第75話 (65)REAL
「じゃあ、あそこは貴方のアイデアなのぉー?」
「そう!あそこにあれを入れるのが熱いかなと思って!」
「貴方、金玉ないのにタマあんじゃないのよぉ〜う!たまんないわねぇ〜。“タマ”だけにぃ〜。」
「ちょっと!ニセ姉〜!面白すぎるー!」
すっかり意気投合した様子のハナさんとニセさん。先ほどまでの緊張感が嘘のように、弛緩した空気に肩の力が抜ける。ひとしきり盛り上がった後、ニセ姉は何かを思い出したように部屋の出口へと向かう。
「2人とも!今回は『アレ』の素晴らしさに免じて許してア・ゲ・ルっ!でも、今後勝手なことは許さないからねぇ〜。ニセ姉の顔も3度と言わず1度までよぉ〜。」
「はい!ニセさん、今回はすいませんでした!」
「カッピー!アタシのことは、ニセ姉と呼びなさいぃ。」
「…。はい!ニセ姉!」
「じゃああとはビッグボスよろしくっ。私はこれからオールナイトのステージを見直すことにしたからっ!『アレ』を見て、インスピレーションが湧いてきたの。アイデアが湧き出ているうちに形にしないとっ!じゃっ、ばいびー!」
バァン。
「…。」
嵐のように過ぎ去ったニセ姉を見送り、会議室は再び静まり返る。
「今の通りで、演出家のニセさんは全く怒ってないので、心配いらないわ。」
「そ、そうみたいですね。」
「あとは、上司さんですか?」
「いや、上司さんも…。」
ガチャ。
「あっ、ビッグボスいたー!すごいすごいよ!『アレ』がバズってから、チケットの売れ行きが鰻登りダヨー!アメイジング!!」
「ほらね。上司さんはこの調子だから。」
「ハナにカッピー!でかしたよ!この調子で頼むよ!あ、羊羹いる?緑茶もあるよ!ガトーショコラにブラックコーヒーもあるけど、どう?」
「あ、後で頂きます。」
「いやー、この勢いでオールナイトもチケット売れまくるようにしたいねー!ビッグボス!頑張ろうね!」
バァン。
「…。」
再び会議室が静まり返る。事件を起こした当事者の僕が言うのも何だが、このパークのお偉いさんには変な人しかいないのだろうか。普通は怒って僕とハナさんはクビになってもおかしくないのだが、なぜかこの数分間は賞賛の対象となっていた。まともなのはビッグボスだけである。
「…。色々あったけど、話を整理させてもらうわね。まず、ハナとカッピーは迷惑をかけた人たちに謝ること。あと、すぐにストリートにゾンビで出たら、お客様が押し寄せて混乱になる可能性があるから、ほとぼりが冷めるまでは別の役割を用意します。わかった?2人とも?」
すっかり毒気を抜かれてしまったビッグボスが優しい口調で、僕らにそう伝えて呼び出しは終了となった。怒られまくると思っていたので、こんなことになるとは驚きである。事実は小説よりも奇なり。
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