直TVでCMを打つよりもチケットの売れ行きに直結している気がしていた。


「ジョージはチケット売れるとそんなに嬉しいの?」


「オフコース!ボクはその為に本社から派遣されていマース。それに…。」


「それに?」


「それにチケットが売れるって事は、パークを楽しんでくれる人が増えるという事ですね。それはその人の人生に幸せな1日をプラスさせてあげられると思っていマース。みんなに楽しんでもらう為にやってますから。」


「ふふっ。そうか、それは良い事だね。」


 ユーはニコニコしながらジョージの周りを漂っていた。頭の片隅で自分もそんな事を志していたような気がしていたが、どうしても思い出せなかった。相変わらず記憶は戻らないらしい。


「これはオールナイトの発表も盛り上がりそうデスネ〜。」


「オールナイト?」


「今年のハロウィーン当日の10/31は、深夜から朝方までパークを開けて、盛大にパーティするのデース!ゾンビもいつもより沢山出して、バンドによる生演奏もありマース!」


「バンドの生演奏!そりゃいいね!僕も見に行っていいかな?どうせ、ジョージ以外には見えないし。」


「オーライ。いいでしょう。ゴーストにチケット代は請求出来ませんからね。」


 ジョージはオールナイトの話をしながら、もどかしい思いでいっぱいだった。あぁ、もし今オールナイトイベントの発表をすれば、『アレ』に乗っかって大きく話題になるだろうに。しかし、イベントの発表というのは様々な事情があり、発表の時期は足並みを揃えて行うことになっている。それがもどかしい。


カタカタカタ


「ジョージ、いつになく真剣な顔して何打ってるの?」


「失礼なゴーストですね。ボクはいつだって真剣です!これは、オールナイトイベント発表のSNS用の文章デース。」


「へー、そんなことまでやるんだね。」


「本当はボクは担当じゃないんだけどネー。たまに任されたり、勝手にやったりって感じですネ〜。」


 そう言いながら、ジョージはパソコンに文章を打ち込んでいた。


『レディースアンドジェントルマン。アーユーレディ?ハロウィーンはオールナイトパーティでダンスです!』


「ジョージ、なんかこの文章変じゃない?」


「え?本当ですか?」


「うん、なんかカタカナ多いし、どんなイベントなのかわかりずらいよ。ちょっと貸してみてごらん。」


カタカタ


 そう言うとユーはジョージのキーボードを奪い、文字を打ち込み始めた。


「ユー!キーボード触れるんですか?!ゴーストなのに!」


「ゴーストだって頑張れば触れるよ!ポルターガイストとかあるでしょ?」


「オーマイガー。」


『今年のハロウィーンはオールナイトで盛り上がりましょう!沢山のゾンビとバンドの生演奏で踊って騒げ!』


「こんな感じでどうかな?」


「おー!よくなった気がします!」


「バンドの名前とか入れたら、そのファンの人にも届きそうなんだけどね。あとはチケットの話とか。」


「なるほどー。じゃあ書き加えてみましょう!」


カタカタカタカタ


『今年のハロウィーンはオールナイトで盛り上がりましょう!沢山のゾンビ&ノベルナイトの生演奏で踊って騒げ!チケットはカミングスーン!』


「どうでしょう?」


「おー、ジョージやるじゃん!後はちょっとテンション高くした方が良い気がするなぁ。」


「確かにそうですね。元の文のテンションを加えて、これはどうでしょう!」


カタカタカタカタ


『今年のハロウィーンはオールナイトで、あれやこれやの大盛り上がりしましょう!全ゾンビ大集合&ノベルナイトの生演奏でDANCE DANCE DANCE!!チケットはカミングスーン!』


「めっちゃ良いじゃん!ジョージらしさもあるし、楽しそうな感じがわかるよ!」


「いやー、助かりマシタ!ユーがいると助かりますね!」


 ジョージはこの文章を見ながら、一抹の考えを抱いていた。


ーー今これを投稿しちゃえば、盛り上がるんじゃないのか?


 『アレ』の波に乗って、ゾンビナイトの注目度は高まっている。実際タイムラインにもゾンビナイトへの期待を膨らませる人達がいる。しかし、ジョージも大人だ。いろんなしがらみがあるのだ。投稿したい気持ちをぐっと抑えて、この文章を下書きへと保存しようとする。しかし、ジョージの右手のマウスはそんな思いとは逆に“投稿”のボタンへと動いていた。


「よーし、文章も書けたし後は投稿するだけだね。ポチッとな。」


 ユーはそう言うと、ジョージの握るマウスを軽やかに動かして投稿ボタンをクリックしてしまった。ジョージは焦ってユーを止めようとしていたが、その手は空を切るばかりだった。ゴーストには触れないのだ。あっちは触れるのに、こっちは触れないなんてずるい!と思っていた。


「ノーーー!ユー何やってるんですか!!発表は来週の予定だったんですよ?!」


「え?!そうなの、ごめん!僕知らなくてーー。」


 そう言いながら、ユーの身体は上に浮かび上がり始めていた。


「ご、ごめん!大変なところ悪いんだけど、身体のコントロールが効かない時間が来そうだ!本当にごめん!」


 ユーは謝りながら、窓から外に出て空高く浮かんで行ってしまった。ユーは自分の身体のコントロールが効かない時間があるらしく、時々浮かんで消えていってしまう。それにしても何と言うタイミングなんでしょう!


 ジョージは急いで投稿を消そうとするが、先程のオールナイトの投稿は物凄い勢いで拡散されてしまっていた。


『ゾンビナイト、オールナイトであるの?楽しみ!』


『ノベルナイトのライブもあるってこと?今の所他で情報出てないけど解禁なのかな?』


『チケ待機。』


「あわあわあわ。どうすれば…。」


 ジョージが慌てふためいていると、デスクの上のスマホに電話がかかってきていた。液晶画面には“ビッグボス”と書かれていた。


ピッ


「上司さん!!どういうことですか!」


「いや、これは違うんだよ。あのーー。」


「とにかく、今からそっちに行きますから。」


プツッ。


 ビッグボスの電話が切れる。ドスンドスンとジョージの部屋に足音が近づいてくる。そして、パソコンには関係各所からの確認の連絡も来ていた。恐らく情報解禁を早めてしまったことに対する確認だろう。今後の対応を考えるジョージは顔が真っ青になった。更に、SNSの通知も鳴り止まない。ビッグボスの足音に通知の音にメールの受信音に電話の音にジョージはクラクラとしてきていた。


「ユーー!なんてことをしてくれたんです!」


〜〜〜


「ユーー!なんてことをしてくれたんです!」


 ジョージの叫んだ声は、その天空高くにぷかぷかと浮かんでいたユーの元へと届いていた。


「いやー、ジョージ本当に申し訳ない。この失敗は、命で償いたいところ。まぁ僕幽霊だから、命ないんですケドネ〜。」


 ユーはジョージの喋り方を真似して笑っていた。申し訳ないと思いつつも、ジョージの焦りようを思い出して、笑いが止まらないのだった。

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