第80話 (70)ママレード&シュガーソング-1
僕の勇気を振り絞ったデートの誘いはハナさんには届かず、いびきにかき消されてしまった。その後程なくして、僕も眠ってしまった。結局、翌朝様子を見に来たオラフさんに起こされるまで、一度も目覚めることはなかった。
「はい、これ朝ご飯!作ってきたよ!」
優しいオラフさんは、なんと僕達のために朝食を作ってきてくれた。それにしてもサンドイッチなんて可愛いものを作って、オラフさんらしいな。
「うまい!うまい!カッピーも早く食べないと無くなるよ!」
「ハナさん、急いで食べ過ぎだよ…。沢山あるから焦らないで!ピーナッツバターもレモンママレードもあるからね!」
「ごほっごほごほ!」
焦ってサンドイッチを頬張ったハナさんが喉を詰まらせて咳き込んでいる。言わんこっちゃない。焦って食べるからですよ。冷静沈着な僕は焦って食べない。ゆっくりと大人の余裕を持ってサンドイッチを食すのである…。
「ごほっごほごほ!!」
「カッピーまでむせちゃって!ちゃんと噛んでゆっくり食べないと!2人とも慌てんぼうなんだから!」
〜〜〜
『踊るのであります!』
「すごい!昨日とは動きが全然違うよ!」
『嬉しいのであります!』
オラフさんの前で、ハナさんとの特訓の成果を見せる。オラフさんは拍手喝采で賞賛してくれた。正直少しミスったところもあったけど、優しいオラフさんは、僕が気にしすぎないように褒めてくれたのだろう。優しい人だ。
「完璧にするには、もうちょっと練習がいるだろうけど、大分ましになってきたよー。カッピーも成長したなー。ゾンビナイトの初日はあんなに緊張で震えてたのに。」
「そこまで緊張してないですよ!」
「いや、あの緊張ぶりったらなかったよ。オラフくんもそう思っただろ?なぁ?」
「まぁ…。正直ね。顔もなんかこわばってたし…。」
「オラフさんまで…!」
3人で和やかに話す。そうか、もうゾンビナイトが始まって一ヶ月も経つのか。初日の緊張感も遥か昔のように感じる。こうして3人でふざけ合うのも最近なかったように感じる。ハナさんとオラフさんが居なければ、ここまでやって来られなかったかもしれない。周りがココロさんだらけだったら、しんどくなってただろうな。いや、いい人なんだけどね。
「朝から五月蝿ぇな。ここはリハーサル室なんだよ。くっちゃべって遊ぶんなら、駅前の喫茶店でも行きな。」
突然、リハーサル室に渋い声が鳴り響く。
「ミッキーさん、おはようございます!」
「遊んでたわけじゃなくて…、休憩がてら話してただけというか…。」
「なんだぁ?無駄話する時間があるくらい、もう完璧ですってか?俺の時代はよ、完璧にマスターするまで休憩する暇なく練習練習練習だったけどなぁ。」
「いや…その…。」
ミッキーさんの嫌な攻め方に口籠ってしまうオラフさん。僕を庇ってしまったばかりに申し訳ない、と思っているとハナさんが僕達の間にずいっと立ち、ミッキーさんに言い放つのだった。
「勿論おっしゃる通り!もうカッピーは昨日の課題を“完璧に”マスターしたから、私たちはもう余裕こいちゃって、無駄話に興じてたわけですよ。」
ハナさんは、まるで歌舞伎役者のように大見得を切って見せた。そう言い放った後に、こちらの方を向きウインクをするのだった。僕は正直ハードルを上げないでくださいと思いつつも、ハナさんの堂々たる振る舞いに胸の空く思いだった。
「はっ!面白えじゃねぇか。早速“完璧な”練習の成果を見せてもらおうか?」
「おう!やったれ、カッピー!この老害に一発喰らわしちゃれ!!」
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