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第77話 (67)アワーミュージック

 リハスタの休憩室でとある動画を見た。『アレ』と一般的に呼ばれている動画は、男女のゾンビが踊り、絡み合い、表現をしていた。コメント欄には『ゾンきみ』というドラマがどうとか盛り上がっていたが、そんなことは本質じゃない。どうでもいい。俺にはわかってる。これは“パンク”だ。自己の解放だ。イアンマッケイであり、ジョーストラマーであり、ビリージョーアームストロングであり、峯田和伸だ。彼らは解放したのだ。


「おーい、ゾンビナイトの件見たか??」


 ベースが話しかけてくる。メガネをクイっとあげて涼しげな顔である。長い前髪をセンターで分けている。コイツはいつまで平成のバンドマンの様なスタイルで過ごす気なのだろうか。しかし、流石だ。コイツもアンテナを張って、『アレ』がパンクであると気づいたのだろう。


「あぁ。見たよ。『アレ』はパンクだったな。」


「パンク?何??どゆこと?」


「は??」


 怪訝な顔をするベース。ベースの話を聞くと、ゾンビナイトのオールナイトで行われるライブでステージ演出が変更になった関係で、セットリストも変更できますか?とUPJの演出家から連絡があったらしい。


「また急な話だな。」


「まぁそんな大した変更じゃないけどな。演奏中にゾンビダンサーたちが入ってきて踊ったりするくらい。」


「えー。そんなことしなくちゃいけないのか。」


 あからさまに嫌な顔をしてしまう。ベースなそんな俺に諭す様に話す。


「まぁまぁ。ゾンビナイトのテーマソングなんだから、いいじゃないか。それも込みで前日にリハーサルもあるんだってさ。」


「はいはい。まぁ言われた様にやるさ。」


「さっき言ってた『アレ』ってなんだ?」


「あぁ。これだよ、これ。」


 スマホを渡し、『アレ』の動画を見せる。


「ふーん。こんなのが流行ってるんだ。え?!2000万再生ってすごいな。」


「確かに。俺たちのゾンビナイトの曲より再生数多いってことか。」


「…。」


「うわぁあ!びっくりした!お前いつからそこにいたんだよ!」


「…。結構、前から…。」


 俺とベースが振り返るとそこにはドラムが立っていた。巨体の割に相変わらず存在感のないやつだ。口数も少なく、付き合いは長いが、何を考えているのか全くわからない。


「…。『アレ』、オレも見た…。パンク…だった…。」


「?!だよなー!流石だな、お前!パンクだよな、これ!」


「パンクかー?全くわからんが…。」


 呆れたような顔で両手をフリフリとするベース。コイツには、わからなかったのか。しかし、ドラムは流石である。信頼のおけるメンバーだ。普段あまり意見を発信することはないが、概ね自分の意見に乗っかってきてくれる。ドラムは巨体をゆらゆらとさせ、微笑してこちらを見ていた。他の人から見ると微笑なのだろうが、俺にはわかる。コイツの微笑は常人の満面の笑みである。証拠に糸目の奥にある目が、キラキラと輝いている。


「昨日の…。送ってきた新曲のデモ…。すごい良かった…。」


「だよな!久しぶりに降りてきたんだよ。」


「『アレ』の動画見てたら…。ドラムのアイデア…。浮かんだ…。3人で合わせてみよう…。」


「おっ!久しぶりにやってみるか!」


 それにしても声が小さい。ドラムはパワフルでうるさいくらいなのに、声は本当に小さい。ライブ中に意思の疎通ができないレベルである。まぁ、それがコイツの可愛いところでもあるが。


「よし!合わせてみよう!どうせ、プロデューサーに違うアレンジにされるんだろうけどな!」


「ははっ。それは違いないな。」


 そうして3人で休憩室を出て、スタジオへと入った。久しぶりに3人で、アレンジを考え、曲作りを進めていくのは苦労もあるが楽しかった。最近感じることのなかった楽しさだ。違うところの多い3人だが、バンドで音を合わせると妙にしっくりくる。ふと、先ほどの『アレ』が頭をよぎる。


ーー遊園地のダンサーでも、ああやって自分を曝け出してパフォーマンスしているのに。俺たちはこのままでいいのだろうか。


 久しぶりにスタジオで健全なバンドとして、遊んでみて改めて思う。これが俺たちノベルナイトの本当の姿だと。会社が作り出した“ノベルナイト”とは違う本当の姿。これでずっと活動できたらいいのにな。どこで間違ったんだろう。

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