第8話 (8)ローラーコースター
「あかねちゃん、仕事はもう慣れた?」
「タテノくん、同期のくせに先輩面しないで。タテノくんよりはよっぽど真面目に働いてますから!」
「そうか、そうか。困ったことがあったら俺に相談してね」
「タテノくんも、わからないことがあったら私に聞いてね!勝手なことせずに!」
はぁ。好きだ。あかねちゃん、どうしてそんなに可愛いんだ。小動物のようにコロコロ変わる表情に僕は夢中です。堪らない。あかねちゃんも一緒に働けて僕は本当に幸せ者です。恋してる表情のタテノくんが、あかねちゃんからの見られ方を気にしつつ、髪型を整えて話を続ける。
「あかねちゃんはさ、休みの日とか何してるの?」
「私?休みの日は遊園地に行くかな」
「え?テーマパークで働いて、休みの日はテーマパークに行くの?そんなに好きなんだ?」
あぁ、素敵だ。あかねちゃん。そんなにテーマパークが好きで、好きなことを仕事にしているんだね。今は2人ともバイトだけど、あかねちゃんはいずれウルパーに就職したいと思ってるんだろうか。あかねちゃんがいるのなら、俺もウルパーに就職するのもありかも。特に志望する業界もないし。唯一あるとすれば、あかねちゃん。君がキラキラと輝いている世界を志望ってとこかな。
「うん。実はテーマパークが好きっていうより、私ジェットコースターが大好きなの」
「え?!ジェットコースターが大好き?!」
「そう、引かない?私、ジェットコースターが昔から好きで走ってる姿も何時間でも見てられるんだよね」
少しヒヤリとするタテノくん。そういえば時々、あかねちゃんがバイト中にぼーっと上の方を見上げている時があったことを思い出す。あれはジェットコースターを見ていたのか。ウルパーは映画をテーマにしたテーマパークだが、ジェットコースターも売りで5つほどのジェットコースターが園内にあるらしい。“らしい”というのは、自分は所謂ジェットコースター恐怖症で、乗ったことがないのでわからないのだ。正直見るだけでも怖い。
「ウルパーのジェットコースターだと特に〜が好きで〜。最初のガタガタガタって登る時の音が堪らないんだよねぇ〜。後は魔法エリアの〜」
キラキラとした目でジェットコースターの魅力を語るあかねちゃん。そこまで好きなんて、音が良いなんてあるのか?乗ったときの浮遊感とかだけではなくて?全く理解できない世界だ。
「タテノくんは?ジェットコースター好き?」
あかねちゃんが、うるっとした目で見上げてくる。可愛すぎる。これからあかねちゃんと関係を築いていく中で、嘘をついても仕方ない。ここは正直に苦手であるというべきだろう。初手で嘘をついてしまっては信頼を損なってしまう。よし。
「ジェットコースター好き好き!やっぱ遊園地と言えばジェットコースターだよね。あかねちゃん程のガチではないけどさ!はは!」
ーーやってしまった。あかねちゃんに好かれたくてつい見栄を張ってしまった。あかねちゃんは天使なので、俺がジェットコースター苦手だからといって嫌いにはならないだろうけど。俺の口は脳からの指令を無視し、ペラペラと喋り続けた。
「いやー今度遊園地に一緒に行って、色々話聞きたいなー、なんて」
「本当に!付き合ってくれるの?!長くなるよ!私!実は全国の色んな遊園地に行って、ジェットコースター乗りまくるのが趣味でさ。一緒に回ってくれる人探してたんだよね」
「あ、あかねちゃんとなら楽しそうだし。一緒に行こうよ。は、はは!」
あかねちゃんの「付き合ってくれるの?」という言葉にドキドキしつつ、その後とんとん拍子で今度ジェットコースターデートする話がまとまってしまった。話の最中も、タテノくんは心の中で焦りに焦っていた。早急にジェットコースター恐怖症の治療に取り掛からなければ。
デートすることへの高揚感と、ジェットコースターへの不安感でタテノくんの心は大きく揺さぶられているのだった。頑張れ!タテノくん!
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